
7月13日に60歳を迎える中森明菜。体調不良で芸能活動を休止していたが、デビュー43周年を迎えた今年はフェスやテレビ番組に本格復帰しファンを歓喜させている。そこで今回は、彼女の数々のヒットソングの中で、いちばん好きな曲はどれかアンケート。気になる結果を読むうちに、思わず曲を聴き返したくなる……!
“ツッパリソングの集大成”
40年たっても色あせない、老若男女に愛される中森明菜の大ヒットナンバー。10位になったのは『十戒(1984)』。当時の音楽番組『ザ・ベストテン』(TBS系)で5週連続1位になるなどヒットを記録。「“愚図ね”から始まる珍しい曲。“イライラするわ”なんて明菜しか歌えない」(57歳・宮崎県・女性)、「イントロからインパクトがあって好き」(45歳・東京都・男性)と、曲の初めから心をわしづかみにされたといった声があがった。『少女A』から始まる“ツッパリソングの集大成”といわれるこの曲は、やわな恋人に「愚図ね」「坊や」「救いのない人ね」などと言い放つ力強い歌詞を当時20歳の明菜がクール&パワフルに歌い上げ大人気となった。
9位は『TATTOO』。21枚目のシングルで、彼女には珍しいボディコンシャスなミニの衣装や妖艶な振り付けでも強烈な印象を与えた。「この曲の衣装のインパクトはすごかったし、きれいだった。明菜ちゃんの踊っている姿がカッコよかった」(58歳・富山県・女性)、「露出の多い衣装もセクシーで振り付けにもドキドキさせられた」(51歳・島根県・男性)など、曲以上に斬新な衣装やダンスが強く記憶に刻まれているという声が目立った。ちなみに昨年、この曲の大ファンだという香取慎吾の希望でコラボが実現。香取のアルバムやYouTubeでもふたりの競演を聴くことができる。
8位はサードシングル『セカンド・ラブ』。作詞・作曲はヒットメーカーの来生えつこ・たかお姉弟が担当し、オリコン1位を6週にわたって獲得する大ヒットに。「バラードならコレ。明菜の切なさが満開」(66歳・大阪府・男性)、「明菜のイメージを変えた楽曲。来生たかお、えつこの持つ世界観を生かした傑作」(61歳・千葉県・男性)などのコメントが。強くアップテンポな曲のイメージも強い明菜だが、その一方で繊細なスローバラードへの評価や人気も高い。
「イメージを決定づけた曲」
7位は17票で『北ウイング』がランクイン。7枚目のシングルで国境を超えて彼のもとへ旅立つ女性を歌った。「あの飛び立つような躍動感が好き」(65歳・福岡県・男性)、「洋風でしゃれた感じ」(83歳・神奈川県・男性)、「メロディーがとてもインパクトがあり何度でも聴きたくなる」(63歳・兵庫県・女性)。衣装や振り付けなど細部までセルフプロデュースしたといわれる明菜だが、この曲も杉山清貴&オメガトライブの楽曲を多く手がけた作詞・作曲家コンビに、直接制作を依頼、タイトルも名づけたそう。このとき弱冠19歳、恐るべきセンスだ。

6位は11枚目のシングル『ミ・アモーレ』。『北ウイング』と同じ康珍化が作詞、ラテン音楽の第一人者、松岡直也が作曲を担当したラテンサウンドをベースにした楽曲。カーニバルで出会った男性との刹那的な夜を情感たっぷりに歌い、盛り上がりが最高潮に達するサビの《アモーレ》は聴きごたえバツグン。「ラテン感あるアレンジが好き」(61歳・埼玉県・男性)、「恋の切なさ、愛の深さをうまく表現」(83歳・東京都・男性)、「楽曲のサビの部分が好き」(56歳・兵庫県・男性)。この曲と『DESIRE―情熱―』で2年連続日本レコード大賞を受賞し、“脱アイドル”を印象づけた。
5位は19票で『難破船』。加藤登紀子の曲をカバーしてシングルリリース。曲の雰囲気が明菜にぴったりなことから、加藤が“明菜に歌わせたい”と切望し実現。「失恋したときに聴いて心に刺さった」(56歳・埼玉県・女性)、「ライブで泣きながら歌っているのを聴いて感動」(60歳・静岡県・男性)、「歌唱力がないと歌えない」(53歳・大阪府・女性)。明菜ならではの囁くような低音と切ない歌詞が魅力で、昭和世代の失恋ソングといえばコレ、という人も多いのでは。
4位はセカンドシングル『少女A』で28票。「初めてテレビで見たときが忘れられない」(62歳・愛知県・男性)、「『中森明菜』のイメージを決定づけた曲」(65歳・東京都・男性)、「媚びない、一番カッコいい曲だと思う」(66歳・神奈川県・男性)など。デビュー2作目、可愛い路線で行きたかったという明菜に用意された『少女A』はまさかの“ツッパリ路線”で、当初は反発したそう。ふてくされた写真が使われたジャケ写や、むくれて歌った様子がむしろ曲にマッチし、大きくヒット。その後の方向性を決定づけた。
アイドルからアーティストへ
33票で3位に入ったのは『スローモーション』。「デビューの初々しさ」(64歳・北海道・男性)、「最初に明菜を意識して聴き始めた曲」(64歳・北海道・男性)、「歌詞が切なくて、とても共感できるから」(57歳・宮城県・女性)。来生えつこ・たかお姉弟による作詞・作曲の、繊細な少女路線のバラード。「この曲を歌う明菜さんを見て将来この子は売れると思い、すぐにレコードを買った思い出があります」(67歳・兵庫県・男性)など、デビュー当初から存在感や歌唱力で日本中に衝撃を与えた。

2位は14枚目のシングル『DESIRE―情熱―』。41票を獲得。「盛り上がる」(82歳・東京都・女性)、「元気が出る」(66歳・大阪府・男性)、「“ゲラッゲラッゲラバーニハー”というキメのフレーズがカッコよくてテンションが上がる」(46歳・神奈川県・男性)など、ノリのいい楽曲の良さを絶賛する声であふれた。サビの最後に“明菜ビブラート”と呼ばれるロングトーンを堪能できるのもこの曲の魅力のひとつ。本人がプロデュースしたという黒髪のぱっつんボブに、アレンジした着物を合わせた衣装も斬新で、「カッコいい」と大きな話題を呼んだ。
1位は43票を集めた『飾りじゃないのよ涙は』。井上陽水が提供した楽曲で、10枚目のシングルとして発売。売り上げ枚数は『セカンド・ラブ』、『ミ・アモーレ』に次いで3位だが、「歌詞、リズム、テンポどれも好き」(73歳・静岡県・男性)、「ただ単にうまい歌ではなく、中森明菜を中心にそこに物語がある」(78歳・群馬県・男性)、「歌だけではなく衣装、ダンス、かけ声も記憶に残っている。出だしの低音が心地いい」(48歳・秋田県・女性)など、アツい支持を受けた。アイドルからアーティストへの、転機となったといわれる一曲。
圧倒的な歌唱力と幅の広い表現力で、いま聴いても、まったく色あせることのない名曲ぞろいの明菜。活動を再開したばかりだが、この先も唯一無二の歌声で末永く歌い続けてほしい。
取材・文/天野 仲