過激な表現で炎上した『溺愛ロワイヤル』(YouTube『ちゃおチャンネル』より)

 “小学生ナンバーワンおしゃれ雑誌”をうたう新潮社の『ニコ☆プチ』8月号の付録漫画の性的表現が、SNS上で読者の年齢にそぐわないなどと物議を醸し炎上。

 指摘を受けた編集部は、7月3日に公式サイトで「内容の一部にご不快な思いをされた読者、保護者の方がいらっしゃったことを重く受け止めております」と謝罪する事態になった。

「ボクが姫をエッチにさせてあげようか?」

 今回の付録は、小学館の月刊漫画雑誌『ちゃお』とのコラボ企画で、5作品が試し読みできるというもの。問題視されたのは、八神千歳氏が手がける『溺愛ロワイヤル』。男性キャラがヒロインに向けて「少しくらいエッチのほうがいいのに…」「ボクが姫をエッチにさせてあげようか?」とキスを迫り、押し倒すシーンなどが登場。これにSNSなどでは「グルーミングだ」「小学生の娘には見せられない」などの批判が相次ぐ一方で、「そこまで騒ぐ内容じゃなかった」と擁護する声も上がった。

「幼なじみで婚約者候補のイケメン3人がヒロインを奪い合うという物語。こういった溺愛モノは最近のトレンドですし、以前からある少女漫画の王道といっていいパターンなので、本来ならここまで騒がれる作品ではないかなと思いました

 こう話してくれたのは、少女漫画研究家の和久井香菜子さん。では、何が問題だったのか? 今回の作品を読み、分析してもらった。

「『ボクが姫をエッチにさせてあげようか?』といったセリフが引っかかったんだと思います。本当は男の子がそうしたいだけなのに、その欲望を女の子に転嫁されることが現実にあります。女の子が『やめて』と言っても無理やりキスをする描写も、読者の親などに性被害を連想させ拒否反応が起きたんだと思います」(和久井さん、以下同)

過去にはPTAから抗議の作品も

 小学生向け漫画雑誌の年齢層の幅も、今回の騒動の一端になっているのではと和久井さん。

『ちゃお』や『りぼん』など小学生向け漫画雑誌の最新号を読ませていただいて思ったのが、大人が読んでも違和感なく楽しめる作品ばかりという印象でした。たぶん、内容的に高学年に向けて作られているんだろうと思います。小学生って1年生と6年生じゃ精神面も全然違うじゃないですか。『ニコ☆プチ』の付録で初めて『溺愛ロワイヤル』などを読んで驚いた低学年の子どもを持つ親の反応も、炎上につながった一因ではと思います」

騒動となった『ニコ☆プチ』8月号の表紙

 では、過去にも少女漫画において、性的描写をめぐる騒動はあったのか?

私が知る限りで最初に炎上といえるのは『ベルサイユのばら』のオスカルとアンドレが結ばれるシーンだったと思います。当時、PTAや読者の親から、発行元の集英社に『子ども向けの漫画になんていうものを載せるんだ』などと抗議の電話があったそうです」

 今後もこういった性的表現をめぐる騒動が起きる可能性はあるが、親はどういった対応をするべきなのか。

「何が問題で見せたくないのか子どもとちゃんと話すべきでは。ネット時代に子どもを性的なものに触れさせないのは、なかなか難しい。単純に子どもから漫画を取り上げるのではなく、性について学ぶ機会にしたほうが建設的かなと思います

 前向きに捉えれば、少女漫画から得られるものが多いのかもしれない─。

騒動となった『ニコ☆プチ』8月号の付録

 

炎上を受けて『ニコ☆プチ』が掲載した謝罪文(公式サイトより)

 

『溺愛ロワイヤル』の表現についてSNS上では辛辣な声が寄せられている(ツイッターより)

 

『溺愛ロワイヤル』の表現についてSNS上では辛辣な声が寄せられている(ツイッターより)

 

『溺愛ロワイヤル』の表現についてSNS上では辛辣な声が寄せられている(ツイッターより)

 

『溺愛ロワイヤル』の表現についてSNS上では辛辣な声が寄せられている(ツイッターより)