厳格、重厚、気難しい……。ドラマや映画で威圧感たっぷりの老人といったら、この人の右に出る者なし! とはいえ、本当に怖い人なの? ドキドキしながら話を聞きに行くと……。

■67歳で食えるようになりました

 北野武監督最新作『龍三と七人の子分たち』では、手元をプルプル震わせながら、愛する拳銃をぶっ放しまくり! 革ジャン&革パン&サングラスのいでたちで、詐欺集団のガキどもの邪魔をしまくり。ジジイのパワーを炸裂させている。

「今回の“ジジイガキ”みたいな役は楽しかったね。僕は重厚な役ばかりで、最近は杖をついたり、車イスやベッドで寝てる老人の役が多いから(笑い)。こういう役は初めてですね。見たら“えっ!?”って驚くかもしれないね(笑い)」

 穏やかな笑顔、優しい口調で迎えてくれた。品川といえば、その存在と名を知らしめたのは『白い巨塔』(’03年・主演は唐沢寿明)の大河内教授役。

「67歳だったかな? 食えないで芝居をやってた僕の転機になった作品です。本当にね、フジテレビの方々や、推薦してくれたディレクターさんにはね、本当に感謝してるんです」

 俳優業を見限り、別の職業に就こうと思ったことはなかったのだろうか。

「ないですね。“私を見つけてくれる人がいるはずだ”“自分には才能がある”という思いが妄想のようにいつも頭の中にありましたね(笑い)。“その日のために生きてた”みたいなね。それが僕を支えてくれた」

 と感慨深げ。プライベートがまったく見えないけれど、ご家族は?

「いないんですよ。娘はいるんですが、その母親は57歳で亡くなってね。それから20歳以上も年の離れた人と結婚したこともあったけど、僕はワガママでね。逃げられちゃったの(笑い)」

 趣味は映画と読書。時間があれば、ジム通いは欠かさない。

「いつも何かに追い立てられてね。足腰弱ると、役者ができなくなるからね。とはいえ、大杉漣さん(※)みたいに家を建てたりはできないけど、まあ細々とですよ。でも、何かひとつ賞が欲しいなぁ。無理だろうけど(笑い)。元気でね、やれてるだけでありがたいなと思ってますよ」

(※)劇団『転形劇場』でともに活動。

撮影/廣瀬靖士
撮影/廣瀬靖士