熱狂的ファンが多い『阪神タイガース』。意外と知らない、プロ野球グッズについて徹底比較します

 今年のプロ野球シーズンは劇的だった。「六甲おろし」の大合唱を背に、阪神タイガースが18年ぶりのセ・リーグ優勝。その翌週にはオリックス・バファローズがパ・リーグ三連覇を果たし、2023年のプロ野球はセ・パ共に“関西勢”が頂点を極めた。

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 優勝セールにファンが詰めかける光景をニュースで見るしかない関東在住ファンにはうらやましい限りだが、どんなものがいくらで買えるのか、両チームの優勝グッズに注目してみたい。というのも、同じ関西チームでも「阪神はグッズの価格が安い」という印象があったからだ。

アイテムが半端なく多い阪神

 そもそも阪神のオフィシャルグッズのアイテム数はハンパなく多い。王道のレプリカユニフォームやタオルのほか、カー用品、ペット用品、浴衣にアウトドアグッズ、はたまた酒やらそうめんやら、なんにでもタイガースのロゴや虎印がついている。さすが球界一の商売上手だ。今回の優勝グッズは「チームショップアルプス」や阪神百貨店内「阪神タイガースショップ」以外に、公式オンラインショップでも購入できる。

 オリックスも、球団直営ショップ「Bs SHOP」「B-WAVE」のほか、公式オンラインショップで注文を受け付けている。通常アイテムを見ると阪神ほどの種類はないが、優勝グッズの種類は負けていない。さらに「三連覇」という隠し玉もある。いい勝負になりそうだ。

 まず阪神のグッズで目につくのは「優勝記念ビールかけTシャツ」、選手らがビールかけの際に着用していたデザインだ。価格はデザインに応じて3500~6000円。対するオリックスは、これも選手着用デザインで4000円。ただし、こちらには「三連覇」デザインTシャツもあり3800円。いい勝負だが、若干ながら阪神が安い。※大人用サイズのみで比較

 続いて、優勝記念のレプリカユニフォーム。阪神が9900円に対し、オリックスは1万5000円だ。これは阪神の勝ちでいいだろう。そしてタオル。これまた様々な種類があるが、フェイスタオルで比較すると、阪神は1500円、オリックスは1800~2000円。キャップ(帽子)は、阪神4000円、オリックス6600円で、ファンが欲しがりそうなアイテムは総じて阪神のほうが安いと言える。

価格の違いは、ファンの数と熱量の差か

 優勝記念グッズは、ほとんどが受注生産だ。とはいえショップでの販売もあり、ある程度は売れ行き数を見込んで作るはずで、価格差の違いはやはり「売れる」と見込める数の違いではないかと推察する。なんといっても数が多く、熱狂的が代名詞の阪神ファンだ。18年ぶりのリーグ優勝となれば、ファンたちはこぞって優勝グッズを買い求めるだろう。

 あれもこれもと多数のアイテムを買ってもらうためには、できるだけリーズナブルな価格にしておくほうがいい。とくに、Tシャツやタオル、クリアファイルやキーホルダー、トートバッグなどファンが必ず買いそうなグッズはお手頃価格にしておきたいもの。ちなみに、この5品をまとめて買うと、どちらの球団も9000円程度となり一万円札でお釣りがくる計算だ。

 面白いのはグラスやカップ類の値付け。ゴールドマグカップは阪神が1320円、オリックスが1800円だが、ビアグラスは阪神8250円、オリックス6500円。信楽焼カップは阪神1万2000円、オリックス8500円で、さっきまでとは逆転し、阪神のほうが妙に高くなる。商品説明に容量の記載がないのでサイズ差があるのかもしれないが、酒グッズはなぜか阪神のほうが高額だ。ひょっとして阪神ファンは、ビールは甲子園球場や居酒屋で仲間と飲むもので、家飲みグッズはいらんもの、だからあまり売れないとでも考えているのだろうか?

 球団ごとに価格が異なるのは、優勝グッズに限らない。球場での応援に欠かせないレプリカユニフォーム一つ取っても、そこにはかなりの価格差がある。応援グッズを揃えて球場に参戦する場合、どの球団が最も安く済み、どの球団が高コストになるのか。各球団の公式グッズサイトから2023年アイテムの価格で比較してみた。

12球団で応援コストが最も安いのは?

