湊かなえ(撮影/渡邉智裕)

「根拠のない無敵感が出てきました(笑)」

原作者・湊かなえが語るドラマ『落日』の見どころ

 WOWOWで放送中の『連続ドラマW 湊かなえ「落日」』。原作は、湊かなえ(50)の同名小説となる。

「WOWOWさんでのドラマ化は3作目。今作もまるで映画のように、一場面ずつ丁寧に撮ってくださっていて、とても光栄です」

 と、湊はニッコリ。映画監督・長谷部香(北川景子)と新人脚本家・甲斐真尋(吉岡里帆)が追うのは、15年前の一家殺害事件。香がこの事件にこだわる理由、真尋が抱えるトラウマ、そして死刑囚となった立石力輝斗(竹内涼真)の沈黙。それぞれが背負う十字架がに明らかになってくる。

「北川さんと吉岡さん、すごく贅沢(ぜいたく)な組み合わせです。おふたりとも明るくハキハキして、自分に自信がある役をされているイメージがあって。でも『落日』では、ガラスの破片の上を血だらけになりながら一歩ずつ歩いているような役。

 北川さん演じる香は最初のうちは“ごめんなさい”を繰り返していたけど、だんだん芯の強さが表に出て、人間の強さを感じさせてくれる。見ている人も一緒に導いてくれる演技だと思います。

 吉岡さん演じる真尋は第3話まで全然笑っていないんですよね。ずっと思いつめたり、自分を偽ったり。そこから前に踏み出す力強さに“人って成長していく”と思わせてくれる演技だと思います」

 力輝斗を演じている竹内涼真については、

「竹内さんは『仮面ライダードライブ』('14年)のときから見ていますが、一途で前向きな好青年というイメージでした。今回、生きることを放棄した死刑囚をどう演じられるのかなと思っていましたが、感情の揺れがすべて目でわかるくらい、すごく細かい表情の変化を見せてくださっています」

 そして10月1日、いよいよ最終回を迎える。その見どころを尋ねると、

「登場人物たちがどこへ向かっていくのかだけでなく、“それぞれの救いってどういうことなんだろう?”と考えながら見てもらえると、より楽しんでもらえると思います。タイトルの“落日”は辞書を引くとあまりいい意味が載っていない。

 ということは……と思われるかもしれませんが(笑)、日が沈まないと、翌日の太陽は昇らない。沈む夕日に抱えてきたものを全部重ねて眺めるとき、自分の思いも太陽に込められるんじゃないかなと思います」

恐れず、不安に思うことなく突き進みたい

 湊といえば“イヤミスの女王”。デビュー作『告白』を筆頭に、読後にイヤな気持ちになるミステリーの名手として愛されている。執筆中、精神的に引っ張られたりはしないのだろうか?

「書いてるときはその登場人物の目線になって入り込んだり、寄り添ったりしているので、一緒に引っ張られそうになったりする気持ちもあるけれど、いったん離れたら客観的に距離を保つようにしています。でも、知人に会うと“今、嫌な話書いてるよね?”と言われて。なんでわかったんだろうと思ったら“顔がすごい厳しい”って(笑)」

 つらい結末になっても、“そうならないためには”を考えてもらえる。初期は、絶望などのマイナスのベクトルへと妥協せずに突き進んだ。『落日』を執筆したデビュー10周年のころは、絶望の先の再生を書いてみたかったと振り返る。そして今年はデビュー15周年、50歳を迎えた。愛娘はすでに成人し、就職も決まったという。

「もうフリーダムなんです! 毎日決まった時間にごはんを作ったり、栄養バランスを考えたりしなくていい。自分のことだけでよくなったので、気持ちとしてはすごく楽になりました。それこそ、執筆の世界から抜けなくても、作品が終わるまでずっとそこに入っていてもいいのかな、とか(笑)」

 母親業の卒業。そこから感じるものも、いずれ書きたいという。

「今までは周りとの調和や家族のことを考えながらやってきましたが、50歳になって、根拠のない無敵感が出てきました(笑)。“どう思われてもいいもんね!”という気持ちがさらに強く(笑)。恐れず、不安に思うことなく、自分が見たいこと、やりたいこと、考えたいこと、もうそこだけに突き進んでいきたい。だから、今書いてる新作もめっちゃイヤミス。『告白』よりも嫌な話かも(笑)」

WOWOW『連続ドラマW 湊かなえ「落日」』第1〜4話のシーンをチョイ見せ!

