相撲協会の八角理事長

 公益財団法人・日本相撲協会をめぐり、再び世間の視線が厳しさを増している。きっかけは、6月9日に開かれた元横綱・白鵬の退職会見だ。相撲界の象徴ともいえる存在が、協会を去るという異例の事態。この退職は、八角理事長(元横綱・北勝海)が築いてきた「一強体制」の完成を意味していた。

「定年延長」計画も

 日本相撲協会のトップとして、10年にわたり権力を握り続けている八角理事長。彼が理事長に就任したのは、2015年12月のことだった。

 当時、協会を率いていた北の湖理事長が急逝。次期理事長には貴乃花親方が有力視されていたが、北の湖親方の急逝により状況は一変する。死去からわずか1か月後に、理事長代行を務めていた八角親方が正式に理事長の座に就任したのだ。

 その後、元横綱・日馬富士による貴ノ岩への暴行事件が発覚。当時、貴ノ岩の師匠であり巡業部長も務めていた貴乃花親方は、その対応を巡って猛批判を受けた。その結果、2018年に相撲界を退くことに。

 そして2025年6月9日、白鵬こと宮城野親方が都内で会見を開き、正式に相撲協会を退職することを発表した。2024年には弟子による暴行問題が発覚し、協会から懲戒処分を受けたことで部屋は閉鎖。その後も再興の見通しは立たず、白鵬は協会を去ることとなる。

「協会の意にそぐわない存在だった白鵬を追い出すための処分だった――そんな声もささやかれています。八角一強体制は、これでますます強固になったといえるでしょう。さらに現在、この体制を支えるかのように、定年を70歳まで延長し、75歳まで再雇用を可能にする案も浮上しているというから驚きです」(スポーツ紙記者)

白鵬は「大人の対応」

 ネット上では、八角理事長や協会の体質に対する厳しい声が広がっている。

《理事長になってから不祥事だらけな上、何の責任もとってないのに?》

《物言う者は排除、締め出し。何も変わってないじゃん》

《定年延長って……そこまでして居座りたいのか》

《年寄りがずっとトップじゃ、何も変わらんよな》

 こうした声の中には、「まさに老害」といった厳しい表現も目立っている。

 一方で、協会を退職した白鵬については《平和的な解決を選んだ大人の対応だった》《揉めなかったのは、さすが》など、好意的な声が。

現役時代の白鵬(左)と、6月9日に日本相撲協会からの退職会見を開いた白鵬(右)。眉毛がクッキリと激変している 会見写真/共同通信社

「白鵬さんは、協会に対して何らかの本音があったにせよ、それを公の場で語ることはありませんでした。あえて角を立てずに身を引いたその姿勢は、極めて冷静で大人の対応だったといえるでしょう。もし感情を露わにしていれば、不要な敵を生むことにもなりかねません。今後の展望や構想を考えれば、今回のような静かな幕引きは最善の選択だったのではないでしょうか」(前出・スポーツ紙記者)

 来年に理事長選挙を控えるなかでも、八角理事長に対抗しうる存在は見当たらない。かつて次代を担うと目されていた貴乃花や白鵬も、すでに協会を去った。「八角一強」体制となった相撲協会は、この先どのような未来を迎えるのか――。