
5月14日(現地時間13日)に「負傷者リスト(IL)」入りした、ロサンゼルス・ドジャースの佐々木朗希投手(23、以下敬称略)。「インピンジメント症候群」によって、投手の生命線である右肩を痛めていたことがわかった。
なんでも数週間前から違和感に悩まされていたという佐々木。160kmを連発していた球速は鳴りを顰め、NPB時代に見せていた打者を圧倒する投球ができなかったのは、この右肩痛の影響もありそうだ。
しかし問題は、《我々は前回のアリゾナでの先発後に気づいた》(『Full-Count』5月14日配信記事より)との、ドジャース指揮官のデーブ・ロバーツ監督(52)の言葉。
5月10日のダイヤモンドバックス戦に登板した佐々木は、5回途中5失点でKOされてマウンドを降りている。この試合後、ロバーツ監督やチーム関係者は故障を知らされたようで、佐々木はそれまで首脳陣に報告せずに“隠していた”ことになる。
「チーム状況もあって、投げ続けたい気持ちがあった。ただ、パフォーマンス的に逆に迷惑がかかる」
IL入り発表後、佐々木は“右肩痛を隠していた”ことについて、負傷者が続出している投手陣の状況を顧みて、彼なりに責任感を感じていたのだろう。右肩に違和感を覚えながらも投げ続けていたことを明かした。
ロッテ時代にも右腕の違和感
しかし、もう一つ問題視されたのが「“その名残”に近いものがある」との告白。先のロバーツ監督も《去年と似ているもののようだ》と語ったように、2024年にも、つまり千葉ロッテマリーンズ時代から右肩痛の自覚症状があったということ。
先発で18試合に出場してキャリアハイの10勝をあげた2024年シーズン、主に中6日で登板していた佐々木だが、6月から8月にかけて「右上肢のコンディション不良」、つまり肩を含めた右腕の違和感で2か月間戦列を離れている。
この時は「インピンジメント症候群」との明確な疾患は公表されず、“コンディション不良”との曖昧な表現がなされるも、8月1日の復帰以降はローテーションを最後まで守り続けた。

そして2024年シーズン終了から1か月後、前年よりロッテに掛け合っていた、ポスティングシステムを利用してのメジャー挑戦が容認された佐々木。そして翌年1月に念願叶って、契約金650万ドル(約10億1600万円)でドジャースと契約合意に至ったがーー、
《MLBだと痛みやケガを隠すのって 契約違反の可能性あるんじゃない?》
《佐々木朗希選手も違和感あったのに契約や交渉する時に言わなかったのはまずいわ、とは思った。アメリカは契約社会だもん》
SNS上で危惧されたのが、万一にも「右肩痛」を自覚しながらも伝えることなく、ドジャースに入団したのならば“契約違反に当たるのではないか”との声。
前田健太は減俸、岩隈久志は移籍自体が白紙
2016年、前田健太投手(37)が広島東洋カープからポスティングでドジャースに移籍した。が、契約直前のメディカルチェックで「右肘に懸念材料がある」と指摘され、年俸を8年総額2500万ドル(約28億円)と大幅に抑えられた経緯がある。
前田の一件を例にすると、佐々木もまた契約時に「右肩痛」が発覚していれば、金銭面を含め、なんらかの契約事項に引っ掛かるのではないか、そう心配されているわけだ。MLB事情に精通するスポーツライターに話を聞くと、
「選手契約で莫大なマネーが動くメジャーでは、ドジャースだけでなく、全球団が入団時のメディカルチェックを課しています。特に投手の場合、特に“消耗品”である肩、そしてメスが入りやすい肘の検査は細部まで行われ、結果次第では契約条件が見直されることも」
2015年末にも、一時はドジャースと3年55億円の大型契約で移籍合意に達しながらも、メディカルチェックによって「健康上の問題」を理由に白紙。破談後に古巣のシアトル・マリナーズと“出戻り”契約を交わした岩隈久志氏(44)の例もある。

「当然ながら、佐々木投手もチェックを受けたはず。実は米メディアでも昨年の夏頃、佐々木投手を“将来有望な選手”ランキングの上位に数えながらも、日本での登板数、イニングの少なさから“メディカルチェックが重要”との条件も折り込まれていました。
ドジャースも懸念材料は承知の上で、それでも23歳と若い、まだまだ伸びしろがある才能に惚れ込んでの契約だったのでしょう。今回、検査結果では骨や筋肉に異常は見られなかったとのことですが、長期的な治療、調整プログラムが組まれると思います。復帰はオールスター前後になるかもしれません」(前出・スポーツライター)
ドジャースは右肩痛を把握していたのか
16日に日本メディアの取材に応じた、ドジャースのアンドルー・フリードマン編成本部長は、佐々木は「サイ・ヤング賞投手になれる才能がある」と称した上で、右肩痛を抱えての契約に至ったことについても、
「大きな問題ではない。本当に大きな問題というのは、回復に1年から1年半を要する大手術が必要なケースのこと。今回は炎症を抑えて、身体をしっかり強化させることが重要です。そうすれば、正常に投球できる状態に持っていけるもので、重大な問題とは捉えていません」
ドジャースにとって佐々木の故障、そして契約についても“Big problem”ではないことを強調。当然、“契約違反”とみなされることはなさそうだ。
メジャー移籍の夢を半ば押し切って実現させたことに、“わがまま”“自己中”などと批判もされた佐々木だけに、今回の故障で「見たことか」との心無い声も聞こえてくる。復帰後にはNPB同様、MLB打者を圧倒するパフォーマンスで、23歳での移籍が正しかったことを証明してほしいが。