サカナクションボーカル・山口一郎(43)

 '22年5月に罹患(りかん)した帯状疱疹から、現在もその後遺症に悩まされていると告白しているサカナクションのボーカル山口一郎(43)。今年1月に、実に1年8か月ぶりとなるライブを行い、サカナクション“完全復活”を告げる全国アリーナツアーの開催を発表した。しかし、今月18日に更新したX(旧ツイッター)では「この病気は揺り戻しの繰り返し。どんぶらこ、どんぶらこ」と、“完全復活”とはいかない現状をつづっている。

 3月3日には「改めて、病気になる前の自分には戻れないと実感した一日だった。新しくならなきゃ」と自身の体調変化への思いを吐露しており、そのメッセージからは、あまり重篤化するイメージのない、帯状疱疹の後遺症の恐ろしさが感じられた。

痛みが出てからの早めの処置がカギ

帯状疱疹を告白した有名人 薬丸裕英(55)

 帯状疱疹について、皮膚科医の松尾光馬先生は『週刊女性』の取材で「ただ皮膚にボツボツ発疹ができるだけの病気ではありません。神経にダメージを与え、つらい後遺症や合併症を引き起こす怖い病気なのですが、近年罹患者が増加傾向にあります」と語っている。

 帯状疱疹は水ぼうそうと同じ“水痘・帯状疱疹ウイルス”が活性化して起こる病気。疲労やストレスによる免疫力の低下などにより、それが再び暴れ出し、神経を伝わり皮膚に発疹が生じる。神経まで炎症が広がると、痛みを伴うことも。50代以上に多い病気だが、近年、20〜30代の若い世代で罹患する人も増えている。

「さらに、コロナにかかった後、帯状疱疹になるケースが多いことがデータ上明らかになっています。詳しいメカニズムはわかっていませんが、コロナの罹患が免疫の変調を起こし、ストレスの負荷なども相まって発症の引き金となっているのでしょう」(松尾先生、以下同)

 80歳までに3人に1人はかかるといわれる帯状疱疹。

「痛みから始まることが多いので、腹痛、頭痛が出ると内科へ、手足、腰の痛みの場合は整形外科へ、あごの場合は歯科へかかってしまうことが少なくありません」

 山口も、発症当初「ここ数週間で、皮膚科行って、整形外科行って、耳鼻科行って、ペインクリニック行って……」と、数々のクリニックへ罹ったことを報告していた。

「発疹が出るまでは、帯状疱疹の診断がつきませんので非常に判断が難しく、間違った手当てをすることもあるようです。痛みの後にボツボツが出てきたら、すぐに皮膚科を受診してください」

 痛みが出てから通常は4~5日で、発疹が出てくるということを意識しておきたい。
発疹の症状には特徴があり、身体の片側だけに発疹が出る。

「検査を行い、陽性の場合は、抗ウイルス剤や痛み止めを処方します。抗ウイルス剤の効果があるのは早期の場合だけなので、早めの処置が大切です」

益若つばさ、ハイヒールモモコも重篤化

 昨年初めには、タレントの益若つばさも「激しい頭痛と目が痛いのとおでこの水ぶくれでしばらくダウン」と重度の帯状疱疹で療養していたことを公表。

 松尾先生によると、ウイルスが目まで広がると角膜炎、結膜炎、ぶどう膜炎といった病気を合併し、視力低下や失明に至ることもあるという。さらに、軽い髄膜炎を起こすこともよくあり、頭痛などの症状も。

「発症の場所によっては、本当に怖い合併症を起こす可能性があります。顔に帯状疱疹が出ると、顔面神経まひ、難聴、めまい、耳鳴りといった合併症を伴うことがあります。困ったことに、3分の1は発疹より先にまひが出ることもあり、正しい診断がつかないことで症状が長引いてしまうこともあるのです」

 合併症の他に、山口同様、後遺症の苦痛にも悩まされる人も多い。

「帯状疱疹後神経痛(PHN)です。ハイヒール・モモコさんも現在もその症状に悩まされているそうですが、帯状疱疹後、3か月痛みが続く人が15~20%、6か月は5%、1年以上続く人が1%います。焼けつくような痛み、電気が走るような痛み、皮膚に触れると痛むといった3つの痛みが特徴です」

 治療法は、いわゆる消炎鎮痛薬の内服は効果がなく、抗てんかん薬、抗うつ薬といった鎮痛補助薬やオピオイドなどの内服が主体となるようだ。長いと10年以上も続く痛みと付き合わなければならず、とにかく帯状疱疹にかからないことが重要になる。

 帯状疱疹を防ぐためには栄養バランスがとれた食事、適度な運動、良質な睡眠、ストレスを避けるなど、一般的に免疫力を下げない生活を送ることが重要だが、「効果的な対策はワクチン」と松尾先生。合併症や後遺症に苦しまないよう何よりも予防が大切だ。

松尾光馬先生●まつお こおま。中野皮膚科クリニック院長、皮膚科医、医学博士。東京慈恵会医科大学卒業後、同大学講師を経てクリニックを開設。日本皮膚科学会皮膚科専門医、日本性感染症学会認定医。日本で数少ない帯状疱疹の専門家。