同人活動をしている、しりでっどマンさん。なんと8か月で20kgの減量に成功した

「同人誌を作るのは魂を削る作業……だと思っています。好きなキャラクターや作品の描かれていない部分を妄想して一冊の本を作りたい、そうすることで自分なりの理解を深めてより作品を楽しみたい。そんな前向きな気持ちではじめた同人誌作りでしたが、健康度外視で熱中しすぎた結果、気づいたときには体重が20㎏も増えていて、心身ともにボロボロになっていました。自分を見つめること、大切にすることを放棄したからだと思います」

 そう話してくれたのは、都内で会社員をしながら『ヒプノシスマイク』『弱虫ペダル』などの作品の同人活動をしている、しりでっどマンさん(30代女性)だ。

 同人活動とは、既存の作品をもとに二次的にマンガや小説などを創作し、ネット上に作品をアップしたり個人で本を作る活動のことだが、オリジナルの作品を創作するケースも。

8時間フルタイムで働いたあと深夜にマンガ原稿を

 先日、東京ビックサイトで開催された日本一の規模を誇る同人誌即売会「コミックマーケット」(通称コミケ)では、2日間で26万人の来場、サークル参加(出展ブース)は2万以上など、市場はとても大きく、ひとつの社会現象にもなっている。

 そして、同人活動をしているいわゆる“同人作家”と呼ばれる人たちは、あくまで趣味として本を制作するアマチュアなので当然ふだんの生活や仕事がある。コミケなどのイベント前には、仕事終わりに睡眠時間を削り休日も返上して原稿を作り、自分で印刷所を見つけ手配し、自腹で本を作るという、はたから見ると苦行では?という作業に没頭するのだ。

「コミックマーケット」の会場としておなじみの東京ビックサイト。今冬以降から2026年まで大規模改修工事が行われ、会場の一部が使えない状態に。運営側は「物理的な制約に挑戦していくことになる」とコメントしている

私は普通の会社員なのでイベント前は8時間フルタイムで働いたあと、22時から深夜の2時くらいまでマンガの原稿を描きます。業務内容は主に接客で、お客さまとの会話で常に気を遣いエネルギーを消費していたこともあり、“仕事もがんばったし、原稿執筆のお供に食べてもいいよね”と深夜にも関わらずポテチやアイスを食べまくる日々を続けていました。特に運動もしてなかったので、気づけば体重はみるみる増えていって身長160cmで体重は最高で93kgになっていました」(しりでっどマンさん、以下同)

 仕事終わりにコンビニに行くのが日課で、作業のお供に何を食べようか考えるのも楽しかったという。そんな生活を続けているうちに、体重は増加。見て見ぬフリをしていたが、ついに身体に異変が。右胸の下あたりに違和感を覚え、つらい腰痛に襲われるように。

「病院に行くと胆のうに石があると言われました。コレステロールの多い食事をしている人ができやすいとのことでしたが、明確な理由は分からないとのこと。手術で胆のうを全摘出することになり、職場にも迷惑をかけてしまって……。それでも原稿は続けて、まさに命がけで新刊を作り、大好きなイベントに参加したんです」

30代オタク女子のしりでっどマンさん。身長は約160㎝だが、体重はピーク時に90kgを超えた

 同人誌即売会には“文化祭”のような楽しさがある。一生懸命モノづくりに励む準備期間があり、当日には長机がずらりと並んだ会場で販売をする。そこでは自分たちの好きな作品について語り合ったり、推しの同人作家に直接ファンレターを渡したり……。多くの時間を費やして作るぶん、完成し人に届いた時の感動は何物にも代えがたい。しりでっどマンさんもリアルで交流ができるイベントが大好きだった。

 ただ、胆のうの手術をし、直前にはぎっくり腰になりながらも作り上げた一冊を出展したイベントで、しりでっどマンさんは自分の作品に対し、心をえぐられる言葉を参加者から言われた。

「24時間あるうちのたった20分がんばれば変わるんだよ

「その場では笑顔で対応しましたが、心がすっかり折れてしまって。もともと明るい性格なのですが、イベントが終わってからも、ずっとモヤモヤした気持ちを抱えていました。原稿も手につかなくなり、ふと鏡を見た時に、そこには“アラサーの太った全然楽しくなさそうな覇気のない女”が写っていて。これがいまの私……。と心底落ち込みました」

