0909_赤木春恵
「卒寿のパーティーのときは、これから先の短い人生をどう生きるべきか……と、少し考えてしまいましたけど、今はそんな思いがまったくないです。70歳くらいの心持ちというか、年齢を意識せずに生きています」

 ゆったりとした穏やかな口調で語るのは女優・赤木春恵。昨年は映画『ペコロスの母に会いに行く』で世界最高齢での映画初主演を果たしてギネス世界記録に認定、毎日映画コンクールの女優主演賞を獲得した。今年3月に90歳を迎えた大ベテランは日々、どんな過ごし方をしているのか。

「たいそうなことは何もしていないんですよ。毎日するのは本当に当たり前のこと。自分と16歳の犬の朝ごはんを用意するくらいです。自分のものは、おしょうゆを入れたスクランブルエッグをごはんにのせて、ちりめんじゃこをかけるだけ。私とおんなじくらいの年齢の犬ですから、ドッグフードをふやかして用意してあげるだけです。あとはお洗濯物をたたんだり、自分のものを片づけるくらい。片づけ魔なので、人のものに手を出すと、捨ててはいけないものを捨てて、怒られますから(笑い)」

 現在は娘夫婦と孫との5人、犬2頭と暮らす。すべてを家族に任せきりにするのではなく、「やりたい家事は自分でこなす」という。赤木自身、7年前に乳がんが発覚し、左乳房の全摘手術を受けている。現在も病院で定期的に検査を受け、身体のメンテナンスを怠らないようにしていることにもわけがある。

「家族に迷惑がかからないよう、念のためね。病気をしたことで信頼できる仲のよいお医者さまもできましたし、お食事に関しても的確なアドバイスを受けています。90歳にもなると思いどおりにいかないこともありますけど、おかげさまで元気でいることができているんですよ」

 足をケガしてしまったこともあり、昔に比べたらできることに制限があるものの、それを悲観しないのが赤木流。

「神経質になったり、考えすぎたりしない性分なんです。ストレスと戦って、それを乗り越えるなんてことは考えていませんね。早く解決してしまいたいので、自分の中で都合のいいように理由をつけちゃうの。翌日には引きずりません。あまり執着心がないんです」