EXILE・TAKAHIRO(38)撮影/伊藤和幸

「スタッフから“今年、ソロ活動10周年ですね”と聞いて、驚きました。自分ではまったく意識していなかったので」

 '13年6月にリリースしたシングル『一千一秒』でソロ活動をスタートさせたEXILE TAKAHIRO。

「この10年、継続的にソロ活動ができていたかといえば、そうではなかったと思います。もともと、EXILEの活動を優先すると自分の中で決めていました。そして、EXILEに新たに加わってくれたメンバーがいれば、勇退する方もいたりと、変化がありましたし。コロナ禍では、これまでとは違うオンラインライブというものを作り出しましたし、継続的にソロ活動に本腰を入れられる時間がなかなかなかったですね」

楽しんで歌えたのはここ数年のこと

EXILE・TAKAHIRO(38)撮影/伊藤和幸

 コロナ禍の心身共に多忙を極める中でも、TAKAHIROというアーティストのソロ活動を待ちわびる人に喜んでほしいと“EXILE RESPECT”と題し『運命のヒト』『道』といったEXILEの代表曲をセルフカバーした7曲の配信シングルをリリースした。

僕自身、EXILEに加入して17年になりますが、実は長い間スランプ期だったんです。ここ数年でようやく楽しみながら歌えるようになってきました。みなさんに支えていただきながら活動しているのに、楽しいと思えずに歌っていたEXILEの曲があるというのは失礼な話だと思い“EXILE RESPECT”という企画を考え、EXILEの楽曲をセルフカバーしようと思いました

 '06年に開催された『EXILE VOCAL BATTLE AUDITION』でボーカルの座をつかみ取ったTAKAHIRO。当時、すでに大人気だったグループは、彼の加入後、『天皇陛下御即位二十年をお祝いする国民祭典』で奉祝曲 組曲『太陽の国』を奉呈するような日本を代表する存在となっていった。

「当時、常にスケジュールに追われ、思うように歌と向き合う時間がなかった。心の余裕がなかったのだと思います。ふつうに話しているときは出る低音が歌い始めると出なくなるとか、カラオケでは調子よく歌えるのに人前に出るとイメージしたように歌えなくなったりとか、悪い状態に陥っていました。もう一度、あのころに戻ってやり直すことができたら、どうなるだろうと思いめぐらすことはあります。ただ、間違いなく言えるのは、あの時期があったからこそ、歌うことを楽しめるようになった今があるんだと思います」

 スランプを抜け出すきっかけのひとつが“夢”だという。

「ある夜、右手でマイクを持って歌っている夢を見ました。デビュー以降、左手でマイクを持つクセがあったのですが『VOCAL BATTLE AUDITION』のときや、デビューしてすぐは右手で持っていたんです。すぐにその日のリハーサルで、右手でマイクを持って歌ってみたら、全然感覚が違った。この“楽しい”感覚を伸ばしていこうと思いました。それをきっかけに悪い部分に目を向けるのではなく、いいほうを伸ばしていくように意識するようになると、自信もついてきて」

世間の声を聞いても怖くなくなった

EXILE・TAKAHIRO(38)撮影/伊藤和幸

 転機となる夢を見たのは、'17年のこと。ファンクラブの会員限定イベントとして'17年から'19年にかけて47都道府県をソロで回った『TAKAHIRO 道の駅』のツアーのリハーサルの初日前夜だ。

「応援してくれるファンのみなさんと、EXILEというグループのありがたさを改めて感じた瞬間だった」と振り返る彼が、ボーカルとして大きく成長できたもうひとつの契機が家族の存在。

「自分の中にあったフワフワした部分が、家庭を持ったことで、なくなっていきましたね。もちろん、世間からの評価といったものとしっかり向き合うということは変わらないのですが、その声を聞いてブレていた自分がいなくなった。必要のないプライドを保つために怖がっていたことがなんともないと思えるようになりました」

 アーティストとして“実り”を迎えたこのタイミングで、ニューアルバム『EXPLORE』をリリースした。配信リリースしたEXILE RESPECTの曲やオリジナル曲を収録。『Spotlight~光の先へ~』は、作曲をEXILE ATSUSHIが、作詞を清木場俊介が担当している。

「憧れのおふたりから楽曲を提供していただきました。“いつか曲をプレゼントしたいね”と話してくださっていたことが、実現しました。俊(清木場)さんが仮歌を入れてくださったデモ音源を聴いた瞬間、感動して。ピアノと歌唱だけのバラード曲に魂が揺さぶられました。たまに、ATSUSHIさんと俊さんが一緒に歌われることについて(ボーカルとしての相方を取られるような感覚で)やきもちを焼かないかと聞かれますが、まったくないです。おふたりで歌うとなると僕はファンのころに戻って“もっと聴きた
い”と思ってしまうくらいなので(笑)」

 9月21日には、ソロデビュー10周年を記念して、特別な場所・武道館でのライブが決定している。

「9月22日にEXILE加入17周年を迎えます。新しいスタートを切るために、その前日の9月21日にEXILE VOCAL BATTLE AUDITION』の最終審査が行われ、EXILEのボーカルになることができた武道館のステージに立つ。すごく気合が入っていますし、なにより、応援してくださるみなさんを武道館に連れていけることがうれしいです」

 笑顔を見せるTAKAHIROの新章がいったいどんな実を結ぶのか楽しみだ。

戦友・黒木啓司の引退で変わったEXILEの『道』への思い

EXILE・TAKAHIRO(38)撮影/伊藤和幸

 芸能界を引退すると聞いたとき、“啓司くんらしいな”と思いました。0か100かの人なので。ただ、後悔はしてほしくないと思ったので、メンバーの中で最後まで「もう少しやったら」と言い続けたと思います。

 もしかしたら、「あのころやめるって言ってたよね」と笑いながら話せる日が来る可能性もあると思ったので。ただ、これは気持ちが変わることはないと感じた瞬間からは、盛大に送り出そうと決めました。

 啓司くんの最後のライブで『道』を歌ったとき、卒業ソングとして愛していただいているこの曲の深さを身をもって感じることができました。いま、啓司くんのインスタグラムを通して“こんなことしてるんだ”って近況を知ったりして(笑)。もちろん、連絡も取っていますし、会ったりもしています。

ニューアルバム『EXPLORE』
【3CD+3DVD】【3CD+3Blu-ray】各11000円、【2CD】4950円

 

EXILE・TAKAHIRO(38)撮影/伊藤和幸

 

EXILE・TAKAHIRO(38)撮影/伊藤和幸

 

EXILE・TAKAHIRO(38)撮影/伊藤和幸