
嵐が解散する。
そのように報じたスポーツ紙に「解散って言ってないですよね。活動休止ですよね」という抗議の問い合わせが複数、届いたという。衝撃を緩衝させようというファンの思いが手に取るように分かる。
「嵐がついに“嵐の呪縛”から解放される日が来春、やってくるということです。2020年1月31日に活動を休止してから約4年半。5人のメンバーはやっと、自分たちを解放する通過儀礼として、解散コンサートツアーを開催することを発表したわけです」
スポーツ紙記者は、彼らの発表をそう読み解く。
潔く「解散」と言うべきだった
旧ジャニーズ事務所には数多くのアイドルグループが誕生してはなくなったが、嵐ほど幸せなグループはない。
「メンバー全員が個人としても一流として売れている。あのSMAPも同じでしたが、最後はメンバー間の不信感で瓦解した。解散ツアーもなかった。嵐は来年春に解散ツアーを開催し、ファンにも礼儀を尽くす。嵐人気がさらに上昇する、活動休止発表でしたね」
と前出・スポーツ紙記者は見た。同時に、
「ただ、潔く、きちんと本人たちの口から『解散します』と言うべきだったんじゃないかな。5人による動画を読み解けば、どう見ても解散なのですが、それを嫌がるファンは一定程度いて、SNS等で『解散じゃないんですよね』と、ショックを和らげようとしている。それがいいことなのか、どうか……」
タッキー&翼は18年に、V6は2021年に、KAT-TUNは25年3月に解散した。きちんと解散と言う言葉を使って。一方、少年隊のように、メンバーの東山紀之氏が芸能界を引退したためオリジナルメンバーでは解散状態にもかかわらず、解散を口にしないグループもいる。そのためメンバーは今も、少年隊という檻の中いる。いいことなのか、どうかは本人たちではないと分からない。
ベテランエンタメライターは、次のように伝えてきた。
「解散を口にしないことでファンの夢を壊さないという一面もあるかと思いますが、逆にファンへの裏切りという面もある。今後、活動しない意思がメンバー間で固まっているのですから、100%解散です。また活動したくなったら再結成すればいいだけのこと」
と突き放し、今井絵理子参議院議員がかつて所属した女性アイドルグループ、SPEEDの解散の際の動きを掘り起こす。
「あのとき、メンバーの一人が解散を口したことで、解散に向かって動き出した。嵐の場合は、その役はリーダーの大野智かと。SPEEDは話し合いを続けるうちに、4人それぞれに違った方向性が見えてきた。当時の所属プロダクションの社長は、活動休止にして様子を見るというやり方よりも、本人たちにその気がないのに活動休止にすることはファンへの裏切りになる、と考え、売れているピークにもかかわらず、潔く『解散』を選択したわけです」
ラストライブで「解散」を明言か

活動期間は約4年。2000年に解散し、さっぱりとSPEEDという母体から旅立ったメンバーは、9年後に再結成することに。ファンは温かく迎えた。
本人たちが「解散」を口にしないことを決めた嵐。芸能史に数々の金字塔を打ち当て、テレビもツアーでも最高峰のものを出し切った。
「すでにグループとしては燃え尽きていると思う、やり切った感で。大野智は燃え尽き症候群そのものですよね。にもかかわらず、最後の最後に解散ライブをやる。そのことから分かることは、メンバー間には、どこかで区切りを付けないと、ファンにもスタッフにも申し訳ないという思いが強かったということ。いい人たちですよ。
ビッグマネーがうごめくショービジネスの世界で、シンプルにファンのことを考えらえるピュアさを持ち続けた、稀なアイドルグループ。ラストライブではぜひ5人で『解散する』と言い、自分たち自身を嵐から解放してほしいですね」(先出・スポーツ紙記者)
日本のショービジネスを、自分たちのやり方でけん引した嵐。
官房長官は毎日新聞記者の質問を受け「国民的なアイドルグループ」という最大級の認識を示し「政府のさまざまな活動においてご橋梁いただき、この場を借りて感謝を申し上げたいと思います」と伝えた。政府が所感を述べること自体、アイドルグループにとっては勲章だ。
フランスの詩人は「選ばれてあることの恍惚と不安ふたつ我にあり」とつづった。嵐のメンバーであることの恍惚と不安。長年、最高のものを作り出さないというプレッシャーに打ち勝ってきた。
プレッシャーからの解放の日を見守りたい。