日本テレビ系でドラマ化された『セクシー田中さん』(ドラマ『セクシー田中さん』公式HPより)

 『砂時計』『Piece』(ともに小学館)などの人気マンガ家の芦原妃名子さん(50)。実写化された作品もあり、現在連載中の『セクシー田中さん』(小学館)も昨年、日本テレビでドラマ化され話題になったのだが、あるトラブルが引き金になって悲劇が起きてしまった。

 芦原さんが亡くなったことが報道されると、実写化した日本テレビに厳しい批判が集中している。

裏切られた? 日本テレビ側との“事前”約束

 トラブルの流れを改めて説明しておく。同作は、芦原さんがドラマの第9、10話(最終回)の脚本を担当していたことが公表されていたが、8話までの脚本を担当した相沢友子氏がその裏にあったトラブルを昨年12月末に自身のインスタグラムで暴露。

《最後は脚本も書きたいという原作者たっての要望があり、過去に経験したことのない事態で困惑しましたが、残念ながら急きょ協力という形で携わることとなりました》

《私が脚本を書いたのは、1~8話までで、最終的に9・10話を書いたのは原作者です。誤解なきようお願いします。今回の出来事はドラマ制作の在り方、脚本家の存在意義について深く考えさせられるものでした。この苦い経験を次へ生かし、これからもがんばっていかねばと自分に言い聞かせています》

《どうか今後同じことが二度と繰り返されませんように》

 これを受け今年1月26日に、芦原さんは自身のX(旧Twitter)にて《私と小学館で改めて時系列にそって事実関係を再確認し、文章の内容も小学館と確認して》と前置きし、実情を説明した。

『セクシー田中さん』は連載途中で未完の作品であり、漫画の結末を定めていない作品であるため、ドラマ化をするにあたって、日本テレビ側と事前に約束していたことがあったという。

作品の個性を消されてしまう

《ドラマ化するなら「必ず漫画に忠実に」。漫画に忠実でない場合はしっかりと加筆修正をさせていただく。

 漫画が完結していない以上、ドラマなりの結末を設定しなければならないドラマオリジナルの終盤も、まだまだ未完の漫画のこれからに影響を及ぼさない様「原作者があらすじからセリフまで」用意する。原作者が用意したものは原則変更しないでいただきたいので、ドラマオリジナル部分については、原作者が用意したものを、そのまま脚本化していただける方を想定していただく必要や、場合によっては、原作者が脚本を執筆する可能性もある》

 しかし、毎回、原作の内容を大きく変えたプロットや脚本が提出されていたという。その結果、残り2話を芦原さんが書いた脚本を制作側が整えることに。連載漫画の締め切りも重なり限られた時間で脚本を執筆することになったため、《私の力不足が露呈する形となり反省》と視聴者やファンに謝罪する内容で締めくくられていた。

 この内容が公開されると、日本テレビ側と脚本家に批判の声が殺到し、芦原さんは投稿を削除。1月28日、《攻撃したかったわけじゃなくて。ごめんなさい》というXの投稿を最後に行方不明になり、栃木県内で遺体として発見されるという最悪の結果になってしまった。

 日本テレビの説明責任が問われているが、いまだ詳細な説明はされていない。そんな中、過去にも日本テレビが大人気マンガ家である森田まさのり氏(57)に失礼極まりないオファーをしていたことが発覚した。

キャラの名前を巨人の選手に変えて

 森田氏は1998年から2003年まで『週刊少年ジャンプ』(集英社)にて連載され累計発行部数は2100万部を突破した大人気野球漫画『ROOKIES』の原作者。

『ROOKIES』は2008年にはTBS系でテレビドラマ化され、主人公の川藤幸一を佐藤隆太が演じた。2009年に映画化もされ、同年に公開された邦画・洋画全作品中で興行収入1位を記録する大ヒット実写作品となった同作だが、その裏話をマンガ情報番組『漫道コバヤシ』(フジテレビ系)内で森田氏本人が赤裸々に語っていた。

『漫道コバヤシ』はケンドーコバヤシが大好きな漫画家をインタビューする番組で、第5回(2013年9月22日放送回)に森田氏が出演。青春ヤンキー漫画の不朽の名作『ろくでなしBLUES』(週刊少年ジャンプ、集英社)の連載25周年ということで、ケンドーコバヤシが森田氏の仕事場に行きインタビューする内容だったのだが、そのなかで『ROOKIES』(週刊少年ジャンプ、集英社)ドラマ化の裏話にも触れた。

映画化までされ大ヒットした『ROOKIES』

 幼い頃から阪神タイガースの大ファンで、特に田淵幸一の大ファンだったという森田。『ROOKIES』には阪神タイガースの選手名を引用したキャラクターも多数登場させていた。実はTBSでの実写化の前に、別の局からもオファーがあったというのだが、

「日本テレビからもオファーがありました。『ROOKIES』って(主人公の川藤以外のメインキャラが)阪神(の選手)の名前で、敵が全員巨人(の選手)の名前じゃないですか。名前をジャイアンツ(巨人)の選手に変えてくれないかという話がありまして」

 ケンドーコバヤシの「先生からしたらふざけんなって話ですよね」という返答に、森田は笑顔で頷き、

「ふざけんなということで、一回お断りした経緯がありました。その後、佐藤隆太くんが来て。手紙を頂き実写化というかたちになりました」

 このエピソードについて、スポーツ紙記者は苦笑いしながらこう話す。

「まぁ、日本テレビは読売ジャイアンツの親会社である読売グループですからね……。『ROOKIES』の登場人物の名前を変更したいという条件も日テレなら“あるある”な気もしますが、この話が本当ならば、そんな“トンデモ”オファーをすること自体が原作に対するリスペクトがない証拠ですよね」(スポーツ紙記者)

 今回の惨事を受け、テレビ局の姿勢はどのように変わっていくのだろうか。