経歴詐称が疑われた、伊東市の田久保真紀市長(公式Xより)

「“責任を全うするためには仕事で返しなさい”“逃げ出すな”と支援者から言われている。いまの状況を投げ出し逃げだすようなことは言いたくない」

 7月2日、“疑惑”を払拭すべく臨んだ釈明会見で、進退を問われて続投意思を示した静岡県伊東市・田久保眞紀市長(55)。自身の「学歴詐称」疑惑について、一貫して「私が経歴を詐称しているということは一切ない」と否定した。

 5月25日の伊東市長選で14684票を獲得し、初当選したばかりの田久保市長が一転して“辞職”に追い込まれている。当選後の市の広報誌にも記載された「平成4年東洋大学法学部卒業」との最終学歴が、“虚偽”であると告発されたのだ。

 本人も会見で認めたように、実際は「卒業」でも「中退」でもない「除籍」。つまり、自主的に大学を辞めたのではなく、なんらかの原因によって学校側から辞めさせられたのが真相。当然、一般的に「卒業証書」「卒業証明書」は発行されるはずもない。

「今回の問題点は意図的に“隠した”疑いがもたれていること」とは全国紙・社会部記者の解説。

「本人は“卒業と認識”とする勘違いを主張していますが、ならば“告発”後に議会で卒業を証明することを頑なに拒み、さらに議長に提示した“卒業証書”とされる書類ですが、“では、何を見せたのか”ということ。

 市長の会見後、あらためて取材に応じた中島弘道議長は、“卒業証書が偽物だったとわかった”と断じています。今後、田久保市長に対する百条委員会の設置と辞職勧告決議案の提出が検討されていますが、これは可決される見込みです」

田久保市長に僅差で負けた前市長

 あくまでも今件は、弁護士同席のもと「大学卒業の経歴は選挙中にみずから公表していないので、公職選挙法上は問題ない」と、市長選で自ら「東洋大卒」と言っていない、として“虚偽”ではないと言い張る田久保市長。

 一方で、彼女の主張に納得いかないのは、それまで2期8年を務めながらも1782票差で敗れた、当時現職の小野達也前市長(62)だろう。5月の市長選に立候補したのは田久保市長と小野前市長のみで、一騎打ちの末に前者に軍配が上げられた。

2025年5月19日の中日新聞Web版では、田久保真紀市長らの候補者プロフィールが

「各紙の地方版には告示後、2人の候補者プロフィールが掲載されましたが、最終学歴を“東洋大”とする田久保市長に対して、小野氏は“焼津水産高”と、堂々と“高卒”であることを掲げています。

 投票では、候補者の“学歴”も参考にした有権者がいたことも否めません。それこそ2023年の市議選では“滑り込み”の最下位当選だった田久保市長です。いくら自身で“東洋大卒”と公表していなかったとしても、市民から批判の声が上がるのも当然です」(前出・記者、以下同)

 落選した小野前市長の退任の日、

「(8年間)続けてきた流れを必ず取り戻す気概を持って、1つ1つ精進して伊東のためにやれること探していく。8年間に渡りまして誠にありがとうございました」

 2017年の初当選より勤めてきた、市役所での涙の退任会見。それでも「必ず取り戻す」と、次の市長選での“リベンジ”も誓ってみせた。

こちらは“無所属”を謳うも自公推薦

 仮に田久保市長が辞職となれば、再び市長選がやり直される見込みだが、そもそも市議会議員2期の田久保市長が当選できたことにも理由もありそうだ。

「市長選の争点となったのは、小野氏が約5年間にわたって推進した、建設費用が約42億円にも膨らんだ“新図書館計画”。莫大な公金が注がれることに市民から反対の声も上がっていた中で、計画の“中止”を訴えたのが田久保市長です。

 そして“無所属”を謳っている小野氏ですが、実は自民・公明の推薦です。同氏の8年間を含めて、30年以上にわたって自民派市長が市政を握ってきた現実があります。昨今の“自公離れ”によって浮動票が流れたと見られ、自ずと対抗の田久保市長を選んだ有権者も多かったのでしょう」

「詐称はない」とするも結果として有権者を“欺いた”田久保市長と、再任の際には新図書館計画を再開させるであろう自公推薦の小野前市長。全国区の騒動となっているが、頭を悩ませるのは有権者である伊東市民だ。