(左から)趣里、阿部サダヲ、櫻井翔、西島秀俊

 各局で個性的な話題の作品がそろい、かなり盛り上がった冬ドラマ。すべてのドラマがクライマックスを迎え、そろそろ幕が下りる。というわけで、期待外れの“がっかり……”&面白くて最高だった“ハマった!”ドラマの選挙を開催! 全国の20~50代の女性1000人アンケートの結果、トップ10にランクインした作品は?

がっかり冬ドラマ

 まずはがっかり部門から。5位は反町隆史が大学病院の病理医に扮した医療ミステリー『グレイトギフト』(テレビ朝日系)。

反町隆史

「心温まる医療ドラマかと期待していたら全然違っていた」(鹿児島県・30歳)、「人が死んでばかりで話がなかなか進まない」(愛媛県・53歳)など、イメージと内容のギャップに戸惑った人が多かった。

 ドラマウォッチャーの漫画家・カトリーヌあやこさんは、「病院内の権力闘争を背景にしたトンチキミステリー。巻き込まれた反町さんはいつも誰かに裏切られて、あわあわしている(笑)。

 謎の病原菌によってあまりに簡単に人が死んでいくので、キャストはいつ自分の番がくるのかハラハラだったんじゃないですかね。院内権力争いの描写のうまさはさすがテレ朝って感じですが、リアリティーの薄さと反町さんの弱キャラに肩透かしを食った人が多かったんだと思います」と分析する。

 4位はオーケストラものの『さよならマエストロ〜父と私のアパッシオナート~』(TBS系)。

西島秀俊

 9話までの平均世帯視聴率は10.7%と健闘しているが、なぜか評判は芳しくない。「クラシック音楽が目当てだったのに、父娘ドラマが中心で音楽を楽しめなかった」(京都府・32歳)、「他局で放送されたドラマと似ている」(栃木県・49歳)などの不満の声が寄せられた。

「ポンコツ市民楽団を天才指揮者が立て直すという設定は『リバーサルオーケストラ』や韓ドラの『ベートーベン・ウィルス〜愛と情熱のシンフォニー〜』と一緒で、こすられすぎているのは確か。

 音楽よりも西島秀俊さんと芦田愛菜さんの父娘関係を中心とした家庭内事情に重心が置かれていたのもコメントのとおり。しかも、芦田さんのツン期間が長すぎて、見ていてイライラしちゃうんです。

『楽しい音楽の時間です』という“のだめ要素”が少なかったのが敗因だと思います」(カトリーヌさん)

 3位に入ったのは櫻井翔主演の占拠シリーズ第2弾『新空港占拠』(日本テレビ系)。「期待して見たのに前作とほとんど同じ。途中で飽きた」(福岡県・52歳)という意見が多く、もはやセルフパロディーと化していた感も……。

櫻井翔

「大施設が仮面の集団に占拠され、それに櫻井さん演じる武蔵と妻が巻き込まれ、警察内部には裏切り者がいる。

 前作の菊池風磨さん、今作の高橋メアリージュンさんと仮面のリーダーは唯一露出している唇で身バレ(笑)、と全部同じフォーマットで作られていて、そこへのツッコミ含めての作品。連ドラは難しいけど映画化ならあと1回はこすれそうかと」(カトリーヌさん)

 2位には小芝風花主演の『大奥』(フジテレビ系)が。人気シリーズの約20年ぶりの復活に加え、昨年はNHKの男女逆転『大奥』が話題となったこともあり、期待は高かったが……。

小芝風花

「NHKの『大奥』を見たあとだと面白さに欠ける」(福島県・26歳)、「イジメられて根性論でどうにかするの繰り返しで、見ていてつらい」(埼玉県・34歳)など『大奥』らしい重厚感に欠け、物足りなく感じた人が多かったよう。

「今回はヒロインが小芝さんで、敵役に森川葵さん、西野七瀬さんとキャストが若いじゃないですか。大奥というより女子高っぽいんです。閉じられた世界の中で渦巻く女の情念ではなくイマドキの女の子たちのイジメ的な軽さがあって、逆にリアルで見ていてつらくなる。

 NHKの『大奥』が素晴らしかったので、比較されちゃったのもかわいそうでした」(カトリーヌさん)

月9のファンタジー作品ががっかり1位に

 そして不名誉な1位に輝いてしまったのは、永野芽郁主演のファンタジー系ラブストーリー『君が心をくれたから』(フジテレビ系)。

永野芽郁

「ファンタジーでもダークのほうで、ヒロインに降りかかる不幸がヘビーすぎて、月曜の夜から見ていられない」(北海道・45歳)と、ヒロインが五感を奪われるという過酷な設定に多くの人たちが拒否反応を示したもよう。

次から次へと襲いかかる不幸のわんこそば感にお腹いっぱいですよね(苦笑)。脚本の宇山佳佑さんは泣ける純愛小説に定評のある作家さんだそうですが、このお話はドラマにするより小説にしたほうがよかったのでは?

