※写真はイメージです

 疲労感の軽減や美肌づくり、風邪予防など、さまざまな健康効果で知られ、これからの梅雨の季節における身体のダルさに最適のレモン。実は最新の研究によって、健康寿命を延ばす驚くべき効果が証明されたという。

 そこで実際に研究を実施した県立広島大学の飯田忠行先生に、新たに証明されたレモンの健康効果について話を聞いた。

クエン酸の驚くべき健康効果

「レモンには、ビタミンCや酸味成分のクエン酸、抗酸化作用を持つポリフェノールなどさまざまな有効成分が含まれますが、中でもクエン酸は血圧の上昇を抑えたり、カルシウムの吸収をアップしたりといった健康寿命をサポートする効果が証明されています。

 クエン酸はフルーツや野菜にも含まれますが、レモンのクエン酸含有量はNo1。毎日適量のレモン果汁をとることで、高血圧や骨粗しょう症の予防が期待できるんです」(飯田先生、以下同)

 クエン酸には血管内の抗酸化に作用があり、加齢によって起こりやすくなる血圧の上昇を防ぐ作用もある。

 実際に、広島県に住む中高年の男女541人を対象に行った飯田先生の研究では、1日1個分のレモン果汁30mlを摂取した人と、通常の食生活を送った人の血液検査を5年間実施したところ、通常の食生活を送ったグループは加齢による血圧上昇が見られたが、レモン果汁を摂取したグループは5年後にも血圧がほとんど上昇していなかった。

ちなみにレモンの高血圧予防効果は果汁のクエン酸だけでなく、皮に含まれるポリフェノールのエリオシトリンも作用することがわかっています。ポリフェノールの抗酸化作用で血液の酸化を抑え、血管の老化を防いでくれるのです。

 果汁だけでも十分効果が期待できますが、予防効果をより高めるなら皮を使ったメニューも取り入れてみてください。みじん切りにして、かき揚げやポテトサラダに混ぜると食べやすくなっておすすめです」

 レモンの皮を食べる際は農薬が気になるが、輸入品は防カビ剤が使用されていることが多いため、国産レモンを選ぶようにしよう。

 クエン酸で高血圧を予防することで、動脈硬化や心筋梗塞、心不全、脳卒中などの重篤な生活習慣病のリスクを下げる可能性もある。中高年世代は食生活に積極的にレモンを取り入れたい。

加齢による骨密度の低下も予防

 さらに、クエン酸には骨密度の低下を防ぐ働きもある。

「クエン酸にはカルシウムを包み込んで水に溶けやすくする作用があり、カルシウムと一緒にとることで腸からの吸収率をアップさせる効果があります。年をとると、腸からカルシウムを吸収する力が弱まって骨密度の低下を招きやすくなるため、レモン果汁は骨粗しょう症の予防にも最適

 特に女性は閉経後に女性ホルモンのエストロゲン分泌が減少し、骨密度が大幅に低下するため注意が必要だ。

「エストロゲンが減ると身体は血液中のカルシウム濃度の変化に敏感になり、骨を溶かしてカルシウムを補おうとするため、骨密度が低下しやすくなります。しかも血液中のカルシウム濃度が上がると、今度は腸からカルシウムの吸収を抑える指令が出され、骨密度が下がるという負のスパイラルを引き起こします」

 中高年女性はカルシウムとレモンを一緒にとって、血液中のカルシウム濃度を一定に保っておくと、身体に良い影響を与える。

おいしく減塩できる神食材レモン ※画像はイメージです

20〜30代のうちから骨密度を高めておけば、将来の骨粗しょう症予防にもつながるので、若い世代もレモンを食べることをおすすめします

 飯田先生イチ押しのメニューは、カルシウムが豊富な牛乳と、レモンを組み合わせたレモンラッシー。

「クエン酸には、運動後の乳酸を抑えて疲労感を軽減する効果があり、日常生活のサポートにもつながります。またカルシウムには熱中症予防の効果があるため、ウォーキングなどで汗をかいた運動後にレモンラッシーを飲むのも効果的。