 応援グッズとして今回カウントしたのは、レプリカユニフォーム(ホーム球場のみ、大人用、原則背番号あり)、選手名入りタオル(安めのもの)、応援用バットの3つ。これを合計した額を応援コストとして安い順に並べた結果は、セ・リーグは以下の通り。

1 阪神タイガース 9800円
2 広島東洋カープ 1万0250円
3 東京ヤクルトスワローズ 1万1300円
4 中日ドラゴンズ 1万2450円
5 横浜DeNAベイスターズ 1万2500円
6 読売ジャイアンツ 1万9990円

 もっとも高コストなのは巨人という結果になった。原因はユニフォーム代の違いが大きい。最も安い阪神8000円に対し、巨人は1万7000円。倍以上もする。しかし、熱狂的なファンの場合、応援にはホーム球場用とビジター球場用2種類のユニフォームを揃えるものだが、巨人のサイトにはビジターユニが見当たらなかった。ビジターユニも加えて計算すると、それがない分巨人のコスト順位はもっと良くなる。

 さらに、広島や中日にはレプリカユニのほかにサポーターユニフォームという廉価版があり、今回は条件をなるべく揃えて計算したが、サポユニを選べば阪神より安く済むだろう。そういえば、スワローズの応援には名物の「傘」がつきものなので、それを加えるともっと順位は下がるかも。

 次にパ・リーグ。こちらは比較条件がうまく揃わず、甘めの計算になったことをお断りしておく。

1 埼玉西武ライオンズ 1万1950円
2 東北楽天ゴールデンイーグルス 1万2100円
3 千葉ロッテマリーンズ 1万2300円
4 北海道日本ハムファイターズ 1万2500円
5 オリックス・バファローズ 1万3150円
6 福岡ソフトバンクホークス  1万4900円

 もっともお金持ちそうなソフトバンクが高コストに。この球団は選手ごとにタオルの価格が違うため、人気選手で計算したという事情もある。ダイナミックプライシングならぬ、人気選手プライシングなのだ。

 また、楽天のユニがシーズン終了でほぼセール価格になっていたこと、オリックスのサイトに応援バットが見当たらず、代わりにハリセンを入れたことなど、先述したように比較条件が揃わなかった。また、筆者の印象では、ロッテのサポーターはバットではなく手拍子での応援が、オリックスはタオルを上げての応援が名物なので、そうなると買うべきアイテムが減り、これより安く済ませられるかも。

 応援グッズではないが、球場に行くならチケットホルダーも揃えたい。こちらはやはり阪神が最安で1080円、他は1200~1600円ほど。もし、特定球団のファンとして形から入るなら、1万円超えの出費は必要になりそうだ。

安さなら阪神だが、熱烈だからこその落とし穴も

 12球団すべてで最も応援コストが安く済むのは、やはり阪神だ。これには先にも書いたように、そもそもファンの絶対数が多く、猛虎魂を持つ彼らなら必ずグッズを購入すると見込めるからだろう。筆者も甲子園手前の「チームショップアルプス」には何度か行っているが、試合前には入場のための列ができており、店内は大混雑、レジも長蛇の列だ。1アイテムごとの価格を安くしたとしても、複数の品を買ってもらえば一人当たりの売り上げは大きくなる。言うなら手ごろな価格にしておけば、ついで買いを誘いやすい。価格に敏感な関西人向け商法と言えそうだ。

 なお、熱烈ファンが多いからこその落とし穴も。ユニフォームのデザインは不変ではなく、毎年のようにホーム・ビジターでデザインを更新している。それ以外にも、阪神なら「ウル虎の夏」等のイベントユニもある。ホームとビジターユニをその都度買い替え、イベントユニにも手を出し――としていると、とんでもなく金がかかるのだ。一つひとつは安め価格でも、年間を通せば、とんでもなく阪神エンゲル指数が膨らみかねない。

 しかも今年は18年ぶりにリーグ優勝をし、クライマックスシリーズを勝ち抜けば日本シリーズが待っている。2回目の日本一に輝くようなことにでもなれば、いったい虎ファンの財布はどうなってしまうのだろうか……?

 ちなみにタイガースリーグ優勝記念グッズのうち、最も高額なのは約260万円の純金小判。非難轟轟の中で万博をやるより、阪神タイガースが日本一になるほうが、よほど関西に金を落とすことは確かだろう。

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松崎 のり子(まつざき のりこ)Noriko Matsuzaki
消費経済ジャーナリスト
20年以上にわたり『レタスクラブ』『レタスクラブお金の本』『マネープラス』などのマネー記事を取材・編集。家電は買ったことがなく(すべて誕生日にプレゼントしてもらう)、食卓はつねに白いものメイン(モヤシ、ちくわなど)。「貯めるのが好きなわけではない、使うのが嫌いなだけ」というモットーも手伝い、5年間で1000万円の貯蓄をラクラク達成。「節約愛好家 激★やす子」のペンネームで節約アイデアも研究・紹介している。著書に『お金の常識が変わる 貯まる技術』(総合法令出版)、『「3足1000円」の靴下を買う人は一生お金が貯まらない』(講談社)、『定年後でもちゃっかり増えるお金術』(講談社)。
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