(左から)板尾創路、劇団ひとり、ロバート秋山竜次、友近

 1月スタートのNHK大河ドラマ『光る君へ』で、今とりわけ注目を集めているのがお笑い芸人でロバートの秋山竜次。大河初出演ながら平安貴族の藤原実資という重要な役どころを演じ、「あの黒さでも違和感なし!」と大きな話題に。さらにドラマには藤原斉信役ではんにゃの金田哲も登場し、

「平安貴族がハマってる!」

 とSNSをざわつかせている。振り返れば役者としてドラマや映画で活躍する芸人は昔から多く、さまざまな役を務め、存在感を放ってきた。そこで今回、30~60代の男女1000人にアンケートを実施。誰もが認める演技達者な芸人を調査した。

芸人俳優ランキング

 まず注目のロバート秋山はというと、30票を集め13位に、金田は2票で24位という結果に。テレビウォッチャーで漫画家のカトリーヌあやこさんは、

「秋山さんはすごく上手で、知的なキャラになりきっている。金田さんもイケメンで、するっと大河ドラマに収まってる」

 と、彼らの役者ぶりを高く評価。

「2人とも物語にかなり絡んでくる役どころなので、ランクアップはこれからの展開次第かも」

 と言うから、今後の行方に注目だ。

 では、晴れてトップ10入りを果たした芸人はというと?ランキングを見てみよう。第10位は劇団ひとり

劇団ひとり

 主な出演作は、『電車男』(フジテレビ系)、NHK連続テレビ小説『純情きらり』、原作に監督、脚本、出演も務めた映画『青天の霹靂』など。

「自然体な感じでうまいと思う」(静岡県・女性・38歳)

 と演技力に支持が集まり、36票を獲得した。

映画監督でもあるから俯瞰的な目線を持っていますよね。特にうまいのは、一見普通に見えるけど、実は普通じゃないような役。例えば映画『嫌われ松子の一生』で演じた愛人役は、ぱっと見はまっとうな人でありながら、どこか狂気がこぼれ落ちていた。そこが魅力」(カトリーヌさん、以下同)

 第9位はアンジャッシュの児嶋一哉。近年ドラマ出演が続き『半沢直樹』(TBS系)といった人気作に、現在は『おっさんずラブーリターンズー』(テレビ朝日系)に出演中。

アンジャッシュ・児嶋一哉

「地味だけどうまい」(福岡県・女性・38歳)

「自然で飄々としている感じ。冷たそうに見えて温かみのある役がハマってる」(埼玉県・女性・62歳)

 との声が寄せられ、37票を集めた。

何かあるとすぐうろたえてしまうような、善良なキャラが似合う人。悪目立ちしない感じがいいです。『おっさんずラブーリターンズー』で田中圭さん演じる春田にアドリブっぽくツッコまれるシーンがあるけど、うまく返せず動揺していて、“芸人なのに!”と思ってしまった(笑)」

コントをやっている芸人は演技がうまい

 第8位は東京03の角田晃広。ドラマ『半沢直樹』では気の弱い営業企画部員を、『大豆田とわ子と三人の元夫』(フジテレビ系)ではヒロインの元夫を演じるなど、キーパーソン役での出演も多い。

東京03・角田晃広

「市井の人がひょんなことから妙なことに巻き込まれていく、狼狽ぶりを演じさせたら天下一品」(大阪府・女性・58歳)

「ぎこちなさがなく、自然に演技をしている感じがする」(愛知県・男性・54歳)

 とのコメントが集まり、40票を獲得。

「角田さんは“ちょうどいい眼鏡キャラ”で、ドラマに1人は欲しいタイプ。『大豆田とわ子と三人の元夫』で演じた器の小さい元夫のような、愛すべきキャラがぴたりとハマる。彼もそうですが、コントをやってる芸人さんはたいてい芝居がうまい。