 その頃には肥満による生理不順もあり、心身ともにボロボロに。このままではマズイ、と一念発起しダイエットをはじめることに。きっかけは友人のある言葉だったという。

「当時の私は、まさに『ちいかわ』に登場するハチワレというキャラが発する名言(?)『喜びがない~』状態で(笑)。そんな時に友人が電話で“最近筋トレばっかしてる”と話していて。えらいね……と返すと“1日24時間あるうちのたった20分がんばれば変わるんだよ”という言葉をかけられハッとしました。マンガの原稿では20分で1コマ描けるか描けないか。そのちょっとの時間だけならがんばれるかも、と思い運動をしようと決心しました」

 心身ともに健康になりたいと、ダイエットのために筋トレをはじめたしりでっどマンさん。最初に取り組んだのは、自宅でできるトレーニング“ワークアウト”をサポートするNikeの無料アプリだった。

昔スポーツジムに通っていたことがあるのですが、めんどうになって長くは続かなくて。家でできる運動はないかとこのアプリに辿りつきました。自宅でできる筋トレやヨガをサポートしてくれて、無料というのもうれしい。あとは、ワークアウト後にアプリ内でトロフィーがもらえるのですが、ゲームアプリのログインボーナスみたいな感じもあり(笑)楽しく運動する習慣が身に付きました

しりでっどマンさんがダイエットをはじめる際に利用した、自宅トレーニングをサポートするNikeのアプリ(画像はAppStore「NikeTrainingClub」より)

 毎日運動をする習慣が身に付いたところで、脂肪を燃焼するのには“有酸素運動”が効果的と知り、1万円台のエアロバイクを購入することに。

「仕事から帰ってくるとだいたい20時過ぎ。そこから着替えてウォーキングをするのも……と思い、エアロバイクを導入してみました。私は『弱虫ペダル』という作品が好きで。運動音痴の高校生、小野田坂道くんが自転車競技部で仲間とともにインターハイを目指す話なのですが……。“小野田くんもあんなにがんばってたんだ……。私も彼のようになりたい!”という気持ちで1日最低20分漕ぎました(笑)。エアロバイクだとアニメを観ながらでも漕げるので、“アニメはエアロバイクを漕いでいる時しかみない”と決めたのも良かったのかも」

 Nikeアプリのワークアウトとエアロバイクを駆使し運動を続けていると、1か月で4kgほど減量。さらに、ハードな運動と休憩を繰り返す「HIITトレーニング」をはじめると順調に体重が減っていったそう。最後には食生活を見直すようになり、8か月で-20kgのダイエットに成功した。

ジムに通わず、推しのアニメや楽曲を聞きながらの宅トレで-20kgのダイエットに成功!Mサイズの服が着れて感動……

 そんなしりでっどマンさんの宅トレ成功のカギは、“推しの力を借りる”こと。

HIITトレーニングはラジオ体操と同じでだんだんと“次はこの運動”と何をやるかを覚えてくる。なので、音楽をかけてノリノリになりながらやっていました。よく聞いていたのが、ヒプノシスマイクの楽曲。テンポが速かったり、曲に勢いがあったりと筋トレをしながら聞くのにぴったりなんです!

『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』はダイエットに適当?

『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』(以下、ヒプマイ)とは、男性声優18人がキャラクターに扮してラップを歌う人気コンテンツ。マンガやアニメを原作とするのではなく“音楽を原作”としていて、主にディビジョンと呼ばれる3人ずつのグループに分かれて楽曲がリリースされる。

「ディビジョンは『イケブクロ』『ヨコハマ』『シブヤ』……など、地域ごとにグループが分かれているのですが、私はイケブクロディビジョンの山田一郎くん(CV.木村昴)が最推し。イケブクロの『IKEBUKURO WEST GAME PARK』という曲や、ナゴヤの『Bad Ass Temple Funky Sounds』というノリノリで攻撃力の高い曲は筋トレにぴったり。たくさん助けられました」

 同人誌のイベントでかけられた心をえぐる言葉。自分の身体と心に向き合い、推しの力を借りつつダイエットに励んだ日々――。そんな自身の体験マンガを、X(旧ツイッター)に投稿したところ、2.6万もの『いいね』がつけられ多くの反響を呼んだ。

「本当にさまざまな人からコメントがあって、特に“共感”のリアクションが多かったと感じました。私のように仕事や家事、そして趣味にと日々追われるばかりで、自分を健康に保つためにダイエットをしなきゃと思いつつも、なかなか実践できていない人がこんなにもいるのかと思いました」

