
受験生だけでなく、さまざまな人たちから支持されている「wakatte.TV」。その2人が、学歴、そして勉強する重要さをあますところなく綴った書『17歳のときに知りたかった受験のこと、人生のこと。』が話題です。少子化で大学への門も多少広がったといわれているものの、それ以外の人生も尊重されるようになってきた現在。あえて「学歴」をつけることをすすめている彼らの思いとは。熱いメッセージを聞いた─。
受験生たちの人生を、よりよくしたい
チャンネル登録者数60万人超えの受験系ユーチューバー「wakatte.TV」。“青いほう”担当のびーやまさんが、初の著書『17歳のときに知りたかった受験のこと、人生のこと。』(ダイヤモンド社)を出版した。
発売からわずか2か月半で8.5万部を突破し、大きな注目を集めている。
「YouTubeで見せている姿とは違い、真剣に書きました」というびーやまさん。相方であり、執筆協力に携わった高田ふーみんさんも招き、本書のこと、そして令和の受験事情について話を聞いた。
受験系ユーチューバーとして、大人気の「wakatte.TV」。びーやまさんは早稲田大学教育学部出身、高田さんは京都大学経済学部中退という高学歴コンビだ。
「学歴至上主義」を掲げ、低学歴をあざ笑う動画を投稿しては、たびたび炎上している。しかし、今回上梓したびーやまさんの著書は、そうしたバラエティー要素を一切排除した。
「受験と人生について、しっかり向き合うことをテーマにしました。普段の動画では絶対に言わないような内容で、教育色が強いです。表紙のデザインも、ちょっと青春風なイラストにして、僕らのことを知らない方も手に取りやすくしました」(びーやま)
高校生をターゲットにした本だが、意外なことに親世代からの反響が多く届いた。
「『子どものために買ったけど、自分用にもう一冊買った』とか、『ママ友にもすすめます』というメッセージを頂きました。最近は、中学生で読んでいるという子もいて、とてもうれしいですね」(びーやま)
相方の高田ふーみんさんも、巻末の特典『wakatte.TV が本気で教える「オススメしたい参考書」一覧』に執筆協力者として参加している。びーやまさんの初著書について、「いつも彼が言っていることが、そのまま本になった」と太鼓判。
「びーやまは、受験生たちの人生を、よりよくしたいという思いが人一倍強いんです。本を読んで、びーやまの魂のメッセージを感じました」(ふーみん)
「wakatte.TV」といえば、学歴至上主義をコンセプトに、数々の動画を配信。本書も、「学歴は最強の保険になる」「学歴は関係ないなんてことは絶対ない」といった強い主張が目立つが、これに反発する声も少なくない。
高校1年生からでも十分巻き返せる
「『人生に学歴は関係ない』という批判は、めちゃくちゃ来ます。でも全然気にならないです(笑)。というのも、僕も学歴はいらないと思って、一度大学をやめた身なんです。起業して会社経営をしていました。
その経験があるからこそ、学歴はあったほうがいいと思っています。学歴がいらないと思う人の気持ちもわかるし、僕はそれを否定するつもりはないです」(びーやま)

