左から貴乃花、朝青龍、白鵬……。平成以降に昇進し引退した横綱は11人。そのうち6人が角界を離れている

 6月9日、日本相撲協会を退職した元横綱・白鵬で前宮城野親方が都内のホテルで記者会見を開き、「今の自分が置かれた立場を考えると、協会の中ではなく外の立場から発展に尽くすことが良いと判断した」とコメント。退職の理由について「照ノ富士の下が嫌だということはまったくありません」とし、伊勢ケ浜親方(元横綱・照ノ富士)との上下関係の問題はないと強調したが、その5日前に、「ひどいです」と白鵬の退職に関して憤りを隠さななかったのが、元大関でジョージア出身の栃ノ心だ。

11人中6人が角界を離れている

「おかしいと思いませんか? ひどいすよ。信じられない」

 流暢な日本語で、しかし落胆した表情でそう話した栃ノ心。6月4日、自身のXに動画を投稿する形で思いを伝えた。彼が言及したのは、歴代最多45度の優勝を誇る大横綱・白鵬の日本相撲協会退職についてだ。

「“クビみたいなこと”“なんで白鵬関だけ冷たくされたのか”などと話し、日本相撲協会に対して疑問と憤りを伝えています」(スポーツ紙記者、以下同)

 元横綱・白鵬は、現役引退後の'22年7月に13代宮城野を襲名。宮城野部屋を継承して親方となった。

「'24年に宮城野部屋内で弟子の暴行が発覚。親方は責任を問われ、降格などの処分を受けました。結果、宮城野部屋は閉鎖しています」

 部屋の閉鎖を受け、宮城野親方は弟子とともに伊勢ヶ濱部屋に転籍している。

「宮城野親方は弟子たちの実家まで頭を下げに回ったり、伊勢ヶ濱部屋では下働きをするなど、献身的に動き、“再起”を目指していたのですが、このような結果となってしまいました」

 平成以降、横綱に昇進した力士は13人。今年、昇進した豊昇龍・大の里を除く11人が引退しているが、そのうち角界を離れているのは宮城野親方を含め6人にも上る。

「栃ノ心さんも指摘している日本相撲協会との関係を考えると、角界を離れた6人の中でも貴乃花親方は今回の宮城野親方と状況が似ている。親方にはなっていないので状況は異なりますが、元横綱・朝青龍も問題の“本質”は同じだと思います」(相撲ライター、以下同)

協会は「排他的な組織」

 優勝22度の貴乃花は'03年に引退。その後、親方となるも'18年に退職。優勝25度の朝青龍は'10年に引退し、角界を去っている。

「貴乃花、朝青龍、白鵬……それぞれの横綱、親方に問題がなかったとは言えないし、土俵での振る舞いや言動、部屋で起きた暴力事件など問題はあった。しかし、協会のやり口として、それまで協会の意にそぐわない“目に余る”存在だった人に対し、問題を理由に退職に追い込むようなことが多い」

 退職した宮城野親方は、相撲を国際的な競技とする組織の発足を目指すという。

「大相撲とは異なる『SUMO』のプロリーグを運営する見込みです。協会側は“それ見たことか。こういうことする人間だから”と考えているでしょうが、それは違う。

 協会が排他的な組織のため、そうせざるを得なかった。宮城野親方含め、さまざまな人が新たな発展を目指しているのに、神事だとか伝統の名のもとに、旧態依然としているから退職する。というより、外されるわけです

元大関・栃ノ心の相撲協会への批判と共にアップされた元横綱・白鵬とのツーショット(公式インスタグラムより)

 いまだに“昭和”の感覚が残るような相撲協会。

「協会に“闇”があるのはもはや周知の事実といえるような状況で、協会自体がそう感じていないのがいちばんの闇かもしれませんね」

 相撲協会が、目の上のこぶを排除し続けた先にあるものは……。