や団(左からロングサイズ伊藤、本間キッド、中嶋享)

 かもめんたる・岩崎う大が、注目のお笑い芸人の今後を予想する連載企画。今回の芸人は「や団」。

ツッコミを変えたことは英断

 今回は、2年連続でキングオブコントの決勝進出を果たした「や団」を紹介したいと思います。

 昨年のキングオブコントでは最終決戦まで残り、見事3位の成績を残したトリオで、ハリウッドザコシショウさん、バイきんぐさん、錦鯉さんなど賞レース優勝者が多数いるSMA NEET Projectに所属しています。や団とは今から15年以上前、僕がかもめんたるとしてライブに出始めたころに、よく同じライブに出演する機会がありました。

 パワーがあってバカバカしいという今の「や団」のよいところは当時からあって、非常に目立っていました。粗削りという言葉のよい面も悪い面もそのまま持っているのが「や団」というイメージでしたが、なかなか突破できなかった決勝への壁を越えてきた去年のネタは、「粗削り」からの「洗練」とは違った進化を歩んできたように感じました。

 そもそも僕が見慣れていた「や団」では、ツッコミが本間キッド(写真中央)ではなく中嶋享(写真右)くんがやっていました。

 中嶋くんはラーメンには異常なまでの愛情を注いでいるくせにお笑いには無欲というクレイジーなキャラクターなのですが、ツッコミをさせるとボケの2人に対してパワー不足なところがありました。

 逆に、今もメインのボケを担当しているロングサイズ伊藤(写真左)と今はツッコミに転身した本間キッドは両者とも出力が大きいパワフルなタイプで2人のすみ分けがうまくできていない印象でした。本間キッドをツッコミに持ってきたというのは英断だと思います。

 中嶋くんを、ボケ役にすることで本人がもともと持っているキャラクターである「常人とはズレた価値観を持った男」が自然と役ににじみ出て説得力のあるボケ役ができますし、同時にパワータイプであるロングサイズ伊藤とのすみ分けもうまくいきます。

 そして何より、本間キッドがツッコミに回ることでツッコミのたびにしっかり笑いが取れるようになったことが大きいと思います。

 今、や団のネタはツッコミを中心に笑いのリズムが作られています。決勝に上がれたのもトリオ内でボケとツッコミの交代という勇気ある大改造が実を結んだ結果だったのでしょう。

 去年のキングオブコント決勝でのネタは非常によくできていますが、まだ粗削りだという印象があります。

 演じ方の面が多いですが、全力すぎるシーンが多すぎたり、やろうとしている笑いが渋滞ぎみだったり、詰めるべきところをスッ飛ばしていたり……。

 でも、それらを全部クリアしたところで、そこに何があるのか? そんなところをクリアしていったとして、それはもはや「や団」ではないと思うのです。

 全力すぎるツッコミやボケを疑うことなく続ける先にしか届かないゴールがあるかもしれない、その姿からしか放たれない光があるかもしれない。「洗練なんてクソ喰らえ!」という情熱こそが彼らの魅力なのです。

 実は、粗削りという印象とともに彼らが僕に常に感じさせてくれるイメージは「なんかバカな友達が変なことやっているから見てたらめっちゃ笑えた」という楽しいものです。

 去年決勝に上がってきた「や団」のネタに変わらずそれを感じることができて僕は大変うれしかったのです。

 全員40歳オーバーのトリオですが、コント中にあんなに元気な魅力を放っているのは自分たちのゴールに向かって夢中だからでしょう。今年そのゴールにたどり着くのかしっかりと見届けたいと思います。

岩崎う大 1978年東京都生まれ。早稲田大学卒。かもめんたるとして槙尾ユウスケとコンビを結成。キングオブコント2013年優勝。お笑い芸人だけでなく、脚本家、放送作家、漫画家として多彩に活躍中

 

21:40 先輩にいじられる

 

『キングオブコント2018』で優勝したハナコの3人

 

かまいたち・山内健司(左)、濱家隆一(右) 撮影/吉岡竜紀

 

シソンヌ・じろう(左)、長谷川忍(右) 撮影/森田晃博

 

初主演映画を撮影中の水川かたまり。一般の利用者もいる駅のホーム上で撮影していたため、大声を出すシーンに驚く人も