むしろ、「勉強以外にやりたいことが見つけられたら、学歴は必要ない」というのが、びーやまさんの考えだ。
「本にも書きましたが、例えば、野球の大谷翔平選手は学歴でいうと高卒ですが、そんなの関係ないくらいの偉業を打ち立てています。圧倒的な才能を持っていたり、絶対にやりたいと思えることがあれば、それに向かっていくべきです。
でも、そのやりたいことを18歳の時点で見つけられる人は、実際にはほとんどいません。であれば、人生の保険として学歴を持っていたほうがいい。学歴は将来の自分を助けてくれるものなんです」(びーやま)
本書では、大学受験の地域差についてもリアルに書かれている。びーやまさんによると、地方の公立高校では、国公立大学に進学することが何よりも優先される風潮があるという。
「僕自身そうでした。最近も、ある地方の高校に通う子が、東京の私大を目指したいと言ったら、学校の先生から進路指導をしてもらえなくなったという話を聞きました。ほかにも、『女性は地元に残るべき』という価値観を持つ地域もいまだにあります」(びーやま)
しかし、地域の価値観に流されず、自分の進みたい道に挑戦してほしいと、びーやまさんは言う。
「自分は地方だから無理だとか、親も高卒だから大学には行けないとか、最初から天井を決めちゃう子は多いです。でも、今は、どこにいたってチャレンジできる時代。例えば、高校の偏差値が低いからと、有名大を諦める必要はまったくありません。高校1年生からでも十分巻き返せます」(びーやま)
なにより重要なのは、“学歴の重要性を知って、行動できるか”。それを体現したのが、相方のふーみんさんだという。
「相方のふーみんは、京大合格者が出ない高校から、唯一合格しました。それが実現できたのは、ふーみんが高校1年生のときすでに、学歴の重要性を知っていたからです」(びーやま)
「当時の恩師が、学歴の重要性を教えてくれたんです。だからこそ京大という目標に向かって努力できました。この本に書かれていることは、そのとき僕が教わったこととほとんど同じです」(ふーみん)
現代の大学受験では、地域格差に加え、経済格差も問題になっている。びーやまさんも「経済的な差は確かにある」としながらも、打開する手立てはあるという。
学歴はただの武器、どう扱うかは自分次第
「東大や早稲田の対策は予備校でしかできないという時代もあったと思いますが、今は違います。情報が無料で取れる時代です。塾より安いオンライン学習サービスも、たくさんあります。経済格差も、情報次第で十分乗り越えられると思うんです」(びーやま)

とはいえ、学歴の必要性を理解したところで、どうしても勉強を頑張れないという声も、時に届く。びーやまさんは「勉強に向いていないことを早めに知ることも重要」と言う。
「僕はこの本で、学歴の重要性と同時に、自分の人生を自分軸で生きてほしいということも伝えています。受験を頑張れなかったから、次に進めないということは絶対にありません。一方で、受験がうまくいった子も、そこがゴールではありません。学歴はただの武器であって、それをどう扱うかは自分にかかっています」(びーやま)
「wakatte.TV」の熱意は、受験生にも届いている。最近では、高校生たちから「『wakatte.TV』に出て、学歴を言うのを目標に頑張っている」と言われることも増えた。また、「wakatte.TV」から勇気をもらい、難関大に合格したという報告も。
「僕らの発信のコアは、頑張る受験生を応援することです。受験生たちのモチベーションになっているとすれば、これ以上うれしいことはないですね」(びーやま)
しかし、近年、大学入試は大きく変わろうとしている。推薦入試やAO入試が増え、学力を測るペーパーテストの割合は減少傾向にあるという。
「受験は、人生の下剋上だと思うんです。ペーパーテストという平等な戦いが、推薦などによって変わってくるのはちょっと嫌だなという気持ちはあります。ただ、今は思いつかないような攻略法も出てくるはず。ペーパーテスト自体はなくならないと思うので、新しい入試に合わせて、対策を練ることが重要かなと思います」(ふーみん)
「受験の変化については、『wakatte.TV』で、最新の情報を提供します。学生たちの生の声もお届けするので、受験を頑張る人たちの励みになれたらうれしいです!」(びーやま)

びーやま 教育痛快バラエティー番組・YouTube「wakatte.TV」のツッコミ担当。早稲田大学教育学部卒。高校時代の偏差値は37だったが、1年間の浪人を経て早稲田大学に入学。大学時代は起業・自主退学・復学などさまざまな経験をしたのち、大学受験の素晴らしさに気づき今に至る。甘いルックスと鋭いツッコミ(たまにポンコツ)で視聴者の心をつかんでいる。決めゼリフは学歴モンスターの相方・高田ふーみんを制止する「ヤメロオマエ」。
高田ふーみん 教育痛快バラエティー番組・YouTube「wakatte.TV」にて「学歴至上主義」を貫く学歴モンスター。京都大学経済学部中退(現役合格)。学歴を絶対の価値基準とする偏った思想を持つヒール役として受験生や大学生を中心に人気を博している。決めゼリフは「Fランやないか」。
取材・文/中村未来