※写真はイメージです

多くの方は洗濯方法に問題があると思われていますが、実は洗濯機自体がニオイの発生源になっているケースが非常に多いんです

 そう話すのは、洗濯機解体洗浄業者の森藤永太郎さん。森藤さんの元には、夏場になるとニオイに関する問い合わせが増えるそう。

梅雨から夏場に急増する洗濯機のニオイトラブル

「特に6月、7月は1日に数十件の相談が入ることがあります。問い合わせ内容で最も多いのは、“洗濯してもニオイが取れない”ということです」(森藤さん、以下同)

 洗濯方法を見直してもニオう場合、根本的な原因は洗濯機の内部にあることがほとんど。特に夏場は汗をかくことが多いため、皮脂汚れが衣類に付着しやすく、その汚れが洗濯機内部に蓄積し、カビの栄養源となってしまう。

 洗濯をしても完全に落ちきらずにニオイが残ってしまうケースが多いのだとか。

ドラム式と縦型、それぞれの隠れた汚れ

 洗濯機の種類によっても、汚れの蓄積パターンが異なるという。

ドラム式洗濯機は乾燥機能を使うことが多いため、洗濯物の繊維から出る埃が洗濯槽にたまりやすい傾向があります。この埃がたまると、洗濯後に衣類に埃が付着したり、生乾きのようなニオイの原因になることが。

 一方、縦型洗濯機は洗濯物から出る皮脂汚れが洗濯槽内部に蓄積しやすく、カビが発生しやすいという特徴があります

 ドラム式洗濯機の場合、乾燥機能によって繊維くずや糸くずが固まって洗濯槽にこびり付いた埃は、市販の洗濯槽クリーナーでは落とせない。これらの埃は水圧では取れず、手で剥がす必要がある。 

 縦型洗濯機でも同様の問題があるという。

「縦型洗濯機の場合は、洗濯槽クリーナーの水が届かない洗濯槽上部の裏側部分に発生したカビや、洗剤や柔軟剤が蓄積してできた石けんカスのような固まった汚れは完全に除去できません。この見えない汚れがニオイの大きな原因になっています」

 そうならないうちに、日頃から手入れはこまめに。

使用して3年たったという埃がたまった洗濯乾燥機の熱交換器。清掃前後で送風の勢いがまったく違うという

「糸くずフィルターや洗剤投入口のケースなどを月に1回程度清掃することが重要。特に糸くずフィルターは、手入れをせずに放置すると雑菌の温床となり、洗濯物にニオイが移る最大の原因となってしまいます」

 相談者の中には、洗濯機購入後、一度もフィルター掃除をしていなかったという人もいるそう。

縦型洗濯機は使用後にフタを開けておくようにしてください。ただし、ドラム式洗濯機の場合はドアを開けっぱなしにするとヒンジに負荷がかかり、不具合の原因になることがあります。そのため、ドラム式ではドアを開けっぱなしにせず、乾燥機能を使って内部をしっかり乾燥させることをおすすめします

 また、家庭で洗濯機の掃除をする際、洗濯槽クリーナーの選び方についてのアドバイスをしてもらった。

「洗濯槽クリーナーには塩素系と酸素系の2種類がありますが、塩素系のほうが洗浄力は断然高いです。ただし刺激が強い場合があるので、肌が弱い方や環境への影響が気になる場合は酸素系を使用すれば良いでしょう。

 高価なものを選ばなくても、市販の『洗たく槽カビキラー』などの塩素系クリーナーであれば、効果はほぼ変わりません」

夏場の洗濯ワザで汗とニオイを完全撃退

 洗濯機のメンテナンスをしつつ、洗濯のやり方自体にもコツがある。

夏場の洗濯は、ただ洗剤を入れて回すだけでは不十分なことが多いんです。汗や皮脂汚れには専用の対策があって、ちょっとしたコツで劇的に変わるんです。まず皆さんに知ってほしいのは、洗濯機に入れる前の予洗いがいかに重要かということです。特に襟元や脇の部分、これは絶対に念入りにやってください

