
'98年に加藤歩と結成したお笑いコンビ『ザブングル』を'21年3月に解散して、芸能界を引退した松尾陽介。
「そもそも自分の中では“解散”のほうが強くて、別に“引退”という気持ちはなかったんです。芸人を辞めるつもりもなかったですし、実は“芸能界を引退します”と、自分から言ったこともないんです。ただ、ピンネタをやるつもりもなかったので、実質的にはそれが“芸人を辞める”ということなのかもしれないとは思っていました」
生活の8割は沖縄
コンビ解散に向けて内々で話を進めていたころ、『アメトーーク!』(テレビ朝日系)から、『運動神経悪い芸人』の常連メンバーである松尾の“引退企画”をやりたいというオファーが舞い込んだ。
「あんな超人気番組で引退企画をやってもらえるなんて“ぜひお願します!”とは思ったんですが“引退企画が来たからには引退しなくちゃいけないのかな?”と(笑)。でも、めちゃくちゃ“おいしい”。結果的にその企画は、引退して『運動神経悪い芸人』から逃れられると思ったら大間違いだぞ、という内容で(笑)」
結局、現在も毎年末に『アメトーーク!』への出演を続けている。
「引退企画をやらされたから、なんとなく“引退した”ことになっているだけなんですよね。実は、今でも芸能活動のオファーがあれば基本的にすべて受けているんですよ」
そんな松尾は現在、沖縄に生活の拠点を移している。
「芸人を辞めたとき、沖縄にいる知り合いの社長が、ことあるごとに仕事で呼んでくれていました。その頻度が上がったので事務所をつくることになり、場所を借りるだけではもったいないからと、同じ場所でバーをオープンしました」
バーの営業は順調で、生活の8割は沖縄で過ごすようになったため、
「東京の部屋に15万円の家賃を払うのがバカらしくなって、'24年に完全に移住しました。あと、沖縄で彼女もできたので(笑)」
大先輩の言葉
バーでは松尾自身がカウンターに立って接客をしており、
「『南海キャンディーズ』の山ちゃん(山里亮太)とか、『さらば青春の光』の東ブクロとか、芸人時代に飲んだことがない人も来てくれています。今になって、昔より芸人の交友関係が広がっている気がします」
バー以外の活動はというと、
「基本的に、ご依頼いただいた仕事は“NGなし”で受けるようにしています。例えば、沖縄の情報番組に出演したり、イベントのキャスティングなどもしています。“配役をご希望される方が出演NGだったら、僕が出ますよ”って(笑)」
芸人のセカンドキャリア支援にも取り組んでおり、
「プログラミングの勉強や起業のサポートなどを行っています。ただ、まだ頼ってくれる芸人が少ないので、まずは実績を残したいですね」

では、芸人への未練は?
「もしも芸人になっていなかったら、絶対に人生つまらなかっただろうなと思います。でも、もう十分楽しんだので、未練はまったくないです」
ただ、その後の人生への不安はあったという。
「辞める前に、『ネプチューン』の堀内健さんに“辞めたらみんな離れていくから気をつけて”と言われたんです。もしかしたら、過去にそういう人たちを見てきたのかもしれません。それを聞いて、ちょっと怖いなと思ってしまって。でも、僕の場合は辞めてからこれまで関わった人たちがどんどん寄ってきてくれました。うれしい誤算でしたね」
その結果、充実した日々を送っているそうで、
「この前、今田耕司さんが沖縄に来てくれたときに“おまえ、幸せそうだな”と言われて。そのときに改めて“人からそう見えるということは、僕は幸せなんだな”と実感しました。この先も、ただただ死ぬまで楽しく生きていきたいですね。“芸人辞めてよかった!”と言える人生にするために辞めたので!」
元相方の加藤は、現在の松尾を見て“悔しいです!”と思っているかも?