千葉ロッテマリーンズ・佐々木朗希投手

 球春到来。“プロ野球の正月”とも例えられる春季キャンプが2月1日、一斉にスタートする。各チームが新シーズン開幕に向けた練習や調整をする中で、否応なく注目を集めるのが千葉ロッテマリーンズ・佐々木朗希投手(22、以下敬称略)。

 昨年からもつれ込んでいた契約更改をようやく済ませて、1月27日に記者会見を開いた佐々木は「将来的にメジャーリーグでプレーしたい」との意思を表示し、球団との話し合いも入団時から重ねてきていることを明かした。

 年俸は据え置きの8000万円(推定)で“1年契約”を結ぶも、ポスティングシステムを利用する「将来的」な時期は明確にされないまま。2024年シーズン終了後のオフにも、また同じ問題が再燃する可能性も捨てきれない。

「佐々木側にしてみれば、今オフにもメジャー移籍の手筈だったのでしょう」とは、パ・リーグの現場取材を重ねたベテラン・スポーツジャーナリスト。その思惑が透けたのが「プロ野球選手会」の脱退だった。

 12球団に所属する選手のほとんどが加入する選手会は、NPB(日本野球機構)に待遇の改善や地位向上などを働きかける、いわば球界の労働組合の役割を果たしている。任意加入ではあるものの、名を連ねないのは“メジャー帰り”ばかりのよう。

山本由伸も選手会を脱退していた

「選手会では毎月の積立金を支払い、退団時に利息分を含めて受け取れる“退団金共済制度”もありますが、海外でプレーすることが決定している選手ならば、制度に則るメリットはありません。(ロサンゼルス)ドジャースに移籍した山本由伸(元オリックス・バファローズ)も昨季には退会していたと聞きます。

 決定は本人の意思なのか、それとも彼のサポートを請け負う面々の助言なのか、いずれにせよ“日本で長くプレーするつもりはない”との意思の表れだったのでしょう」(同・スポーツジャーナリスト)

 会見では「まずは目の前のシーズンをプレーすることが大切」と、“ひとまず”はマリーンズの一員としてリーグ優勝、日本一を目指す佐々木だが、依然として予断を許さない状況にあるのかもしれない。

 そんな“将来のメジャーリーガー”が沖縄県・石垣島に降り立った。1月30日、南ぬ島石垣空港で待ち構えた100人のファンから拍手が沸き起こるなど、温かな歓迎ムードに包まれたマリーンズと佐々木だが、沖縄・宮崎キャンプを行き来するスポーツ紙・遊軍記者は「朗希パニック」を危惧する。

「キャンプといえば練習合間のファンサービスが見慣れた光景ですが、直筆サインが欲しいがために半ば強引に選手に迫るなど、マナー違反や迷惑行為に走るファンが増加している印象です。

 中には特定チームのファンというよりも、各球団のキャンプ地を回ってはサインをかき集める“同じ顔”も見受けられます。おそらくは“出品”目当ての連中だとは思いますが、今年は“プレミア化”必至の佐々木がターゲットになりそう

 近年、プロ野球選手の直筆サイン色紙をはじめ、サイン入りボールやグッズがフリマアプリやネットオークションをにぎわせている。キャンプシーズンになると出品件数がグッと増えるのだが、多くが現地で入手した“商品”というわけだ。

ダルビッシュのサインが数万円に

2023年2月、“転売ヤー”に苦言を呈したとされる西武ライオンズ・隅田知一郎投手(Twitterより)

 コロナ規制が緩和された2023年にも、WBC直前合宿で時間が許す限りのサイン対応に努めたメジャーリーガー・ダルビッシュ有だったが、直後には直筆サインが多数出品されては数万円の値がついたことも。

 いわゆる購入商品に高値をつけて販売する“転売”行為とは異なるのかもしれないが、ファンサービスという選手の“善意”を踏みにじる行為は、ある意味“転売ヤー”よりもタチが悪いといえよう。

「一見して純粋にサインが欲しいファンと、“転売”目的の人と見分けがつかないため、選手も疑心暗鬼になってサインをする気の毒な状況です。中には子どもを“ダシ”にして断れない状況を作ったり、変装して何回も列に並び直したり、サインを書いてもらった選手の名前を知らない連中もいたそうです。

 以前には、深夜に“サインしろ”と宿舎に押しかけては警備員と揉み合いになったり、移動時にサインを断ったことで暴言を吐かれた選手もいました。そんな自分勝手な輩が本当のファンであるはずなく、球団も対応に苦慮していると聞きます」(前出・スポーツ紙記者、以下同)

 かくいうマリーンズでも2023年のキャンプ中、

残念ながら一部の方が、周囲への迷惑となるような過剰にファンサービスを求める行動をとられている事象がありました。非常に危険な事象もあったことから、このような行為はなにとぞお控えいただきますようお願いします。》

 公式HP上で3度にわたってファンマナーへの注意喚起をしては、宿舎や公共交通機関などの練習場以外ではサイン対応しないことを強く記している。

選手会でも「転売問題」を訴えた

 またプロ野球選手会でも公式X(当時はTwitter)にて、

《サインの転売問題は以前から選手会でも問題視する声が出ていました。一部の方の心無い行動により、ファンのみなさんとの交流が縮小してしまうことは選手の本意ではありません。 転売はもちろん、フリマサイトなどでの購入もお控えいただければと思います。

 転売目的でサインを求めるファンがいることを把握しているとして、対応する選手の気持ちを代弁するとともに、流通するサインを購入しないよう呼びかけていた。

「プレーでチームを勝利に導くことが1番の努めではありますが、ファンサービスもまたプロ野球選手の仕事。特に佐々木のような人気選手であれば尚更サインを求められる機会も多く、キャンプでは距離が近い分トラブルに見舞われる可能性もあります。

 それでも選手を守るために尽力し、常に自分の練習やプレーに集中できる環境を当たり前のように整えてくれる球団、そしてスタッフに感謝するキャンプになるかもしれませんね」

 2024年はチームとファンと、輪の中心で喜びを分かち合えるシーズンになるだろうか。