 コントってそもそも小劇場的なところがあるので、舞台俳優に近いのかもしれません。コントライブで常に演技をしているわけだから、それはもう強いですよね」

 第7位は明石家さんま。1986年放送の『男女7人夏物語』と続編の『男女7人秋物語』(共にTBS系)は最高視聴率30%を超え、社会現象を巻き起こした。アンケートでも、

「芸人なのに演技が自然。『男女7人夏物語』が好きだった」(兵庫県・男性・68歳)

「役者の経験も豊富。『男女7人夏物語/秋物語』が印象的」(神奈川県・男性・63歳)

 と、『男女7人』のインパクトは強く、42票を獲得。

明石家さんま

「さんまさんのドラマで挙がるのが『男女7人』シリーズ。あとは『古畑任三郎』の“しゃべりすぎた男”、木村拓哉さんと共演した『空から降る一億の星』(共にフジテレビ系)など。

 近年ドラマ出演は少ないけれど“さんま力”のインパクトは強く、トップ10入りもそれゆえでは」

 第6位には、130Rの板尾創路がランクイン。主演を務めた『フリンジマン~愛人の作り方教えます~』(テレビ東京系)では愛人づくりをレクチャーする教授を、『観察医 朝顔』(フジテレビ系)では法医学者を演じるなど、幅広い演技で出演作多数。

板尾創路

「悪人から善人まで、何を演じても違和感を覚えない」(大阪府・男性・67歳)

「どんな役でもリアルに演じる。特に変人っぽい役がいい」(茨城県・女性・65歳)

 など、52票を獲得。

「シリアスな役からとんでもない役まで振り幅が大きい。中でも『フリンジマン』の教授のような変態役がぴったり。お笑いでもいい意味で変態性がある印象がありました。

 一方でなかなかの二枚目なので、『観察医 朝顔』の法医学者のような役もできる。でも、奥に変態性が垣間見えるのが何とも良い(笑)」

“顔圧”の強さで存在感を発揮

 第5位は笑福亭鶴瓶。ドラマ『タイガー&ドラゴン』(TBS系)などキーパーソンから、主演を務めた『しずかちゃんとパパ』(NHK)まで出演作は多く、役者としても引っ張りだこだ。

笑福亭鶴瓶

「味がある。役になりきっていて違和感がない」(兵庫県・女性・51歳)

「普段ニコニコしているのに、怖い人も本当に怖く演じられる」(大阪府・女性・58歳)

 と、80票を集めた。

人情味あふれる役から、善人役、悪役まで幅広い。えびす顔でいつもニコニコしてるけど、実は笑ってないんじゃないの?と思わせる怖さがある。両極端で、白い鶴瓶と黒い鶴瓶がいる気がします。

 鶴瓶さんもそうですが、いい顔を持っているというのは芸人がドラマに使われる大きな理由のひとつ。顔圧が強いので、それだけで画が持ってしまうところがある

 第4位はNHK連続テレビ小説の常連で、『芋たこなんきん』『あさが来た』に続き、『ブギウギ』に看護師役で出演中の友近

友近

「どんな役でもなりきる憑依型」(兵庫県・男性・65歳)

「モノマネで特徴を捉えるのがうまく、それが演技にも生かされてる」(千葉県・男性・54歳)

 など芸人としてのスキルを支持する声が多く、82票を集めた。

「シリアスな役からアットホームな役まで何にでもなれる。『あさが来た』の女中役も良かったし、実際どんな役を演じてもうまいですよね。モノマネがうまい人って役へのなりきり方がシームレス。どんな役にでも瞬時になりきることができてしまう気がします」

 第3位は、ネプチューンの原田泰造。NHK大河『篤姫』『龍馬伝』『花燃ゆ』の3作に出演。主演作も多く、現在は『おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』(フジテレビ系)の主人公を演じている。

ネプチューン・原田泰造

「個性があるのに役ではそれを感じさせない」(千葉県・女性・48歳)

「芸人というより役者の顔つき。芸人だと知らなければ、普通に役者だと思えてしまう」(埼玉県・男性・44歳)

