
「15歳から92歳をひとりで演じてほしいということで、“舞台ではなくて映画で!?ちょっとどうなんでしょう?”と最初は戸惑いました」
と話すのは、大地真央(69)。5月23日公開の『ゴッドマザー コシノアヤコの生涯』で“コシノ三姉妹”の母・小篠綾子を演じている。意外すぎることに、映画主演は初。
初舞台から50年超、意外すぎる映画初主演
「映像作品での主演は『最高のオバハン 中島ハルコ』シリーズ('21年〜)などありますけど、大スクリーンでの映画は初めて。舞台ではガブリエル・シャネルやマリー・アントワネットを10代から晩年まで演じていますが、映像だと寄りも引きの画もある。ずっと引きの舞台とは大きく違うところですね」
しかし、小篠綾子さんに関する本や資料を読んでいくと、
「非常に面白くて魅力的で。ぜひやらせていただきたいと思いました。それに時代や環境、状況の変化によって起きる心の揺れや成長……。ひとりの人物を演じ生きるという意味では、舞台も映像も同じだと思います」
ミシン1台で三人の娘を世界的デザイナーに育て、74歳で自らのブランドをローンチした小篠綾子。その魅力に挙げたのは、すべてをハッピーにしてしまうバイタリティーと明るさ。
「“向こう岸、見ているだけでは渡れない”“何かを始めるのに、遅すぎることなんてあるかいな”と、最後まで前向きに生き抜かれた方。怖いもの知らずで、でもちょっと乙女チックな部分もあって。
ほったらかしの教育法も“私は何もしてません”と言いながら、やっぱりすごく奥深い愛情が感じられる。きっとみなさんもいろんなメッセージやパワーを受け取っていただけると思います」
初舞台から50周年を迎えて
物語は、綾子の死の間際から始まる。現れた天使が、天国と地獄のどちらに行くかを審判するため、その奔放な人生を振り返る。昨年、初舞台から50周年を迎えた大地に“この瞬間をはずしては語れない”という人生のターニングポイントを聞くと、
「それは宝塚に入学したこともそうですし、トップになったとき、退団したとき、(『風と共に去りぬ』の)スカーレット・オハラや(『マイ・フェア・レディ』の)イライザをやれたとき……どの作品もわが子のようで。
今まで3900回以上主役をやらせていただいていますが、その時々の思い出があるので“これ”とは選べないですね」

さらにこう続けた。
「父の死や母の死は、自分にまた考える機会が与えられたと感じましたし。舞台『クレオパトラ』('97)では声が出なくなって休演というか、休館になってしまったこともありましたし。やっぱり一つひとつが、いいことも悪いことも、私に与えられたターニングポイントなんだと思います」
角刈り、和尚……あのCMへの取り組み
'18年から出演している『アイフル』のCM。大地が演じる“クセ強女将”は角刈りの料理人、和尚……など、斬新すぎる姿を披露し続け、『CM好感度ランキング』の上位常連だ。
「そうなんですよ。大切に真剣に取り組んできて、本当によかった(笑)。今後はさらに? 特殊メイクで大変だったりするので、あんまりハードルを上げないでくださいね(笑)」
近年はインスタでの目玉焼きアートも話題に。大地の高貴なイメージに、愉快さ&親しみやすさが加わった。
「奇をてらうことが目的ではなくて、自分が“これは面白いんじゃないか”とフィットしたものは徹底してやる。その思いはCMに限らず、どんな作品に対しても変わらないですけどね」
作品が途切れることのない忙しい日々。癒しや支えになっているものは?
「ウチの3匹の猫ですね。シャルトリューとメインクーンで名前はスフレ、ブリュレ、シュシュテ。あと、夫も(笑)。これはちゃんと言っておかないと(笑)。でも夫自身も“自分は4番目”って言っているんですよ(笑)」
美しさの秘密、教えて!
2月に69歳を迎えている。まぶしい美しさの秘密を、ぜひ知りたい!
「私、わりとぐうたらで(笑)。ただ、口に入れるものは結構、意識しています。自宅にある食品はほとんど無添加。でも外食のときまでは気にしてないです。
夫はジャンクなものが好きなので、パッケージの裏を見て“これなら許せる”というものは付き合います(笑)。歯磨き粉もオーガニック。
やはり、口に入れるものなので大事だと思います。あとは朝起きたら入念にうがいをして、フルーツをたっぷり食べる。これはずっと続けています」
『ゴッドマザー コシノアヤコの生涯』
出演/大地真央、黒谷友香、鈴木砂羽、水上京香 ほか
5月23日(金)より新宿ピカデリーほか全国公開
取材・文/池谷百合子