※写真はイメージです

 日本中で気温35度以上の猛暑日が続いた今年の夏、エアコンが効いた涼しい部屋で氷を入れた冷た~い飲み物をゴクゴク……なんてこと、やってはいないだろうか?

 こうした生活を続けていると血のめぐりが悪くなり、やがて心身の不調につながるという。

便利な生活環境が認知症を引き起こす

「血のめぐりと冷えは深く関係していますから、冷たいものを食べたり、飲んだりはほどほどに。女性は生理不順、さらに更年期からはホルモンバランスの乱れで血のめぐりが悪くなる。身体の冷えを甘く見てはいけません」

 とは、冷え治療の第一人者、川嶋朗先生。人生100年時代、病気をせずに健康で豊かな老後を送るためには“血めぐり”への意識が大事だという。

 血液は神経細胞や脳へ酸素や栄養を供給し、老廃物を回収している。

「血のめぐりが悪いと、細胞の新陳代謝がスムーズにいかなくなり、免疫機能も下がる。免疫が働かなくなると、あらゆる病気や不調をまねき、さらには自律神経も乱れていきます」(川嶋先生、以下同)

 心身に悪影響をもたらすだけでなく、脳への影響も甚大だ。

「脳は身体の中でも大量に血液を必要とする器官です。京都大学が『脳の血流低下が認知機能障害を引き起こす』という論文を発表しましたが、脳の血めぐりが滞ることで、脳内に炎症を起こし認知機能障害を引き起こすことがわかったのです」

 認知症もまた、血めぐりや冷えと深い関係があるのだ。

「頻繁な通院や薬が必要な身体にならないためにも、病気になる前、未病の段階で体質をしっかり改善することが大切です」

 薬は症状を改善させ、その場をしのぐことができても、効くものほど依存度も高いと話す川嶋先生。日頃から“血流力”を上げ、自分の身体の質を上げることが重要だ。

血のめぐりが悪くなると起こる病気

平熱の低下で免疫力も下がる

 日本人の平均体温は、ここ約50年間で36度台後半から36度台前半まで、約1度近くも下がっている。望ましい平熱の体温は36.5~37度で、35度台という人は低すぎるという。

「何らかの病気や不調を抱えている人は必ずといっていいほど冷えています。実は、体温と免疫力は大きく関係しており、36.5度を基点に、体温が1度上がると免疫力は数倍になり、逆に1度下がれば、免疫は大幅に低下します」

 平熱が低い人ほど免疫力も低いといえるが、なぜ、平均体温が下がったのか。

「車や電車、エレベーターなどを使い、筋肉が収縮しにくい生活を送っていると、基礎代謝が下がり、身体の冷えにつながります。

 現代生活は便利ですが、そのせいで身体の熱をつくるという人間が本来持っている力を育てづらくなりました。文明の利器に頼り、便利になればなるほど不健康の要因になるとは、皮肉なものですね」

 筋肉量は、加齢によって減少するが、特に女性は、そもそも筋肉が少ないので、より注意が必要だ。

「筋肉を動かして運動をすれば、それだけで身体に熱が生まれて血のめぐりもよくなります。さらに、筋力がついてくると体温を自分で調節できるようになり、免疫力が下がらなくなるのです」

 階段があったら上り下りをする、電車では座らない、家事をしながらスクワットをしてみるなど、“ながら”で構わないので筋肉を使うことを意識してほしいと川嶋先生。

「筋肉は何歳でも適度な運動を一定期間行えば増えますから、筋トレなどを取り入れることが一番ではありますが、日常でやり続けることが大事です。身体を使うと疲れる……のではなく、自分の身体が得をすると考えて」

現代人の血流悪化・体温低下の原因は?
「エアコン・乗り物の進化・冷蔵庫」といった現代文明が不調の一因!
 エアコンや冷蔵庫の冷えた飲み物などで身体が冷え、移動手段の進化で運動不足になり、体内の熱産生能力が下がって体温が低下。それに伴い免疫力も落ちている。

指先の血流改善が全身を整える

 とはいえ、なかなか運動量が確保できない、続かない、というあなたに川嶋先生がオススメするのが、指をもむだけのストレッチ!

