井上尚弥(本人Instagramより)

「フルトン、逃げている!」

『ボクシング・WBC・WBO世界スーパーバンタム級タイトルマッチ』が25日、東京有明アリーナで行われた。日本が誇る前・4団体世界バンタム級統一王者で挑戦者の井上尚弥と、統一王者のスティーブン・フルトンの対戦。

 Wタイトル世界戦は8ラウンドに井上がボディへのジャブ、そこからの右ストレート、左フックでダウンを奪った。フラつきながらも立ち上がったフルトンに対し、井上は一気にフィニッシュ。左右のフックにレフェリーがストップ。挑戦者であった井上が2団体スーパーバンタム級王者となった。

 井上は凄い。井上は強い。それはメジャーリーガーの大谷翔平の凄さと並ぶような、日本人として世界と戦うアスリートへの評価だろう。しかし、それを伝えたメディアに対し、Twitterいや『X』などSNSで批判が巻き起こっている。

もう二度と実況しないで欲しい

《もう二度と実況しないで欲しい。フルトン選手は強かった。井上選手が遥かに凌駕しただけ。素晴らしい試合に相応しくないゴミ実況。マジでフルトン選手に土下座して謝れ。》
《井上を上げる実況なら良いけど フルトンを下げる実況 気持ち悪かった》
《井上が勝ったのは良かったけど、実況のフルトンに対するリスペクトのなさにびっくりした》
《実況が気持ち悪く感じた… フルトンアンチしてるみたいに》
《試合自体は良かったけど実況がクソすぎた 井上の応援してるんじゃねえかふざけんなよ》
《実況が相手選手に対して全然リスペクトなくて邪魔》
《フルトン×井上 ただただ、実況が不快 日テレ系はスポーツから排除で良い》

(以上、SNS投稿より)

 この試合は、インターネット配信サービスの『Lemino(レミノ)』で独占かつ無料で配信された。

「レミノはNTTドコモが、それまでの『dTV』終了させ、4月よりスタートさせた新しい動画配信サービスです。正直、今に至るまでそれほど認知度はありませんでしたが、この井上選手の一戦を目玉に登録者獲得を睨んだのだと思います。井上選手が試合で着用していたパンツやウェアにも『docomo』の文字が入り、放映権獲得には相当なお金をドコモは積んだでしょうね」(テレビ局関係者)

フルトン選手を卑下するような実況をくり返した?

 試合の実況は鈴木健アナが務めた。日本テレビ所属で、’22年からはアナウンス部専門部長を務めている。前出の《》の引用はすべて彼へ向けられた意見だ。

鈴木健アナウンサー(日本テレビHPより)

「もちろん日本選手が対戦していて、日本で開催され、日本向けに配信されている動画であり、視聴者は基本的に日本人なわけです。そのため日本人向け、日本人選手上げになるのはある程度は仕方ないというか、当然ではあります。

 ただ、鈴木アナの実況が、あまりに井上選手寄り過ぎた。井上選手が相手のパンチを避けたら“見えている!”と大声で賞賛し、相手のフルトン選手が井上選手のパンチ避けたら“逃げている!”と卑下するような実況をくり返していました。終盤はフルトン選手への評価も口にしてはいましたが、試合を視聴した人に“(日本に来て試合をしているチャンピオンに)リスペクトがあまりになさすぎる”と思われても仕方ないような実況ではありましたね」(前出・テレビ局関係者)

 試合を伝えた解説陣も全員元世界チャンピオンと非常に豪華だった。元WBC世界スーパーバンタム級王者の西岡利晃、元世界3階級制覇王者の長谷川穂積、元世界2階級制覇王者の畑山隆則氏、元WBA世界ミドル級スーパー王者の村田諒太だ。

ボクシング関係者は今回の試合を伝えたメディア側について次のように話す。

「他の人がずっと“井上すごい”をくり返すなか、西岡さんだけが井上選手への評価だけでなく、ずっと守備技術などの“フルトンのすごさ”を伝えていましたね。畑山さんは彼の性格的にずっと本音でトークするので、試合後に“フルトン、ナメてました! こんなにできるなんて”と評価していましたが(笑)」

 フルトンは鈴木アナが話したように、井上に為す術がないほどだったのか。

井上尚弥(右)とスティーブン・フルトン(井上のInstagramより)

「まず前提としてKOされた。それは明確な事実なわけです。ただ、序盤のラウンドで井上選手のスピードに慣れ、徐々にギアを上げていった。これはフルトン選手のこれまでの試合を考えて、完全に凄まじいまでの狙い通り。事実、後半はポイントを上回ったラウンドもあります。実況は“パンチが見えていない”、“逃げている”なんて言っていましたが、序盤は苦戦しつつも基本的にフルトン選手は井上選手のパンチをほぼ完璧にガードしていたように見えました。ただ、最後に井上選手がそれを上回った。そういったすごく良い試合でしたよ」(ボクシング関係者)

 そもそも実況の鈴木アナはボクシング素人ではないのだ。

選手以上に肩に力が入りまくっていた

「日テレ所属ですが、WOWOWのボクシング番組の実況を担当するなど、“ボクシングアナ”です。今回の試合もくり出されたパンチを即座に解説するなど、ボクシングについて伝える能力はある。ただ、日テレの体質なんですかね。冬の高校サッカー選手権などを筆頭に、日テレのスポーツ実況は試合そっちのけで、“どれだけ片方に肩入れするか”、それによって“どれだけ盛り上げるか”、また場合によっては“どれだけお涙頂戴に持っていけるか”に寄りすぎることがあるので……。今回も井上選手の久々の挑戦者としての試合ですからね。選手以上に肩に力が入りまくっていたのか……」(前出・テレビ局関係者)

強いパンチ・言葉をくり出すのはボクサーだけでいいのだが……。

鈴木健アナウンサー(日本テレビHPより)

 

'21年2月、週刊女性の取材を受ける井上尚弥

 

井上尚弥

 

井上尚弥(右)とスティーブン・フルトン(井上のInstagramより)