 小説なら五感が失われる設定も受け止められる気がするけど、役者がそれを演じると生々しいし、ふとしたシーンに違和感を抱いちゃう。オリジナル脚本なのに、実写化が難しい原作に手を出しちゃった感があるんですよね」(カトリーヌさん)

 6位以下では10位の『離婚しない男ーサレ夫と悪嫁の騙し愛ー』(テレビ朝日系)のやりたい放題ぶりが目に余った。「篠田麻里子さんは起死回生を狙ったのかもしれないけど、こんな下品な新境地でいいのか。小池徹平さんのセリフもひどいし、笑えるというよりも見ていて痛々しくなる。トンデモドラマ好きの私もドン引きでした」(カトリーヌさん)

ハマった冬ドラマ

 続いてはハマった!部門。5位は心が読めるヒロインと年下の韓国人留学生との恋を描いた『Eye Love You』(TBS系)がランクイン。

二階堂ふみ

「留学生のチェ・ジョンヒョプさん演じるテオが可愛い。片言の日本語にキュンとする」(東京都・40歳)、「心が読めるヒロインの設定をすごくうまく使ってる。ロマンチック・ラブストーリーはこうじゃなきゃ」(神奈川県・37歳)と韓国人男性との恋愛にファンタジックな設定をうまく絡めている点が高く評価されているようだ。

二階堂ふみさんが好きになるのがチェさん演じる韓国人留学生で、韓国語で考えるから心の声は聞こえるのに意味がわからない。この人とだったら普通の恋愛ができるっていう、この設定は見事

 テオは大好きってしっぽを振る大型犬みたいなんですけど、拙い日本語で懸命に愛情表現するからあざとく感じないんですよ。韓流好きにも刺さる内容で、オリジナルでこういうドラマが作られるのは素晴らしい」(カトリーヌさん)

 4位は『正直不動産2』(NHK総合)。山下智久の連ドラ復帰作の続編だ。「不動産業界の裏側を理路整然とぶっちゃける山Pが最高」(千葉県・29歳)などの意見が。

ドラマ『正直不動産』で主演の山下智久

「山下さんがウソがつけなくなるという、これもある種のファンタジー設定ですけど、描かれるリアルな不動産問題との兼ね合いがちょうどいい。新キャラの“おディーン”(フジオカ)様もめちゃくちゃ面白かった。勉強にもなるし、安心して見られます」(カトリーヌさん)

 3位には朝ドラ『ブギウギ』(NHK総合ほか)が入った。「スズ子役の趣里さんがチャーミングで、昭和のエンタメを楽しめる」(大阪府・53歳)とヒロインを演じた趣里を絶賛する声が多数。

趣里

「やっぱり、朝ドラの音楽モノはいいですよね。その時代の空気を最もリアルに感じられる気がします。コメントにもあるように趣里さんのパフォーマンス力も素晴らしかった。ただ、『東京ブギウギ』の近辺のエピソードが意外と駆け足で通り過ぎちゃったのはもったいなかったかな。

 羽鳥さん(草なぎ剛)が提示する新しいリズムにスズ子が目覚めていく過程が一番ワクワクしたので、音楽部分をもう少し掘り下げてほしかったです」(カトリーヌさん)

振り返りモノにドラマ界の新たな鉱脈が

 2位にはあの人気作の続編『おっさんずラブ ーリターンズー』(テレビ朝日系)がランクイン。「おじさんたちの恋愛模様に笑って泣いて、見ていて飽きない」(千葉県・51歳)と、あの世界観全体を楽しんでいるファンが多いようだ。

『おっさんずラブ』のメインキャスト、左から林遣都・田中圭・吉田鋼太郎 撮影/吉岡竜紀

「BLドラマの草分けみたいに言われますけど、若手俳優のBLモノとは毛色が違う。田中圭さん、林遣都さん、吉田鋼太郎さんといった実力派俳優たちが真剣に王道ラブコメをやる面白さですよね。航空会社に舞台をかえてシーズン2を作りましたけど、今回は1作目の続編にして正解。おなじみの舞台でみなさん、自由気ままに生き生き楽しんでました」(カトリーヌさん)

