2021年4月、取材に応じた橋本崇載容疑者

 まだ気温も低い、午前7時過ぎのこと。開け放っていた1階の窓から、男が押し入ってきた。不審者の侵入だけでなく、住人の男性が驚愕したのは、その男が娘の元夫であったこと――。

 滋賀県警は7月20日、殺人未遂の疑いで将棋の元プロ棋士だった橋本崇載容疑者(40)を逮捕した。橋本容疑者は、同日に滋賀県大津市内にある元妻の一戸建て住宅に侵入し、元妻とその父親をクワで殴りつけて殺害しようとしたもの。

「当時、息子と2階にいた橋本容疑者の元妻は、父親の大声で何事かと思い1階に降りたところ、父親が橋本容疑者と揉み合いになっていた。2階に逃げると、橋本容疑者が追いかけようとしたため、父親が引きとめた。なんとか息子を連れて自宅から逃げ出した元妻の110番通報によって警察官が駆け付けたところ、橋本容疑者が父親に取り押さえられていました。橋本容疑者は取り調べに対して、黙秘しています」(捜査関係者)

 元妻と父親は軽傷を負い、橋本容疑者は父親からの抵抗を受け頭から血を流していた。救急搬送され治療を受けた後、警察が橋本容疑者に任意同行を求めるも拒否したため、その場で緊急逮捕された。

 ひょうきんなキャラクターで人気を博し、“ハッシー”の愛称で親しまれていた橋本容疑者。かつてはトップ棋士として羽生善治や藤井聡太などともしのぎを削った彼が、犯罪者へと転落したのには、突然起こった“家庭内トラブル”が背景にある。

街で親子を見かけると、吐き気をもよおす

 2021年4月、橋本容疑者は『週刊女性』の取材に応じて、彼の身に起こった“衝撃の事実”を語っていた。

 橋本容疑者によれば、発端は2019年7月18日のこと。橋本容疑者が対局を終えて東京から自宅のあった大津市へと帰ったところ、妻と生後4か月の息子の姿が消えていた。妻が子どもを連れて、出ていったのだ。橋本容疑者は、妻と連絡を取り、話し合いを続けていたが、決裂。ほどなくして離婚裁判が始まったという。

 橋本容疑者は、当時の心境についてこう話していた。

息子が生まれたときに流した涙、毎日入ったお風呂。幸せだった日々は何だったのか。茫然として、まともに将棋も指せなくなりました。街で親子を見かけると、吐き気をもよおすほど。生き地獄です」(橋本容疑者、2021年取材時、以下同)

ホストとして働いていた橋本崇載容疑者(本人のものとみられるSNSより)

 2020年8月には、棋士としての活動を休業。2021年4月には、棋士として引退する。

「橋本容疑者はユーチューバーとしての活動をスタートさせますが、少しずつ精神のバランスを失っていったのか、SNSでの攻撃的な投稿が見られるようになったのです」(全国紙社会部記者)

40歳デブが売れる程ホストは甘くない

 その矛先は元妻へと向けられた。《無差別殺人起こしてから自殺したるわ どれだけの苦痛味わったかなんてわからんやろと思う》、《仕事と子供を奪い取り、絶対に許せない》、《僕のすべてを潰した》、《僕を地獄に落とした》といった元妻へ向けた攻撃的な内容に加え、元妻の氏名や住所なども晒した。これにより橋本容疑者は2022年12月と2023年1月に名誉棄損の罪で逮捕される。今年6月23日には、滋賀県の大津地裁で懲役1年6か月、執行猶予4年の有罪判決が下された。

「有罪判決の後、橋本容疑者は地元である福岡県内の繁華街でホストとして働くように」(前出・社会部記者、以下同)

 その店舗関係者と思われるツイッターには、

《橋本崇載入店きまりました(中略)40歳デブが売れる程ホストは甘くない。でも知名度があるのなら人よりチャンスは絶対にある》(現在は削除)

 と投稿されていたが……。

「橋本容疑者は朝方から営業をスタートする昼間のホストとして働いていたのですが、働き始めてほどなくして、従業員同士でトラブルになったよう。そのため夜の勤務に異動させてもらうも、7月には辞めてしまった。その後、凶行に至るのです」

 新たな職場を離れ、再び無職になった橋本容疑者。人生がうまくいかないのは元妻のせいだと思い込み、恨みを募らせていったのか。

「息子のために、将棋を辞めてでも死んでも戦う」

 かつて『週刊女性』の取材にそう語っていた橋本容疑者。

 息子は今年で4歳になった。物心ついた息子に初めて見せた父親の姿は、本当に子どもを思っての行動だったのか。

ホストとして働いていた橋本崇載容疑者(本人のものとみられるSNSより)

 

長男を抱き、笑顔の橋本崇載容疑者

 

2021年4月8日には橋本崇載容疑者の話を交え、連れ去りについて議員が国会で問題提起していた