
「若いときは、歌はうまいけど味がないねとよく言われたものです。それに対して、イラッとしたり落ち込んだりしていました。でも今振り返ると、若いときは“味がないこと”が素敵なんだと思います。褒め言葉だったのかもしれないですね」
演歌界の貴公子がデビュー25周年

「演歌界の貴公子」の呼び声で17歳のときにデビューした山内惠介が、駆け出しのころを振り返った。4月18日にデビュー25周年を迎えた山内は、
「何がいちばん変わったっていうと、もう青くないってことですよ。青年じゃなくなっちゃった(笑)。そこからは目を背けられないです!」
と、軽快に笑う。迫力のある歌声とはギャップを感じる、おちゃめで親しみやすいキャラクターだ。
「若いときは、どんなに味を出そうとしたって出なかった。ところが今は、自然と味が出るんです。25年間歌っていて、そこは変わったことだなと思います。出会いや別れを経験して、侘びさびがわかってきたことが、味につながっているのかな。
変わらないのは、歌への思いです。見えてくる世界が変わっても、歌への思いはずっと変わりませんでした。難しくて面白くて、飽きることがないです」
25年間での試練を尋ねると、「売れなかった時代」と即答した。2001年にデビューし、初『紅白』は2015年。順風満帆ではなかった駆け出しのころがあったからこそ、今の自分があると振り返る。
「いきなりヒットを飛ばしていたりしたら、きっと今の自分ではないと思います。調子に乗って終わっていたかもしれません。自分より後にデビューした人がスターダムにかけ上がっていく姿を何度も見ましたし、追い抜かれる経験もいっぱい味わいました」
折れなかった理由

なかなか芽が出ないなか、折れなかったのはなぜか。
「応援してくれる人はもちろんですが、自分をプロデュースしてくれる人たちがいたからです。25年間、1年に1曲はシングルを発売させてもらっているのですが、これって実は当たり前じゃない。スポットライトが当たらないときも曲を出させてもらえたのは、本当に恵まれていたと思います。
地団駄を踏んでいたとき曲を出させてもらえなかったら、腐っていたかもしれません。本当に感謝していますし、1曲1曲を大事にしていきたいです」
25周年となる今年発売したシングル『北の断崖』は、原点回帰ともいえる王道演歌。
「男性を憎みきれない女性のいじらしさを歌った曲です。別れた相手のことをぐちぐち言うよりも、こんな良いところもあったよねって思えたほうが、人としてレベルが高いじゃないですか。男も女も、人間ってこうあってほしいなと思います」
MVの再生回数は早くも230万回を突破し、反響も大きい。
「こういう男にだまされたのよ、とか、こうやって嘘つく男はザラにいるの、とか、自分のことを話してくれる方が多いかもしれません。そこは僕、聞いていないんですけどね(笑)。自分のことを歌っていると思ってくれて、経験を話したくなるんだと思います。
そんな反響に、男の自分が女性の心を想像して歌うことの面白さがあるなと思います」
出会いをキャッチできるように
25年前の自分に声をかけるとしたら?
「継続していればミラクルは起こるということと、自分のためではなく、誰かのために歌ってほしいということです。自分が歌うのが好きだからずっと続けたいと思っているかもしれない。でも、すべてではないけれど、これはビジネスでもあるんだよ、と。誰かに迷惑をかけてはいけないし、結果を出さないとご飯を食べられないわけです。
でもそういうことを17歳の自分に言ってもわからなかったよな、とも思います。周りの人が、僕の人生に自分の人生を重ねてくれるから歌えているんだと自覚して、自分ではなくて誰かのために歌ってほしいと伝えたいです」
35周年を迎える自分は、今はまったく想像できないという。
「できあがっていない、伸び代がある状態でいたいです。素敵な出会いがたくさん待っているだろうし、それをキャッチできる自分でいたいと思います。輝いていたいですね!」
最後に、ファンのみなさんにメッセージを!
「ここからの10年で“本物”の大人になっていきたいと思っています。そしてみなさんには、山内惠介を推した責任として、大人になる僕を見届けてもらいたいです! ……どう? この上から目線(笑)。僕もみなさんに魅力的だと思ってもらえるようになる責任があるけど、僕を応援してくれる人は、きっと他の人におすすめもしてくれているだろうし、“推した責任”というものがありますから(笑)。
あとは、心も身体も健康に気をつけてほしいです。僕は自分でちゃんと健康にやってるから、心配しなくていいので(笑)。健やかに、僕を応援してもらえたらうれしいです」
惠ちゃんのハマりごと
外干し
外干しの気持ち良さに気づいて、毎朝欠かさずに外干しをしています。きっかけは母。僕が帰省すると、母は必ず5時に起きて洗濯物を干しているんですよ。自分のルーティンがあるのっていいなとまねしたら、本当に気持ち良くて。日光浴にもなるし、頭も起きてくるし、洗濯物は乾くし、良いことしかないんです。
土鍋
880円くらいで、ひとり用の土鍋を買いました。これはね、もうみなさんに買ってほしいです(笑)。普通のお鍋とは全然火の通りが違って、お肉もかたいお野菜もやわらかくなるんです。880円でこれは安いよ。僕、あと5個くらい欲しいですもん!
インフォメーション
●『デビュー25周年特別企画展 山内惠介 2001-2025』
7月16〜27日@大阪・心斎橋OPA 9階
●デビュー25周年記念楽曲『北の断崖』好評発売中