豊昇龍(撮影:木原みぎわ)

「大関の名を汚さぬよう、気魄一閃の精神で努力いたします」

 昇進伝達式の口上で、師匠である立浪親方(元小結旭豊)の隣で深々と頭を下げつつ、緊張した口ぶりでこう決意を述べたのが、このたび新大関となった豊昇龍(24)だ。

祝・大関昇進の豊昇龍

 7月23日まで行われた名古屋場所では、見事に優勝。

「荒れる名古屋場所」の言葉どおり、見どころが満載だった。横綱照ノ富士や、大関貴景勝に霧島といった上位陣が次々休場したものの、豊昇龍をはじめ、注目の入門からわずか4場所目で新入幕という注目の19歳・伯桜鵬(旧しこ名:落合 宮城野部屋)らの期待と活躍は、“大物”たち不在の寂しさをかき消した。

 千秋楽は3人の力士の優勝争いに。11勝3敗の豊昇龍、伯桜鵬、北勝富士(31歳 八角部屋)で、誰が勝っても初優勝という、盛り上がらないはずがない1日だった。

「所属する立浪部屋は、現親方になってからの初の大関、そして初の優勝力士だった。豊昇龍はもちろん、立浪親方をはじめとした部屋関係者は喜びもひとしおだったことでしょう」(スポーツライター)

レスリング時代の体重は65キロ

 この優勝と昇進にことのほか喜んでいるのが、豊昇龍の叔父である元横綱・朝青龍のドルゴルスレン・ダグワドルジさん(42)だ。自身のツイッターでは《新大関誕生 おめでとう さー豊昇龍よこれから本番!!》(原文ママ)と祝福。自身の苦労を振り返りつつ激励の言葉を送っている。

「もともとはレスリングの選手として'15年3月に日本体育大学柏高校へ留学しました。現在は188センチ、142キロという体格を誇る豊昇龍ですが、来日当初は体重が65キロ程度しかなかったとか。当時は横綱だった叔父の活躍は知りつつも、相撲は『痛そうで怖い』と敬遠していたそうです。

 しかし、実際に両国国技館で大相撲を見学した際、その迫力に感化され、叔父と同じ道を歩むことを決意。叔父には当初反対されたそうですが、最終的には賛成してくれたとか。その後レスリング部から相撲部に転部しました」(前出・スポーツライター)

 高校卒業後、立浪部屋に入門する。しかし、こんなエピソードも。

「当時は朝青龍がトラブルで角界を去って間もないころ。そんな彼の甥ということもあり、入門を渋る部屋がほとんどだったそうです。そんななか、弟子入りを許したのは現役時代から朝青龍と親交があった立浪親方だった。しかも、外国人力士の所属は各部屋1人。朝青龍も豊昇龍も、立浪親方に絶対の信頼があるわけでしょう」(同・スポーツライター)

 大相撲の場所中の懸賞旗でもおなじみの、高須クリニック院長の高須克弥さん(78)は、豊昇龍との交流についてこう話す。

「僕はもともと叔父さん(元朝青龍)と仲良しで、朝青龍から常々『甥っ子をよろしく』と言われていました。だからいつもたくさん懸賞金を出しているんです。化粧まわしも、大関昇進のお祝いのつもりで作ったんですが、名古屋場所の活躍ぶりがあまりにも素晴らしいので、大関になる前に渡してしまいました。結果、見事に大関昇進を果たしてくれた。

 また、以前から魚より肉が好きだと言っていたので、優勝が決まりそうになったときに名古屋市内から車で片道3時間かけて飛騨牛1頭を買いつけに行きましたよ。プレゼントを伝えたら、『牛1頭なんてうれしいです。早く食べたいっす』と喜んでくれてうれしかったですね」

