
そろそろ、本格的な梅雨入り。曇りや雨の日が増え、気温も湿度も高くなると、食欲がなくなったり、気分が落ち込んだりと、心身共に不調を感じやすくなる。
高い湿度が胃腸の働きを弱める
「中医学では、梅雨や夏の湿度が高い時季に、体内に余分な水分がたまり、さまざまな不調が起きてしまう状態を“湿邪”といいます。水分が多くなると“脾”と呼ばれる胃腸などの消化器系に負荷がかかり、全身のだるさや消化不良が起こると考えられているので、普段の食事から胃や腸を労わることが、梅雨だるの解消や予防につながります」
と教えてくれたのは、発酵食と薬膳で心と身体を整える料理教室を主宰する発酵食養生料理家のこいけかおる先生。
「胃腸などの脾は乾燥を好み、湿気をとにかく嫌います。梅雨や夏に食欲不振や消化不良が続き、空気が乾燥する秋になると食欲が増してくるのは、胃腸の調子が関係しているからなのです」(こいけ先生、以下同)
また、腸内環境が悪いと、幸せホルモンのセロトニンが生成されにくくなるため、胃腸が弱る梅雨時季はメンタルにも影響が出やすいのだそう。
「心身共に元気な状態でいるためにも、身体から余計な水分を出してくれる食材をとることが大切です」
日頃の食事に水分を排出してくれる薬膳を取り入れると、胃腸が回復していくと、こいけ先生。ただ、薬膳と聞くとちょっぴりハードルが高い気がするけど……。
「専門店に行って特別な材料を買う必要はありません。そもそも薬膳とは、中医学をベースとした身体を整える食事法のことで、季節や体調に合った食材をとろうという考え方。例えば、梅雨にはむくみやだるさを解消してくれる、黄色い食べ物をとるといいといわれていて、かぼちゃや玉ねぎ、太陽の光をいっぱい浴びている乾物をとることが不調改善に役立ちます」
ゆらぎ世代にイチオシ手作り茶
女性ホルモンの変動を受けやすい“ゆらぎ世代”には、身体をぽかぽか温めながら、不必要な水分を外に出してくれる「薬膳茶」がぴったりだそう。
「おすすめなのは、黒豆やごぼうなど、強い利尿作用がある薬膳茶を飲むこと。市販品もありますが、手作りならではの香ばしい風味は別格。無農薬で国産の素材を選べば、添加物の心配もありません。朝に飲めば、胃腸をやさしく温めて活性化させてくれるだけでなく、全身の代謝も促し1日の巡りを整えてくれます。
ゆらぎ世代はホルモン減少で便秘にもなりやすいのですが、黒豆茶やごぼう茶は食物繊維が豊富で、便秘対策にもよいです。黒豆茶の大豆イソフラボンは女性ホルモンもサポートしてくれる役割もあります」

作り方は、フライパンで食材をじっくりいって煎じるだけというシンプルな方法。10分ほど煎じると効き目も高まるというが、お湯を注ぐだけでも十分なので、手軽に準備ができて、リラックスタイムのお供にもぴったり。
「黒豆茶、ごぼう茶共に、アレンジとしてショウガのスライスをあと入れするのも。代謝アップや冷え改善にも役立ちますし、香りもぐんと良くなります。ショウガの辛み成分であるショウガオールやジンゲロールには、血行促進効果もあって、疲労回復にも役立ちます。煎じた残りの黒豆はそのまま食べたり、ごぼうはみそ汁などに入れて丸ごと食べるのがおすすめです」
身体が喜ぶ食材をとるのと同じくらい大切なのが、不調に拍車をかける食材を避けることと、こいけ先生。
「気分が落ち込んでいるときに、“スイーツを食べよう”という女性も多いかと思います。ですが、市販のデザートに含まれているたっぷりの砂糖は、疲れている身体に負荷をかけてしまうのです」
砂糖をとりすぎると血糖値が急激に上がり、それを抑えるために、膵臓からインスリンという成分が分泌される。
「この血糖値の急激な変化は、膵臓にも血管にも負担をかけます。自律神経の乱れも引き起こすので、弱っているときは過剰な砂糖の摂取は避けてください」
どうしても食べたいときは、身体にやさしい甘みを。
「麹を使った甘酒やさつまいも、ドライフルーツは身体にやさしく、自然な甘さで心も満たされます」
お手軽薬膳茶のレシピ紹介!
自分で作るととびきりおいしい すっきり香ばしいごぼう茶
【効能】食物繊維のイヌリンが腸の調子を整えてくれます。皮膚の不調にも効くため、梅雨時季に出やすい吹き出物や湿疹ケアにも。
【材料と作り方】ごぼう1本(100g)はよく洗って皮つきのまま薄くスライスし、フライパンでカラカラになるまで30分くらいいる。もしくは、スライスしたごぼうをクッキングシートにのせ、120度のオーブンで40分ほど焼いて乾燥させても。いったごぼう5gに対し、500mlのお湯で10分ほど煎じて飲む。しっかり乾燥させれば、保存瓶などの容器に入れ、常温で1〜2か月保存可能。
湿気によるむくみとだるさを解消 やさしい甘さの黒豆茶
【効能】黒豆には余分な水分を排出して、むくみを改善してくれる効果が。また、血流改善や抗酸化作用のあるアントシアニンも豊富。
【材料と作り方】黒豆100gをフライパンに入れ、中火にかける。弱火で20分ほどしっかりといり、皮が破れて香ばしい香りがしてきたら取り出す。いった黒豆大さじ1に対し、500mlのお湯で10分ほど煎じて飲む。保温ポットに黒豆小さじ1、お湯350mlを入れて、持ち歩いて飲むのもおすすめ。しっかり乾燥させれば、保存瓶などの容器に入れ、常温で1~2か月保存可能。
