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 ついに突入!子どもたちが待ちに待った夏休み。やった!遊ぶぞ~!と浮かれる目の前に、重~くのしかかってくるのが夏休みにつきものの“宿題”。

 先にチャチャッと終わらせればいいのに、見て見ぬふりで遊んでしまい、休みの最終日にてんこ盛りの宿題と大格闘した苦い記憶が……。

『夏休みの友』って知ってる?

 ちびまる子ちゃんでも夏休みの宿題の回で「どこが『夏休みの友』なのさ。こんなヤツ友達なんかじゃないやいっ」なんて言ってたけど、ん?『夏休みの友』って一体どんなもの?

 夏休み中の学習や生活をサポートする冊子とわかりながらも、その実態をよく知らなかった記者。だってなかったもん……と、周囲に聞いてみると出身地によって知っている人、知らない人、それを語る熱量もバラバラ。どうやら地域差があるよう。

令和2年『夏の友』(完成版)表紙1年(写真提供:一般財団法人岐阜県校長会館)

 名前も『夏休みの友』や『夏の友』『夏休み帳』などさまざま。ちなみに記者の周囲では、日本の東側では知らない人が多く、西側はかなり熱い思いで語ってくれる人が多数。

 そこで今回は、関東より西の地域に絞り、40歳から80歳までの男女600人にアンケートを実施。さてさて、どんな“友”の思い出が語られるのか──。

 まずは、『夏休みの友』といった夏休みの宿題冊子があったかを聞いてみると、「はい」が約66%、「いいえ」が約34%。意外とその存在は一般的らしい。

「簡単な問題ばかりだったので、時間もかからずできた」(京都府 女性 44歳)

「『夏休みの友』だけだったら楽勝だったが、追加で出された先生特製の大量のガリ版刷りのプリントのほうが大変だった」(兵庫県 男性 76歳)

令和2年『夏の友』(完成版)表紙2年(写真提供:一般財団法人岐阜県校長会館)

 なんて『夏休みの友』に対して楽勝な意見もあるなか、やはり多かったのは、まるちゃんに激しく同意する声。

「夏休みの友ならぬ“夏休みの敵”でした」(福井県 女性 49歳)

「サクサク終わるページもあれば、自分の意見を書いたり、調べものなどついつい後回しにしちゃうページもあって。最後3日間で家族に泣きついて総動員でやってもらった記憶も……。いつも半泣きになりながらなんとか終わらせて来年こそは、と誓うそんな6年間でした」(山梨県 男性 42歳)

 と、トラウマ級の思い出が多い中、

「子どもの宿題に出ていますが、体育、音楽、生活科系など親が一緒にやらないと進まない項目が多くてまるで“親の宿題”に。毎年苦しんでいます」(大分県 女性 45歳)

 と、大人になった今も苦しめられている、なんてエピソードも!

ドリル?手作り?地域で異なる形態

『夏休みの友』の内容について、富山県、滋賀県、岡山県、広島県などでは、

「算数、国語が多くて理科、社会が少し、ときどき工作や日記など入ったもの」

 という、ほぼドリル派という声が多く聞こえてきたが、九州では先生方の手作り派が多く、特に佐賀県からは当時の宿題を懐かしむ声が。

「名前は『夏の友』で、表紙は県内の小学生が描いた絵。ページごとに教科が違って、国語や算数だけじゃなく、郷土の歴史や自然の中での観察、音楽、日記、家庭科、水泳の泳ぎ方なんかも入っていた記憶が。

 図工は作り方が描いてあってそれを夏休み中に必ず作って提出。卵のカラを使ったり、かまぼこ板を使ったり。大変だったけど懐かしい!」(佐賀県 女性 45歳)

令和2年『夏の友』(完成版)表紙3年(写真提供:一般財団法人岐阜県校長会館)

「えっ?他県ではないところもあるの?今まで、当然のようにあるものだと」(佐賀県 男性 50歳)

「先生方の熱い思いがつまった手作り感あるページが何げに好きでした。クイズ形式の算数があったり、“有明海に行ってムツゴロウを見ました”なんて佐賀感満載の文章もあったりして(笑)。