 と、98票の支持を集めた。

もう役者としてのイメージが強く、安定感を感じます。『おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』のアップデートできないお父さん役のように、役者さんがやるとちょっと重く感じられるような役柄も、すごく軽やかに演じられる。

 個人的にはサウナーを描いたドラマ『サ道』(テレビ東京系)が好き。泰造さんって結構いい身体をしているんですよね(笑)。彼は芸人のときもよく脱いでるイメージがあって、それで『サ道』の主演に抜擢されたのかも?」

 第2位は『その男、凶暴につき』『アウトレイジ』シリーズなど、自身の監督作に多く主演。大島渚監督の映画『戦場のメリークリスマス』で演じたハラ軍曹も話題を呼んだビートたけし

ビートたけし

「狂気に満ちた役のときの演技がすごい」(広島県・男性・45歳)

「そこに立っているだけで場を制する圧倒的な存在感」(東京都・男性・54歳)

 と、そのカリスマ性で102票を獲得。

最高峰の監督であり、またキタノ映画の最高の俳優でもある。フジテレビ系の『実録犯罪史シリーズ』では犯人役を演じていて、そうした昭和の闇を表現するのがうまい。

『戦場のメリークリスマス』で演じたハラ軍曹が“メリークリスマス、ミスター・ロレンス”と言うときの笑顔も非常に印象的でした。

 正直それほど演技が達者な方ではないけれど、存在感がある。だから1度見るとものすごく印象に残るものがありますよね」

外見でキャラを確立、ドラマに不可欠な存在

 堂々の第1位に輝いたのは、ドランクドラゴンの塚地武雅。映画『間宮兄弟』ではキネマ旬報、ブルーリボン賞、毎日映画コンクールの新人賞を総ナメに。ドラマ『裸の大将』(フジテレビ系)で画家の山下清を演じ、役者として確固たる地位を得る。

塚地武雅

「個性が強く存在感のある三枚目役をやらせたらピカイチ」(兵庫県・男性・69歳)

「『裸の大将』は芦谷雁之助のイメージがあったけど、今は山下清といえば塚地さん」(大阪府・女性・63歳)

 と、120票を集めた。

近年は芸人というより役者のイメージしかないくらい、今やドラマや映画に欠かせない存在になっていますね。言い方は悪いけど、彼は“ちょうどいいデブキャラ”。見た目ですでにキャラが立っていて、温かみを感じさせ、善良で人が良さそうだなと思わせてしまう。

 ドラマには“ちょうどいいデブキャラ”が必要で、刑事ドラマのようなチームものや歴史ものには必ず1人はいてほしい。彼が起用されているのはそういう意味での役割も大きいと思う」

 達者な演技で役になりきり、ドラマや映画で存在感を放つ芸人たち。トップ10を振り返ると、その活躍は本業以上で、もはや役者といった感がある。

コントやモノマネなどお笑いというのは何かを演じることから始まっているので、彼らの中で演技に対するハードルは低い気がします

 上り詰めるか落ちるのか、芸人は光と闇を抱えていて、その生きざまを含めて個性的ないい顔の持ち主が多い。だから画面にいるだけで存在感がありますよね。『光る君へ』の秋山さんがまさにそうですが、絶妙な違和感を持って現れ、ドラマのフックにもなる。

 芸人はそういう人材の宝庫で、今やドラマに欠かせない存在。個人的に今後注目しているのは、おいでやす小田さんで、彼は次なるメガネ枠候補。あと錦鯉の渡辺隆さんも、女性で失敗する役なんて演じさせたら面白そう(笑)」

錦鯉(写真左から長谷川雅紀、渡辺隆)

 まだまだ宝の山というドラマの芸人枠、これからも彼らの活躍から目が離せない。

芸人俳優ランキングベスト10

1位 塚地武雅 120票
2位 ビートたけし 102票
3位 原田泰造 98票
4位 友近 82票
5位 笑福亭鶴瓶 80票
6位 板尾創路 52票
7位 明石家さんま 42票
8位 角田晃広 40票
9位 児嶋一哉 37票
10位 劇団ひとり 36票

取材・文/小野寺悦子