1万円台で購入したエアロバイク。モニター部分にiPadが置け、“アニメを見るためにエアロバイクを漕ぐ”習慣が身に付いた(写真提供、しりでっどマンさん)

 そんな体験マンガと寄せられた多くの反響が編集者の目に届き、しりでっどマンさんのダイエット成功法と、筋トレやダイエッターの専門家との対談などを収録した本が発売されることになった。

「趣味で本を作っていた人間が、まさか出版社から本を出すことになるなんて……。ツイッターに体験マンガをアップした理由は“ジムに通わなくても、ズボラな私でもこんなに痩せたよ!”ということを伝えたかったからなので、本を通してより多くの人に実践した宅トレの方法などが、分かりやすく伝わればと思います」

筋トレやエアロバイクはすっかり習慣になっていて、いまでもダイエットは続けています。Mサイズの服も着られるようになり、ふら~っと入った洋服屋さんで服が買えるのがとってもうれしい。20kg痩せられたことで自信がついてメンタルも回復し、同人活動もぼちぼち再開しています

 これは偶然だが、しりでっどマンさんが宅トレでお世話になった「ヒプマイ」から、このたび、筋トレにぴったりの楽曲が発表された。8月23日に発売となったヒプマイ初の2タイトル同時発売のEP、そのうちの1枚『The Block Party -HOMIEs-』に収録されている「Move Your Body Till You Die!」という曲で、TRFのDJ KOOと、ミュージシャンで音楽プロデューサーのヒャダインこと前山田健一が共同作成している。

 この曲は、ヒプマイキャラの中で圧倒的な身体能力を持つ、元軍人という経歴の「毒島(ぶすじま)メイソン理(り)鶯(おう)」(CV. 神尾晋一郎)を中心に歌う“エクササイズ”をテーマとしたもの。歌い出しはかつて大ブームを起こした「ビリーズブートキャンプ」ならぬ「RIO`s Boot Camp(リオーズ ブート キャンプ)へようこそ」という掛け声ではじまる。

「 “思わぬ公式からの配給”という感じでびっくりしています。個人の感想ですが、この曲にはメインとなる理鶯さん以外の8人のキャラが、屈強な肉体を持つ理(り)鶯(お)さんの激しいトレーニングに必死についていく……、というわちゃわちゃとした雰囲気があって、宅トレにぴったりだと思いました。運動に苦手意識のありそうな、夢野先生もこのトレーニングをやっているのかと思うと面白いです(笑)」

 しりでっどマンさんはいまでもヒプマイの楽曲が大好きとのことだが、いま、一番の推しはと聞かれると、それはヒプマイでもほかのアニメのキャラでもないという。

いまの私の一番の推しは“自分”です。推しって、その時自分が一番大切にしていることや、一番時間をかけていることだと思うんです。いまは自分の健康管理や、筋トレに一番時間を費やしている。だから、“推しは自分”かな……って思います

 日々の疲れを推しに癒してもらう。推しのライブを観るために労働をする……。というのはもちろん素敵なこと。けれど、推し活のために睡眠時間を削る、無理をして身体を壊してしまっては本末転倒だと身を持って知った、しりでっどマンさんだからこそ言える言葉かもしれない。

 推しを推す前に、まず自分を推せるように心身共に健康に。しりでっどマンさんの名言を肝に銘じて、これからも推し活に没頭したい。

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 同人作家・しりでっどマン自らがダイエットに成功した方法をマンガと文章で解説。さらに、有名YouTuberをはじめとする専門家との対談も多数収録。「まず何から始めたらいい?」「食べ過ぎはどうしたら防げる?」「運動を挫折しないためには?」など、ダイエットに関するあらゆる考え方や方法論から、「これなら自分も真似できそう」に出合える!

30代オタク女子のしりでっどマンさん。身長は約160㎝だが、体重はピーク時に90kgを超えた

 

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8月23日に発売された、ヒプマイ初の2タイトル同時発売EP『TheBlockParty-HOMIEs-』と『TheBlockParty–HOODs-』のジャケット写真。それぞれのEPを組み合わせると、18人のキャラクターが全員揃う仕様になっている(ヒプノシスマイクオフィシャルHPより引用)

 

しりでっどマンさんがダイエットをはじめる際に利用した、自宅トレーニングをサポートするNikeのアプリ(画像はAppStore「NikeTrainingClub」より)

 

1万円台で購入したエアロバイク。モニター部分にiPadが置け、“アニメを見るためにエアロバイクを漕ぐ”習慣が身に付いた(写真提供、しりでっどマンさん)