 欄外には佐賀についての豆知識などがびっしり書いてあって。当時何げなく読んでいて学んだことを、この前そのまま子どもに伝えてた(笑)」(佐賀県 男性 42歳)

「実家から昔の『夏の友』が出てきて懐かしくて見てたら、工作ページで“穴をほがします(開けますの意)”と方言で書いてあって、ほっこりした」(佐賀県 女性 45歳)

 残念ながら現在、佐賀県では『夏の友』が発行されておらず、業者の冊子となっているよう。

 アンケートによると、現在、子どもたちに学校から『夏休みの友』のような宿題冊子が「出されている」が約37%、「出されていない」が約63%。内容もほぼドリル的なものとなり、手作り系冊子は時代の流れとともに全国的にほぼ姿を消しつつあるようだ。

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宿題というよりも学習のガイドブック

 そんな中、岐阜県では今でも手作り系『夏の友』を作っているという情報をゲット!早速発行元の岐阜県校長会館に直撃してみると、

「はい、もちろん今年も『夏の友』を発行しています」

 こう話してくれたのは事業部の芝山圭子さん。歴史はなんと70年以上!

 今年も県下50名以上の教員が、自ら取材するなどした岐阜情報を満載で取り込みつつ執筆、編集しているというのだ。

「夏休みに子どもたちが豊かな体験と感動のある生活をする中で、生きる力をつけることを願う熱い気持ちで長年独自に作り続けています」(芝山さん、以下同)

 単純に学力の向上だけを目的としたものではない、ということ?

「宿題ではなく、夏休みの暮らしや学習のガイドブックとして読み物が中心になっているんです」

 芝山さんの言葉どおり、冊子の約90ページのうち国語、算数などの学習は2割程度。

「内容は総括、読書、郷土の読み物、家庭・地域、宝物、学習、表紙の7領域で構成。編集の先生方もそれぞれの領域に分かれて作成しています」

『夏の友』2年「オオサンショウウオ(郷土)」(写真提供:一般財団法人岐阜県校長会館)

 冊子を開くと、自ら考えて研究や作品作りができるような参考資料や、郷土、自然をより深く感じられるもの、健康や規則正しい生活が送れるようなものなど、どのページも先生方の愛と工夫に満ち満ちている。

 特に表紙は、別刷り付録を切り貼りしてポップアップにしたり、ゲーム性があったりと“遊べる表紙”に。

「親子や友達とのコミュニケーションツールにもなっているようです」

 冊子の購入は学年単位や希望者のみなど各学校の判断によるそうだが、今年の購入率は県内公立小児童の約88%、学校単位での採用率はほぼ100%!まさに岐阜県民の“ソウル冊子”であり岐阜っ子の“夏の親友”になっているのだ。

 ちなみに冬休みには『冬の友』が毎年発行。こちらも表紙が「ふくわらい」や「オセロ」「ボウリング」など遊びゴコロ満載!

『夏の友』3年「国語(学習)」(写真提供:一般財団法人岐阜県校長会館)

 調べれば調べるほど魅力あふれる『夏休みの友』。ちなみにズルズルとためて、休みの終盤、必死に取り組んでいた人ほど記憶に鮮明に残っているよう。

 夏が来れば思い出すのは尾瀬だけでなく、懐かしの『夏休みの友』なんて人が多いのも、これで納得!

(取材・文/住田幸子)

 

『夏の友』2年「オオサンショウウオ(郷土)」(写真提供:一般財団法人岐阜県校長会館)

 

『夏の友』3年「国語(学習)」(写真提供:一般財団法人岐阜県校長会館)

 

令和2年『夏の友』(完成版)表紙1年(写真提供:一般財団法人岐阜県校長会館)

 

令和2年『夏の友』(完成版)表紙2年(写真提供:一般財団法人岐阜県校長会館)

 

令和2年『夏の友』(完成版)表紙3年(写真提供:一般財団法人岐阜県校長会館)