佳子さま(29)

 秋篠宮家の次女・佳子さまは、今年12月に30歳を迎える。20代最後となる2024年、これまで以上に公的な活動に励み、より充実した日々を重ねることだろう。29年の歩みを振り返りながら、広く国民に親しまれる佳子さまの「今」─。

 昨年12月29日、佳子さまは29歳の誕生日を迎えた。私は誕生日を祝う記帳をするため、東京・元赤坂にある秋篠宮邸を訪れた。地下鉄の永田町駅で電車を降り、国道246号(青山通り)に沿った歩道を渋谷方面に歩く。

 午前中、雲一つない青空が広がった。日は差したものの風は冷たく、私はコートの襟を立て足早に道を急いだ。宮邸のある赤坂御用地の巽門に到着すると、若い皇宮警察の護衛官が近づいてくる。私は名前と記帳に来た旨を告げ、入門した。

赤坂御用地の空気

20歳の誕生日に際しての記者会見で、佳子さまは家族への思いを述べた

 いつも、そう感じるのだが、赤坂御用地に一歩、足を踏み入れた瞬間、空気がガラッと変わるから不思議だ。東京のど真ん中なのにすがすがしさを覚え、本当に心が落ち着く。宮邸まで徒歩で2、3分ほどの距離を周囲の自然を楽しみながら歩いた。ほとんど葉を落としている樹木も見られた。宮邸の玄関には数人の職員が待機していた。私は、職員たちに「お誕生日、おめでとうございます」と挨拶し、玄関ホールに設けられた記帳所で墨を浸した筆を使って、和紙に名前を記した。

 佳子さまの誕生日といえば、10年近く前、忘れられない思い出がある。ある年の12月29日の午後のことだった。記帳のため秋篠宮邸を訪れると、玄関前で子どもの声が聞こえた。「なんで、ここに子どもがいるのだろう」。一瞬、私はいぶかしく思い、近づいてよく見ると声の主は小学生の悠仁さまだった。その後ろに、佳子さまと小室眞子さん、2人の姉がいた。玄関前の敷地は舗装されており、彼らは縄跳びをしたり、しばしばここで遊んでいるらしい。

2013年8月、秋篠宮邸の前で縄跳びを楽しむ佳子さま、悠仁さま、眞子さん

 この日も、どうやらみんなでローラースケートを楽しんでいたようだ。3人はローラースケート靴をはき、悠仁さまは、ツーリングの際にも使うようなヘルメットをかぶっていた。高校生となった現在の悠仁さまは物静かな印象だが、当時の彼は違った。大声でしゃべり、キャッキャッと姉たちとにぎやかに戯れていた。それは、今でも私の目に焼きついているほど、とても楽しそうな光景で悠仁さまは、どこから見ても普通の小学生の男子だった。

佳子さま、眞子さん姉たちの面倒見の良さ

2007年8月、生後11か月の悠仁さまを囲んで。2人の姉は食事の世話などをすることも

 しかし、いちばん驚いたのは2人の姉たちの面倒見の良さだった。年の離れた弟の面倒を実によく見る。そして、弟と一緒にいて姉たちも本当にうれしそうだった。私は、仲の良い3人の素顔を偶然、目の当たりにできて幸運だった。

 昨年9月、悠仁さまが通う東京都文京区の筑波大学附属高校で文化祭「桐陰祭」が開かれた。この文化祭に佳子さまがお忍びで訪れ、悠仁さまと言葉を交わしたというニュースに接し、私の脳裏にローラースケートを楽しむ3人の姿が突然、よみがえった。

 記事によると、ベビーカステラを提供する屋台の前で、友人と一緒に並んでいた悠仁さまに、笑顔の佳子さまが手を振って近づき、短い会話を交わしたという。佳子さまは首からスマートフォンをぶら下げ、たこ焼きの入ったパックを持っていた。この特ダネ写真も掲載されていた。高校生になっても弟は、このように姉と親しく、姉もわざわざ、弟の高校の文化祭に足を運ぶほど、弟をいつも気にかけ、大事に思っているのだと改めて感心した。

《弟に本読み聞かせゐたる夜は旅する母を思ひてねむる》

 これは2015年、新春の歌会始で佳子さまが詠んだ和歌である。お題は「本」だった。

 宮内庁の説明によると、姉が海外留学中で、秋篠宮ご夫妻が国内や外国を訪問して留守の間、弟の悠仁さまと佳子さまは一緒に過ごす。夜、就寝する前、弟に本を読み聞かせながら佳子さまは、仕事で遠くにいる母親、紀子さまのことを思う、という情景を詠んだという。

悠仁さまが生まれた後の姉たちの様子

昨年11月、秋篠宮さまの誕生日に公開されたご一家の近影。悠仁さまは今年、18歳で成人となる

 悠仁さまが生まれた後、'06年11月の記者会見で秋篠宮ご夫妻は、弟の世話をする姉たちの様子を紹介している。紀子さまは「夕方、学校から帰宅した娘たちが悠仁の様子を見に来て、目を見つめて『かわいい』と喜び、それぞれにできる世話をしてくれるので大変助かります」と、話した。続けて両親は、生まれてくる赤ちゃんのために佳子さまが何か作っていたことを明かされた。「何を作ってたんでしょうかね。私も作っているところは見たんだけれども」(秋篠宮さま)、

「そうですね、佳子は、これから先、一緒になって遊べるちょっとしたものを」(紀子さま)、「おもちゃでしょうか。ちょっとフェルトで作ったり、触っても大丈夫なものを、時には眞子も一緒になって作っていました」(秋篠宮さま)

 '14年12月、佳子さまは20歳の成年の誕生日を迎える前の記者会見で、記者たちから「ご家族についてお伺いします。ご両親と眞子さま、悠仁さまはそれぞれどのような性格で、佳子さまにとってはどのような存在ですか」などと尋ねられ、このように答えた。

「弟につきましては、私は幼いころから弟か妹が欲しいと思っておりましたので、弟が生まれたときは非常にうれしかったことをよく覚えております。年は離れておりますが、ケンカをしたり一緒に遊んだりしております。最近は姉が海外にいて、また、両親も仕事で家にいないことが多かったため、2人で折り紙をしたり本を読んだりして過ごす時間もございました」

 今年9月6日、悠仁さまは18歳の成年を迎える。天皇の位を継ぐ皇位継承順位が第1位の秋篠宮さまに次いで悠仁さまは皇位継承順位が第2位で、天皇陛下や秋篠宮さまの次の世代の皇室を担う役割がある。

 近い将来、悠仁さまにはこうした大きな責務を前に悩み、葛藤する日々が訪れることだろう。そんなときに、頼りになるのは生まれたときから親しみ、可愛がってもらった姉の佳子さまということになろうか。家族の中でも佳子さまの存在がより大きく重くなる、そんな2024年かもしれない。

<文/江森敬治>

えもり・けいじ 1956年生まれ。1980年、毎日新聞社に入社。社会部宮内庁担当記者、編集委員などを経て退社後、現在はジャーナリスト。著書に『秋篠宮』(小学館)、『美智子さまの気品』(主婦と生活社)など