 ただし、レモン果汁はとりすぎると胃酸過多や逆流性食道炎を悪化させるおそれがあるため、摂取を控えるか、多くても1日30ml、大さじで2杯までを守るように」

 さらに気をつけたいのが医師から高血圧や骨粗しょう症の診断を受けている人。

「クエン酸は予防には効果的ですが、病気の治癒には不十分。診断を受けている場合は病院で治療を受けましょう」

 今年も猛暑が続きそうな夏。さっぱりしたレモンを取り入れて、健康寿命を延ばそう。

レモンたっぷりレシピ

レモンたっぷり貝割れそば

 皮と果汁を同時にとれる

レモンたっぷり貝割れそば

材料(2人分)
・そば(乾麺)……150g
・レモンの輪切り……1個分(薄め)
・貝割れ……1パック
A〔だし汁……4カップ、レモン汁……大さじ3、薄口しょうゆ……大さじ3、塩……小さじ1/3〕

【作り方】

(1)レモンの輪切りは種を除き、貝割れは根元を落として半分にカットする。ボウルにAを混ぜ合わせ、冷蔵庫で冷やす。

(2)そばをゆでてざるにあげ、流水にさらしてもみ洗いし、水けをきる。

(3)(2)を器に盛り、貝割れとレモンの輪切りを交互にのせてAを注ぐ。

いわしのレモン締め

 カルシウム補給にも最適!

いわしのレモン締め

材料(2人分)
・いわし……6尾
・塩……小さじ2強
 A〔レモン汁……大さじ4、オリーブオイル……1/2カップ、こしょう……適量〕
・レモンの輪切り……1/2個分(薄め)
・ディル……2〜3枚

【作り方】

(1)いわしは三枚におろして骨と皮を取り除く。ざるに広げて塩をふり、20分ほど置いて、出てきた水けを拭く。

(2)バットにAを混ぜ合わせ、(1)を並べてレモンの輪切りとディルをのせ、ラップをかけて冷蔵庫で30分以上置く。

(3)いわしを取り出し、3cm幅に切って器に盛り、バットに残った調味料をかけてディルを散らす。

レモンラッシー

 牛乳と混ぜるだけ

「高齢の場合は、カルシウムが添加された低脂肪牛乳を選ぶと良い。レモン果汁はレモンを搾ったものだけでなく、市販のポッカレモン100などを使ってもOK」(飯田先生)

レモンラッシー 写真提供:ポッカサッポロ

教えてくれたのは……

飯田忠行先生●県立広島大学保健福祉学部教授。専門は応用健康科学、公衆衛生学、地域健康疫学、老年医学。広島県の戦略作物であるレモンの効果検証を行う、県立広島大学次世代健康支援研究センターも兼務。

飯田忠行先生●県立広島大学 保健福祉学部教授。専門は応用健康科学、公衆衛生学、地域健康疫学、老年医学。広島県の戦略作物であるレモンの効果検証を行う、県立広島大学次世代健康支援研究センターも兼務。

堤人美さん●料理研究家。雑誌、企業のレシピ開発、テレビなどで活躍中。素材をおいしく食べるレシピ本を多く出版している。

堤 人美さん●料理研究家。雑誌、企業のレシピ開発、テレビなどで活躍中。素材をおいしく食べるレシピ本を多く出版している。『なんでもレモン いつものおかずから、おやつ、保存レシピまでなんでも合うのがレモンです。』(Gakken)、など著書多数。※レシピ写真は「Gakken」より提供

堤さんの著書『なんでもレモン いつものおかずから、おやつ、保存レシピまでなんでも合うのがレモンです。』(Gakken)※画像をクリックするとAmazonの商品ページにジャンプします。

取材・文/井上真規子