【第1話】 新進気鋭の映画監督・長谷部香(北川景子)は新人の甲斐真尋(吉岡里帆)に脚本を依頼。

第1話 新進気鋭の映画監督・長谷部香(北川景子)は新人の甲斐真尋(吉岡里帆)に脚本を依頼

【第2話】 ふたりは15年前の“笹塚町一家殺害事件”について調べ始める。ひきこもりの立石力輝斗(竹内涼真)が妹・沙良(久保史緒里/乃木坂46)を自宅で刺殺後、放火して両親も死に至らしめた事件だが……。

第2話 ふたりは15年前の“笹塚町一家殺害事件”について調べ始める。ひきこもりの立石力輝斗(竹内涼真)が妹・沙良(久保史緒里/乃木坂46)を自宅で刺殺後、放火して両親も死に至らしめた事件だが……

【第3話】 実は幼少期に笹塚町で育っていた香。死刑囚となった力輝斗は当時、アパートの隣の部屋に住んでいた。ふたりはベランダで励まし合った過去が。

第3話 実は幼少期に笹塚町で育っていた香。死刑囚となった力輝斗は当時、アパートの隣の部屋に住んでいた。ふたりはベランダで励まし合った過去が

【第4話】 姉の死を受け入れられなかった真尋。しかし、ついに向き合ったことで明らかとなる衝撃の真実とは?

第4話 姉の死を受け入れられなかった真尋。しかし、ついに向き合ったことで明らかとなる衝撃の真実とは?

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『落日』湊かなえ(ハルキ文庫)858円(税込み)※記事の中の写真をクリックするとアマゾンの紹介ページにジャンプします。
『落日』湊かなえ(ハルキ文庫)858円(税込み)

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『連続ドラマW 湊かなえ「落日」』放送・配信情報

 WOWOWにて毎週日曜夜10時〜(最終話10月1日<日>放送・配信)
 WOWOWオンデマンドで第1話〜3話を配信中
 https://wod.wowow.co.jp/content/140742

 

 WOWOWは、初回契約なら1か月間無料! BS視聴環境がなくてもネット環境があれば、配信サービス「WOWOWオンデマンド」でWOWOWを気軽に楽しめます。
詳細はこちら→https://wod.wowow.co.jp/

あわせて見たい湊かなえ原作ドラマ

WOWOWオンデマンドで配信中!

『連続ドラマW 贖罪』

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 田舎町で起きた美少女惨殺事件。母親(小泉今日子)が娘の友達4人(蒼井優、小池栄子、安藤サクラ、池脇千鶴)に放った言葉は“犯人を見つけなさい。でなければ、私が納得できるような<償い>をしなさい”。そして15年の時が流れ……。「ひとつの呪縛の言葉がそれぞれにどう影響していったか。受け止め方の違いと俳優さんたちの熱演を見ていただきたいです」

『連続ドラマW 湊かなえ ポイズンドーター・ホーリーマザー』

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 女優(足立梨花)と母親(寺島しのぶ)。すべては自分のせいだと信じる少女(清原果耶)。ライバルにいらだつ脚本家志望の女性(中村ゆり)。優しすぎて殺人を犯す女性(倉科カナ)。猫にだけ心を開く40歳(伊藤歩)。「ひとつの話の中に表と裏の顔があって。人間の美しさは描かれていませんが、自分に重ねたり、共感したりできると思います」

 

湊かなえ(撮影/渡邉智裕)

 

湊かなえ(撮影/渡邉智裕)

 

第1話 新進気鋭の映画監督・長谷部香(北川景子)は新人の甲斐真尋(吉岡里帆)に脚本を依頼

 

第2話 ふたりは15年前の“笹塚町一家殺害事件”について調べ始める。ひきこもりの立石力輝斗(竹内涼真)が妹・沙良(久保史緒里/乃木坂46)を自宅で刺殺後、放火して両親も死に至らしめた事件だが……

 

第3話 実は幼少期に笹塚町で育っていた香。死刑囚となった力輝斗は当時、アパートの隣の部屋に住んでいた。ふたりはベランダで励まし合った過去が

 

第4話 姉の死を受け入れられなかった真尋。しかし、ついに向き合ったことで明らかとなる衝撃の真実とは?

 

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