草なぎ剛 写真提供/NHK

 12月16日・23日、2週にわたって放送されるドラマ『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士』に主演する草なぎ剛(49)。本作で本格的な手話に初めて挑戦している。

本格的な手話に初挑戦

 草なぎ演じる荒井尚人は、コーダ(Children of Deaf Adults)。聴こえない両親と兄のために、幼少期から手話通訳をしてきたため、ほぼネイティブの手話技術を持つ役柄だ。オファーを受けたとき、躊躇はなかった?

「いつもあまり深く考えずに、作品をいただいたら“やりたいな”と思うタイプなので、すんなりと。手話はかなり量があったので、練習を重ねながらどんどんイメージを膨らませて。もう先に言っちゃうけど(笑)、結果、大成功になりました!!」

 と、満面の笑み。今作に感じているのは、大きな手ごたえ。

「手話はほぼ初めてで、本当に難しかったですね。2か月くらいかな? 3人の先生がついてくれたんですが、なかなか覚えられないから、練習はすごくやりましたよ!!

 朝ドラ『ブギウギ』の撮影で大阪に向かう新幹線や帰りの新幹線でも。往復6時間、ひとりでずーっとやっていましたね」

 中でも難しかったのが、レストランでろう者を悪く言う青年たちに尚人が手話を見せつける、胸のすくシーン。

ただ、なかなかひどい内容すぎたからか手元は全カット、僕の顔のアップになっていました(笑)。思わず“おい!!”ってなりましたよね(笑)。あの手話はめっちゃ長くて速くて難しくて。練習に10時間以上費やして、僕としては完璧な手話をやったのに。

 とはいえ“監督、手元を映さないなら覚えなくてよくないですか?”とは言えないし(笑)。ただ、そうやって完璧な手話をやったからこそ、あの表情が出せたのかなとも思うので。10時間の練習の成果です。“10 hours'face”って書いておいてください!!」

 と、ちゃめっけたっぷり。完成作を見たときには、

「尚人の手話になっていると思えたので、本当に苦労したかいがありました。ね? よかったですよね、僕?」

草なぎ剛 写真提供/NHK

普段の僕の日常とそんなに変わらない

 本作には、ろう者の演者も多数起用されている。

「ひとつの大きな挑戦であり、新しい試み。ろう者の方とお芝居することは初めてでした。ろう者の俳優さんはもちろん、演技経験のないろう者の方もいて刺激的でしたね。

 もちろん、ろう者だけではないんですが、そんな空気感や熱量によって僕の中からあふれ出てきたものはあると思います。ろう者の方や先生と一緒の時間が過ごせて、仲良くもなれたし。そんな体験は本当に楽しかったなと思います」

 そんなろうコミュニティーにふれて学んだことについて聞くと、

「うーん、ないですね。なんというか、ろう者の方々と関わることはそんなに特別なものじゃなくて。

 手話はもちろん難しくて、練習しないとできなかったんですけど、でも、普段の僕の日常とそんなに変わることもなくて。なので、楽しかったというのが感想です!!」

草なぎ剛 写真提供/NHK

僕の作品はなかなか見てくれない(笑)

 コーダとしての苦しみを抱えながら成長した尚人は、いつしか手話と距離を置くように。警察に勤め、結婚もするが、共にうまくはいかず……。

 ハローワークで特技を問われ、“手話ならできます”と、声を絞り出したことをきっかけに、手話通訳士としての道に歩み出す。

 ある日、“裁判法廷でのろう者の通訳”の依頼を受ける。 ろう者が起こした過去と現在の2つの事件が次第に複雑に絡み合っていき……。

「最初に“手話を扱った作品”と聞いたときには、ヒューマンで感動的な感じなのかなと思ったんですが、ミステリーだったんですよね。逆にそれが面白いなと思ったし、いいなと思いました」

 コーダやろう者の存在や個性が事件のポイントに。通常の謎解きとはやや異なる点も新鮮だ。

「そのあたりのストーリーの面白さも楽しんでもらいたいですね。そして家族愛。ネタバレになるから言えない部分もあるんですが、いろんな家族の愛が描かれていて。

 すごく胸にくるものがあったり、最後には少しふわっと花が咲くような温かさがあったりもします」

 ということで、見どころは全部だと胸を張る。ちなみに、本作について“新しい地図”のふたり(稲垣吾郎、香取慎吾)に話した?

「まったく話してないですね、忙しかったからね。吾郎さんの主演映画『正欲』(公開中)は見ました。最高でしたよ!! 僕は見るのに、僕の作品はなかなか見てくれないからさ、吾郎さんは(笑)。

 慎吾ちゃんは僕の主演ドラマ『罠の戦争』を全部見てくれていて。『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士』は本当にいい作品だから、ふたりにもぜひ、冗談抜きで見てもらいたいです」

草なぎ剛 写真提供/NHK

『デフ・ヴォイス2』希望!

 真実を追う尚人とタッグを組むのは、警察時代の先輩・何森(遠藤憲一)。

「遠藤さんはチャーミングで現場を和ませてくれる方で、カッコいいんですよね。あのコワモテでやり合う感じが、僕が若いときにやったドラマ『TEAM』('99年)の西村まさ彦(当時は西村雅彦)さんとのやりとりを思い出して。

 すごく懐かしくて、胸がキュンとしましたね。今回、遠藤さんといいバディになれたんじゃないかな?

 だから『デフ・ヴォイス2』もやればいいんじゃないですかね? 誰か企画してくれないかなぁ(笑)」

『デフ・ヴォイス法廷の手話通訳士』前編より 写真提供/NHK
『デフ・ヴォイス法廷の手話通訳士』後編より 写真提供/NHK
『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士』12月16日、23日(土)夜10時~(NHK総合)
出演/草なぎ剛、橋本愛、松本若菜、遠藤憲一 ほか