田阪将道容疑者、妻の瑠華容疑者(YouTubeより)

「昨日、ヘリが3機ぐらい上空を飛び回っとってね。キャンプ場の人が、また木津川で流されたんかと思ってた。それが今朝、テレビを観てわかったけど、心霊スポットって迷惑な話やわ……」

 と、近隣住民は苦笑しながらそう話した。

 京都府警木津署は19日、大阪府大阪市東住吉区に住む会社員の田尻諭容疑者(32)と、同府寝屋川市に住む自営業の田阪将道容疑者(40)、その妻で無職の瑠華容疑者(30)の3人を恐喝と弁護士法違反の疑いで逮捕した。

 3人は「JUNK」という名前で心霊系YouTuberとして活動。今年8月4日と9日9日のいずれも午前1時ごろ、京都府相楽郡笠置町の廃墟で心霊スポットとなっている『笠置観光ホテル』敷地内へ、肝だめしのために立ち入った20代男女4人を脅して、1人30万円ずつ合計120万円を奪い取ったというもの。

計11グループ、34人を恐喝していた

「3人は被害者4人に対して“不法侵入です。動画を録っているので、逃げてもダメ。不法侵入は前科がつきます。そうなれば困りますよね。民事か刑事か選んでください”“示談金として1人30万円を振り込んでください”などといって脅した。これまでにこの4人を含む計11グループ、34人が同様の恐喝を受けていた」(全国紙社会部記者)

 警察の取り調べに対して、田尻容疑者は素直に容疑を認めているが、田阪夫妻は、

「田尻が勝手にやったことで、自分たちはやっていない」

 などと否認し続けいるという。

 風光明媚なJR笠置駅から徒歩20分のところに笠置トンネルがある。そこから15分ほど歩くと、廃墟ホテルがあるのだが、ホテルにつながる山道の入り口には黄色いロープ、立入禁止の看板も立っている。

容疑者たちが配信していた廃墟の動画(YouTubeより)

「私有地なので、勝手に入ってはいけない場所になっていますね。はい、いまでも笠置観光ホテルの所有者のものです」(笠置町役場)

 同ホテルは1962年に創業されるも、90年に廃業した。

「昔は温泉や山歩きの客で賑わってたね。でも、ほかのホテルや旅館もできたし、大阪からの直通電車が廃線になったからつぶれちゃったんじゃないかな。

 廃業してからは、心霊スポットとして有名になったけど、地元の人間は行かないですよ。そこへ行くのは、よそからの変わった人だけでね」(地元住民)

 そんな裏の観光スポットを悪用した恐喝グループの主犯格・田尻容疑者は、大手機械メーカー『(株)クボタ』の大阪府内の工場で働いていた。同社の広報担当に問い合わせると、

「弊社の社員がこのような事件を起こしてしまい、誠に遺憾です。捜査の進展を見守りたいと考えております。ですが、勤務年数、部署、勤務態度につきましては、個人的なことになりますので、お答えできかねます」

 かたや、田阪将道容疑者の本業は、彫り師だった。瑠華容疑者との間には、子どももいるようだ。

 実はこの3人の犯行は、決して根も葉もないわけではなかった。

廃墟ホテルの管理を任されていた

「3人はホテルの所有者と交渉して、今年7月30日以降、ホテルの管理や不法侵入に対する損害賠償請求に関する委託を受けていた。だから、金を要求したわけですが、弁護士ではないので、きちんと弁護士を通してやっていれば、逮捕にはならなかった。実際のところ、被害者4人は不法侵入を問われていますからね」(捜査関係者)

 とはいえ、11グループ34人を恐喝した疑いがある容疑者たち。彼らのYouTube動画には、カメラの手振れを補正する機器が狂うなど心霊現象を匂わせる内容も。

「YouTubeで心霊スポットとして散々煽って、侵入者をおびき寄せて金を奪っていた。罠にハメていた。悪辣かつ計画的な犯行だといえる」(同・捜査関係者)

 迷惑行為で逮捕されるYouTuberが増えているが、今回もなんとも人騒がせな心霊系YouTuberによる事件だった。