中田翔

「やはり柱になる人がいないとね。そこに経験のある中田が加入してくれました」

 と沖縄・北谷のキャンプ地で、笑顔で取材に答えたのは中日ドラゴンズ立浪和義監督。“中田”とは、今年、読売ジャイアンツから移籍してきた中田翔のこと。言わずと知れた、日本球界屈指のスラッガーだ。

中田翔獲得の狙い

「中日はピッチャー陣は良くても、ここ何年も打線がまったくダメ。中田の加入でその部分の活性化を狙っているのでしょう」

 と、立浪監督の狙いを語るのは、元プロ野球選手で野球解説者の江本孟紀さん。立浪監督の体制になってから、2年連続で最下位となっている中日。今の中日にはホームランバッターがいない、と話す江本さんだが、中田に求めているものは、ホームランの数なのか?

彼にホームランを50本打って、ホームラン王を狙ってほしいとまでは思ってないでしょう(笑)。せいぜい20~30本くらい打ってくれればというくらいじゃないかな。彼のホームランは、打球の速さがレベル違い。中田が打線にいるだけで、相手のビッチャーに与えるプレッシャーがすごく大きいんです。

 あとは中田の打撃を活性剤にして、ほかの打者を奮起させ、打線力をアップすることがいちばんの狙いだと思います」(江本さん、以下同)

 また、中日というチームの雰囲気を変えるためではないか? と江本さんはこう続ける。

中日の選手って、みんなおとなしいんですよ。中田のような“やんちゃ”な雰囲気の選手がいない。何かそういうムードを変えたいという気持ちも立浪監督にあったのかなと、思います」

「金髪がダメなんて言ってられる状況じゃない」

 確かに立浪監督の中田への接し方は、特別な扱いにも見える。監督就任1年目には「長髪、茶髪、ヒゲは禁止」を選手に求めていたが、今年のキャンプインに中田は金髪の丸刈り頭、あごヒゲを生やしたコワモテな姿で登場ーー。初日から監督のカミナリが落ちるかと思いきや、

「似合っているからいいんじゃない?」

 と、ひと言でスルー。ファンの間からも「言ってることとやっていることが違うじゃないか」という声も上がったが、

もう、金髪がダメだの長髪がダメなんて言ってられる状況じゃないんです。最下位から脱出して上に行けるか行けないかの瀬戸際。そこで、とにかく打線の雰囲気を変えたい。そういった力を中田は持っていると思います。

 紳士で大人しく、なんてやっていたらますます弱くなりますよ(笑)。1年間、中田がケガなどすることなく出場できれば、チームの空気が変わる可能性は大きい。そうなれば、最下位脱出も十分ありえるんじゃないですか」

 江本さんは“中田効果”をこう語る。“アニキ”的な存在でこれまでも後輩達を引っ張ってきた中田。だが、それがいきすぎ、同僚への暴行問題で球団を“クビ”になった過去も……。

 “球界の紳士たれ”というモットーのジャイアンツで大人しくしてきた中田が、中日で本来の“アニキ”キャラの封印を解いた結果がどう出るのか? 最後に江本さんは、

「打てなくてもいいからバットを振り回して、スイングの風で相手を脅かす。それくらいの存在になれれば、若手の選手も変われるでしょう」

 と中田に“エール”を送る。さてさて、中日に吹き込む新しい風は、シーズン終了時にどんな結果をもたらすのかーー。