
《日本の算数の教科書良すぎる。5年の教科書らしいけど、プリントして全学年読むべし》というコメントとともに、米大リーグ・ドジャースで活躍する大谷翔平が、小学5年生の算数の教科書に「私と算数」というテーマで出ているページがSNS上で投稿された。
話題を集めているのは、2024年春から使われている東京書籍発行の教科書。
狙いは“ギャップ”に
大谷は教科書の誌面で、《野球選手になった今でも、算数はよく使っています。例えば、打つときの構え方は複雑ですが、それを単じゅんな三角形におきかえて、体重のかけ方や足の開き具合などを考えています。(中略)野球と同じように、算数もはじめからできたりわかったりすることはないと思いますが、1つひとつ深く考え、積み重ねることを大切にしてほしいと思います》と語っている。
大谷を算数の教科書に起用した経緯について、東京書籍の広報担当者に話を聞いた。
「算数というと公式を覚えていないとできないなど、学習内容に目がいきがちですが、『新しい算数』では、学習を通して物事を考える過程や着想そのものに光を当てたかったという思いがございます。日常生活では、算数を意識することなく、算数の学習内容そのものや算数の学習を通して育った考え方を実は使っている、そういう点に気づくきっかけとなるページを設定したいと考えていました。
そして、これらのことを、多くの子どもたちが活躍を知っている方のうち、算数・数学との親和性が高い方はもとより、一見、算数とは無縁な感じがある、算数とは遠いと思われる方が語ってくださるギャップが強いインパクトとなってくれたら、という思いもありました」
「想定を遥かに超えて」出版社も感動
算数のイメージがない有名人のほうが印象に残ると考えたという。
「普段は算数教育を研究されている先生方に参加していただく編集委員会で企画の提案、趣旨の説明を行った結果、宇宙飛行士の野口聡一先生のような算数・数学との親和性が高い方々と併せて、大谷翔平選手などの名前が挙がり、企画趣旨を説明したところ“子どもたちのためになるのであれば”ということで、インタビューをご快諾いただきました」(東京書籍広報担当者、以下同)
2023年11月に日本国内の約2万の全小学校にジュニア用グラブ約6万個を寄付した大谷らしく「子どもたちのため」という理由だった。

「なお、大谷選手の過去のインタビューなどを拝見し、筋道を立てて積み上げていく、ゴールから逆算して落とし込んでいくスタイルは、算数・数学の考え方と似ているところがあると考えておりました。インタビューをさせていただいた際には、そのような考えに落とし込んでお話していただけるのではないかと推察、あるいは期待をしており、インタビューでは、単純化して考える、記録に残して視覚化することにより省察の精度を上げていく、などといった、算数の学習で育みたい汎用的な力について、こちらの想定をはるかに超えて具体的にわかりやすくお話しくださり、たいへん感動いたしました」
と、出版社も予想を上回る大絶賛のインタビュー内容だった。
「なお、4年の教科書では、卓球選手の伊藤美誠選手、6年の教科書では、野口聡一さんにインタビューを依頼し、お二方ともご快諾していただきました」
小学5年生以外の算数の教科書にも、有名人が掲載されているとのことだった。
算数は「一番嫌いな教科」
《大谷翔平さん(野球選手)小学5年生の算数の教科書の冒頭に…! 帰宅するなり真っ先に子供が報告してくれました》
《算数でも役に立つ良いコメントが出来る大谷翔平素晴らしい》
《大谷翔平の算数語り、めっちゃ貴重なインタビュー記事なのでは…》
と、SNS上では保護者などからも喜びの声が。

保護者や生徒、教師からの反響はあったのだろうか。
「児童や保護者から直接的な連絡などがあったわけではございませんが、好意的な受け止めがあったと認識しております。また、先生からは『なぜ算数を学ぶのか?』ということを児童に伝えるのに参考になったというご意見は伺ったことがございます」
学研教育総合研究所の2023年10月の調査によると、小学生の嫌いな教科は、 1位「算数」(22.8%)、2位「国語」(18.4%)、3位「体育」(8.1%)という結果に。算数について男子は14.3%、女子は31.3%と、女子は男子の2倍以上、算数が一番嫌いな教科と答えていることがわかった。
子どもがもっとも苦手意識を持つ算数だが、大谷効果で子どもたちの意識が変わるかもしれない!?