『泥濘の食卓』主演の齊藤京子(左)と、怪演が話題の原菜乃華

 土曜ナイトドラマ『泥濘の食卓』(テレビ朝日系)が“まるで令和の昼ドラ”として女性たちの間で話題を集めているという。

原作は、伊奈子氏によるウェブコミックで、日向坂46の齊藤京子演じる主人公の捻木深愛が不倫相手であるバイト先の店長・那須川(吉沢悠)と幸せになりたい一心で、彼の家族に寄生するというかつてない不倫ドラマです。

 サレ妻のふみこ役に戸田菜穂、その息子で深愛に恋をしてしまう高校生・ハルキを櫻井海音が好演しています。さらにハルキに恋する幼なじみの尾崎ちふゆ(原菜乃華)が絡んでカオスな人間関係が展開されていきます」(ドラマウォッチャー)

 同作が昼ドラに例えられるゆえんをライターの成田全さんが挙げる。

「かつて人気を博した昼ドラ『真珠夫人』『牡丹と薔薇』(共にフジテレビ系)の脚本家である中島丈博先生がおっしゃっていたのは“ドラマは(視聴者に)どう見てもらってもいい”けれど“世界に引き込まれて見てほしい”ということ。『泥濘〜』は自分だったら嫌だけど、他人の不幸はのぞき見したい下世話な感覚やテイストがちょうどいいんだと思います。1話30分なので気楽に見られますしね」

細部へのこだわり

 これらの作品へのオマージュも感じられるという。

『真珠夫人』で愛する夫に裏切られた妻が嫌がらせとして出した必殺“たわしコロッケ”や、『牡丹と薔薇』“財布ステーキ”など、人気昼ドラには“くそメニュー”が存在するのですが、『泥濘~』でもちふゆがハルキに贈った“髪の毛束入りチョコ”など、かつての名作を彷彿とさせました。

 さらにハルキがちふゆに言い放った“スピーカー女”という独特の言い回しも昼ドラの伝統芸といえますね」

 こまやかな演出にも見どころが多い、と成田さん。

「肌の質感ですね。主役の深愛が店長と愛し合った後など生き生きとしている場面ではツヤツヤで、店長に別れを告げられしょげているときはカサカサな質感で映している。

 店長の妻で精神を病んでいるふみこはバサバサ髪と乾燥した唇で潤いのなさを表現するなど、細かい部分にこだわっているなと思いました」

 さらに、ブレないテーマが描かれているという。

「タイトルにもありますが、各家庭の食卓です。きっちり作って盛りつけてあるけれど、1人分が明確で境界線がある捻木家、鍋などを家族みんなで一緒に食べる那須川家、高級な酒とデリバリーばかりで食事マナーも悪い尾崎家。それぞれの家族や育った環境が見えるので、見比べると面白いですよ」(成田さん)

 自分の居場所がないと精神を病む妻、同じ女性を好きになる父と息子、恋愛依存で虚言癖の女子高生……とモンスターばかりが登場する同作も残り数話。昼ドラが恋しくなったら泥濘にハマってみては。