 好角家としての見解も語る。

「彼の相撲は勝ちにこだわり、粘り強く、珍しい手も繰り出す。ずるいところがある、なんて評する人がいるけど、とんでもない。賢い力士だと思います。相撲で勝つために頑張るという姿勢は叔父さんにそっくり。でも、まだ子どもっぽくて愛嬌がある。素直に喜びの感情を出すのがいいね。

 今回は本当に頑張ったし、僕も喜ばせてもらったから、実は化粧まわしをもう1つプレゼントしようかとも考えているんです」

土俵とは正反対の無邪気な笑顔

 豊昇龍の素顔については、歌手の小林幸子さん(69)も大絶賛する。

「最近だと6月に新潟県十日町市で行われた田植えのイベントで一緒になったのですが、『白いご飯が大好き。新潟のお米はめちゃくちゃおいしい』と言っていましたね。また、現在少女漫画誌で私が主人公の漫画が連載されているんですけど(註:『ミステリーボニータ』で連載されている『異世界小林幸子~ラスボス降臨!~』)、その話題になったとき、『なんていう雑誌ですか。漫画大好きだから読みたいです。買いに行きます』と言ってくれました。

 いつも土俵上で見せている勝負師の顔とは正反対の、とっても無邪気な可愛い笑顔が印象的な、素直で誠実な若者ですね」

 なお、この田植えイベントに同行した週刊女性記者によると、

「この日はあいにくの雨模様だったのですが、豊昇龍関は、『雨は嫌いじゃないんです。雨の日のほうが、力が出るというか、いいことがあるんです』と、集まった地元の人たちやスタッフなど周囲を気遣うような発言をしていました。

 また、まったく偉ぶるところがなく、部屋の若い衆と仲良くじゃれ合うようにしていたのが微笑ましかったですね。

 車座で行われた記者会見では、『お酒は飲むけれども、そんなに好きでもない』『お菓子が好き』と素直に答えていて、Z世代の若者らしい一面がうかがえました。

 ただ、『好きな女性のタイプや、好きなタレントさんは?』と質問したところ、照れてしまったのかなかなか答えてくれず、『……優しい人かな?』と、ぼそっと言ったのが印象的でした」

 マイペースながら、周囲に気を使うこともできる、みんなに愛される素顔の持ち主のようだ。

 元朝青龍も取材をしたことがある相撲担当記者はこう語る。

「朝青龍時代の叔父さんよりは、性格が穏やかな印象がありますね。以前は何かにつけ叔父の名前が出ることに敏感になっていた時期があったようです。ですが、確実に実績を残すようになってから、あまり気にしなくなったようで、伝達式後の記者会見でも、『おまえが優勝したら泣くからな、と言われた』と元朝青龍とのやりとりを朗らかに話していましたね」

 相撲ファンで知られる俳優の冨士眞奈美さん(85)は、このように期待を込める。

「今回の名古屋場所は、世代交代が感じられる場所でした。私は伯桜鵬を応援していたんですけど、豊昇龍が勝ってしまった(笑)。昔みたいに“強くて憎らしい”というお相撲さんがしばらくいなかったから、豊昇龍にはそれを期待しています」

 大関昇進後の記者会見では、「ここで終わるわけじゃないので、次に向けて頑張りたい」と決意を語った豊昇龍。

 平成を彩る横綱だった叔父を仰ぎ、令和を代表する横綱になる日も近いかもしれない。

(取材・文/木原みぎわ)

 

祝賀会での高須院長と豊昇龍(高須克弥さん提供)

 

高須院長と豊昇龍、食事会にて(高須克弥さん提供)

 

飛騨牛を直接買いつけに行った高須院長(高須克弥さん提供)

 

高須院長が贈った化粧まわし(高須克弥さん提供)

 

小林幸子さんと参加した田植えイベントにて(撮影:木原みぎわ)

 

小林幸子さんと参加した田植えイベントにて(撮影:木原みぎわ)

 

小林幸子さんと参加した田植えイベントにて(撮影:木原みぎわ)