「手には多くの血管が集中していますので、指先の血めぐりをよくさせることは、全身の血流改善につながります」

 指先には毛細血管が張りめぐらされているが、この毛細血管は非常に細く、さまざまな原因で血が滞りやすい。その結果、冷えが生じ、全身の冷えにもつながる。

「冷えを感じたとき、指をもむのが一番手っ取り早い冷え対策。その時に、手首も温めておけば、より血流改善の効果が期待できます。なにより、指もみは気軽に続けられることがポイントなんです」

 テレビを見ながらでも、何かの空き時間や待ち時間に指をもむことをくせづけて。

「指組みは毛細血管の不具合を整え、血めぐりを改善します。指先をもむだけでもいいのです。爪の生え際にはツボがあるので、まんべんなくもんでみてください。血めぐりが良くなって、全身がポカポカしてきます」

 プラスして、湯船につかる、白湯(さゆ)を飲む、生姜を多くとるなどして、身体を内部から温めることもお忘れなく。

「指をもむことで冷え対策になりますし、免疫力も上がる。脳も活性化するので、認知症予防にもなります。ぜひ、ラクをして健康になりましょう」

 川嶋先生が行きついた、究極かんたん血めぐりケア。いつでもどこでもできる指もみで、しっかり血流力を上げていこう!

血めぐりに大きく影響!? “ゆがみ爪”にご注意を

 爪がゆがんで、中心点がずれてしまう生え方や巻き爪などは指先にある毛細血管の血めぐりを悪くする。

 爪の中心点を決めて、左右対称になるようバランスを取って爪を切ることによって形が正しい状態に戻ると、指先、そして全身の血めぐりが回復してくる。

 手は半年、足は1年ほどかけて、根気よく爪のケアを続けてみよう。

良い爪

 爪根からまっすぐ、垂直に伸びている状態。爪を切るときは、中心点を基準に左右対称になるよう整えて。

ゆがみ爪に注意!「良い爪」(イラスト/赤松かおり)

悪い爪

 爪根の部分が傾き、中心点がずれている状態。ゆがみがあって、爪の中心点がずれている場合は、ずれている方向と反対側を多めに切ってバランスを整える。

ゆがみ爪に注意!「悪い爪」(イラスト/赤松かおり)

指もみストレッチ

 指先には多くの毛細血管があり、刺激すると血めぐりが良くなり、全身の新陳代謝がアップ、脳も活性化する。待ち時間やテレビを見ながら、まずは1分もんでみよう。

1.組む

 左右の手の指を交互に組む。右左、どちらが上でもOK。指の第一関節よりも指先に近いところ(関節だと血が滞るのでNG)で組む。

左右の手の指を交互に組む。右左、どちらが上でもOK。(イラスト/赤松かおり)
指の第一関節よりも指先に近いところ(関節だと血が滞るのでNG)で組む。(イラスト/赤松かおり)

 真ん中に卵が入るほどの空間をつくり、軽く握ってそれを閉じるように。これを数回繰り返す。

真ん中に卵が入るほどの空間をつくり、軽く握ってそれを閉じるように。これを数回繰り返す。(イラスト/赤松かおり)

2.もむ

 親指と人さし指などで軽くつまむようにして、全部の指先を順に軽くもむ。指の腹や横、爪の部分もしっかりと。親指から小指まで、左右の手指をまんべんなく刺激する。

親指と人さし指などで軽くつまむようにして、全部の指先を順に軽くもむ。(イラスト/赤松かおり)
川嶋朗先生●神奈川歯科大学大学院総合医療学講座特任教授/統合医療SDMクリニック院長。北海道大学医学部卒。冷え研究の第一人者で、専門は統合医療。著書多数。近著に『80歳をすぎても老化しない脳とカラダをつくる!もむだけストレッチ』(宝島社)がある。
川嶋 朗先生●神奈川歯科大学大学院総合医療学講座特任教授/統合医療SDMクリニック院長。北海道大学医学部卒。冷え研究の第一人者で、専門は統合医療。著書多数。近著に80歳をすぎても老化しない脳とカラダをつくる! もむだけストレッチ(宝島社)がある。

(取材・文/成田 全 イラスト/赤松かおり)

 

左右の手の指を交互に組む。右左、どちらが上でもOK。(イラスト/赤松かおり)

 

指の第一関節よりも指先に近いところ(関節だと血が滞るのでNG)で組む。(イラスト/赤松かおり)

 

真ん中に卵が入るほどの空間をつくり、軽く握ってそれを閉じるように。これを数回繰り返す。(イラスト/赤松かおり)

 

親指と人さし指などで軽くつまむようにして、全部の指先を順に軽くもむ。(イラスト/赤松かおり)

 

血のめぐりが悪くなると起こる病気

 

ゆがみ爪に注意!「良い爪」(イラスト/赤松かおり)

 

ゆがみ爪に注意!「悪い爪」(イラスト/赤松かおり)