 40度程度のぬるま湯に衣類を10分程度つけ、軽く押し洗いする。このとき、食器用中性洗剤を少量加えると、皮脂汚れがより落ちやすくなるという。

「食器用洗剤を使うとは意外に思うかもしれませんが、これが効果抜群。油汚れに強いということは、皮脂汚れにも絶大な効果を発揮します。ただし、色落ちが心配な衣類には使いすぎないよう注意が必要ですね」

購入して2年のドラム式洗濯機。パッと見、手入れがされていてキレイだったが、奥にはかなりの埃が

 特にニオイが気になる洗濯物は、予洗いが効果的。

洗濯前に風呂場で酸素系漂白剤、例えば『オキシクリーン』などでつけ置き洗いをすると効果があります。また、洗濯時に衣類にダメージがない程度に少量の漂白剤を毎回使用することで、衣類の黄ばみや皮脂汚れを防ぎ、ニオイを根本から抑えることが期待できます

 40度から50度のお湯で洗濯するのにも理由が。菌の繁殖を抑えることができるのだ。

「ただし、ウールやシルクなど縮みやすい素材は避けてください。そして、残り湯を使うには注意が必要。入浴剤が入っていたり、家族全員が使った後の湯は、逆に菌を増やす原因になってしまいます。必ず一番風呂後の湯で、必ず洗いの工程のみ。すすぎには使わないでください」

 洗濯が終わったら、1分1秒でも早く干すこと。

「せっかく菌を除去しても、濡れた状態で放置してしまえば、あっという間に菌が復活してしまいます。洗濯機の中に入れっぱなしはNGです」

やりがちな“間違い”

 天気のいい日は日干しを。ただし、色あせが心配な衣類は陰干しでも問題ない。

「色あせが心配なら無理に直射日光に当てる必要はありません。その代わり、扇風機やサーキュレーターで風の流れをつくって、早く乾燥させることを心がけてください」

 部屋干し時の対策についてもテクニックがあるという。

エアコンの除湿機能と扇風機を併用すれば、外干しと変わらないレベルで乾燥させることができます。洗濯物同士の間隔を十分に空けることも大切で、厚手のタオルやジーンズは、ハンガーを2本使って立体的に干すと驚くほど早く乾きますよ

 綿や麻などの天然素材についてはデリケートな扱いを心がけたい。

「天然素材は吸湿性に優れている分、菌も繁殖しやすいんです。こまめな洗濯と十分な乾燥が大切です。40度程度のお湯洗いが効果的ですが、色の濃いものは最初はほかとまぜずに単独で洗い、色落ちをチェックしてください」

 ポリエステルなどの化学繊維には、また別のアプローチで対応しよう。

化学繊維の最大の弱点は、皮脂汚れが非常に落ちにくいこと。だからこそ、食器用洗剤での予洗いが特に威力を発揮します。速乾性に優れているので風通しの良い場所に干せば短時間で乾きますが、高温には弱いので乾燥機は避けたほうが無難です

 夏場の洗濯で多くの人がやりがちな間違いについても、森藤さんは教えてくれた。

「洗剤をたくさん入れれば汚れがよく落ちると勘違いしている人が多いんです。でもこれは完全に逆効果で、すすぎ残しが発生して、それが新たなニオイの原因になってしまいます。柔軟剤も同じです。

 特にタオルに柔軟剤を使いすぎると、吸水性が著しく低下してしまいます。ふわふわにしたい気持ちはわかりますが、機能性を重視するなら控えめに使いましょう」

 洗濯機のケアと正しい洗濯ワザを身につけることで、今年は快適な洗濯ライフを!

森藤永太郎さん●洗濯機分解洗浄に特化した専門サービス「洗濯機のまじん」スタッフ。SNSや各種メディアでも多数取り上げられ、注目を集めている。お客様一人ひとりへの丁寧な対応と、高い顧客満足度。他社では断られることの多い機種や洗浄方法も対応可能。

教えてくれたのは……森藤永太郎さん●洗濯機分解洗浄に特化した専門サービス「洗濯機のまじん」スタッフ。SNSや各種メディアでも多数取り上げられ、注目を集めている。お客様一人ひとりへの丁寧な対応と、高い顧客満足度。他社では断られることの多い機種や洗浄方法も対応可能。