 そして、冬ドラマで最も高く評価された作品は、やはり世間の話題を独占した宮藤官九郎脚本の問題作『不適切にもほどがある!』(TBS系)だった。

阿部サダヲ

「昭和と令和でこんなにも生活意識が変わっていることに驚いた。どちらの時代にも良し悪しがあることが上手に描かれていた」(神奈川県・38歳)、「コンプラ重視の風潮のなか、ギリギリを攻めた表現が新鮮で面白い」(埼玉県・33歳)など、テーマ性やコメディー要素、斬新なアイデアや役者の演技などの点で絶賛されている。

「ゲラゲラ笑っているうちに胸を揺さぶられ、いつの間にか泣いている……クドカン作品ならではの魅力にあふれていますよね。

 昔語りの昭和あるあるドラマの一方で、宮藤さんが一貫して書いてきた家族の物語でもある。しかもタイムスリップというファンタジー要素を入れ、本来会うことのないはずだった祖父と娘と現在の孫の3世代が時を超えて出会うこの構造はスゴいなと。

 そこにミュージカル要素を加えて、大事なことは歌で語るみたいな作りも含めて、とても演劇的なんですよね。宮藤官九郎の劇作家としての力をあらためて見せつけられた気がします」(カトリーヌさん)

宮藤官九郎

 冬ドラマ全体を見ると、ファンタジー要素のある作品が多かったのが一番の特徴だが、『ふてほど』や『おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』(フジテレビ系)のようなコンプライアンスをテーマにしたドラマが制作されたのも今日的だった。

「『おっパン』は原田泰造さん演じるお父さんが成長していく感じが微笑ましく、とてもいいドラマでした。春クールは朝ドラの『虎に翼』(NHK総合ほか)や日曜劇場の『アンチヒーロー』(TBS系)など法曹ドラマが多いのですが、私のおすすめは高橋海人さん主演の『95』(テレビ東京系)。

 '95年の渋谷を舞台にした物語で、これも昔語りができる振り返りモノ。阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件が起きて、世紀末を感じた年の物語で、またみんな語っちゃうのかな。振り返りモノはドラマ界の新たな鉱脈なので、いろいろな作品が作られそう。あと10年もしたらコロナ時代が描かれるでしょうね」(カトリーヌさん)

がっかり……冬ドラマTOP10

1位 『君が心をくれたから』 91票
 フジテレビ系 月曜夜9時〜 出演/永野芽郁 
2位 『大奥』 82票
 フジテレビ系 木曜夜10時〜 出演/小芝風花 
3位 『新空港占拠』 78票
 日本テレビ系 土曜夜10時〜 出演/櫻井翔 
4位 『さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート~』 67票
 TBS系 日曜夜9時〜 出演/西島秀俊 
5位 『グレイトギフト』 53票
 テレビ朝日系 木曜夜9時〜 出演/反町隆史 
6位 『となりのナースエイド』 48票
 日本テレビ系 水曜夜10時〜 出演/川栄李奈 
7位 『おっさんずラブ -リターンズ-』 44票
 テレビ朝日系 金曜夜11時15分〜 出演/田中圭 
8位 『厨房のありす』 39票
 日本テレビ系 日曜夜10時30分〜 出演/門脇麦 
9位 『リビングの松永さん』 36票
 フジテレビ系 火曜夜11時〜 出演/中島健人 
10位 『離婚しない男―サレ夫と悪嫁の騙し愛―』 33票
 テレビ朝日系 土曜夜11時30分〜 出演/伊藤淳史

ハマった!冬ドラマTOP10

1位 『不適切にもほどがある!』 105票
 TBS系 金曜夜10時〜 出演/阿部サダヲ 
2位 『おっさんずラブ -リターンズ-』 90票
 テレビ朝日系 金曜夜11時15分〜 出演/田中圭 
3位 『ブギウギ』 74票
 NHK総合ほか 月〜土曜朝8時〜 出演/趣里 
4位 『正直不動産2』 64票
 NHK総合 火曜夜10時〜 出演/山下智久 
5位 『Eye Love You』 52票
 TBS系 火曜夜10時〜 出演/二階堂ふみ 
6位 『君が心をくれたから』 49票
 フジテレビ系 月曜夜9時〜 出演/永野芽郁 
7位 『大奥』 43票
 フジテレビ系 木曜夜10時〜 出演/小芝風花 
7位 『グレイトギフト』 43票
 テレビ朝日系 木曜夜9時〜 出演/反町隆史 
9位 『新空港占拠』 40票
 日本テレビ系 土曜夜10時〜 出演/櫻井翔 
10位 『春になったら』 37票
 フジテレビ系 月曜夜10時〜 出演/奈緒 

カトリーヌあやこ 漫画家&テレビウォッチャー。著書にフィギュアスケートルポ漫画『フィギュアおばかさん』(新書館)など

取材・文/蒔田陽平