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夏場に『冷蔵庫に入れておけば安心』と、過信してしまうのは危険です

 そう話すのは家電メーカー電響社広報担当の阪下千恵さん。料理研究家や整理収納アドバイザーとしても活躍している。

使用頻度が高まる夏の冷蔵庫

暑いので冷たいお茶を取り出す回数が増えたり、アイスなど冷やす食材も増えますので、おのずと開閉回数は増えてしまいます。

 冷蔵庫の扉は開閉するたびに庫外と接触します。そうなると、夏は気温が高いぶん、冷蔵庫内の温度も高くなりがち。開閉の回数は極力少なくすることと、開けている時間を少なくするよう心がけることが大切になってくるんです

 できるだけ出し入れを少なくする工夫をしてみてほしいと阪下さん。

「まずは庫内をなるべくスッキリさせることがポイントです。冷蔵庫は開けた瞬間に何がどこにあるかが見渡せる状態がベストです」

開閉時間を少なくする冷蔵庫内の食品の置き方

 具体的にはどのような工夫をすればよいのか。

わが家の冷蔵庫は常に真ん中の段を空けてあります。すぐに置ける場所がないと、スペースをつくるための整理に時間がかかってしまう。調理中にちょっと冷やしたいとか、保存したい作りおきの料理などを置くスペースにしているんです」

 そして、よく使うものは密封できる保存容器などにまとめて入れておくことも時短になる。

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「100円ショップなどの収納グッズを利用して、取り出しやすく工夫するとよいでしょう。よく使うものは散らかりがちなので、なるべく容器に入れています。

 例えば、私はハムやスライスチーズを朝食でよく使うのですが、冷えやすいアルミ製の保存容器に入れて真ん中に置いています。ジャムやバターといったものも“朝食セット”として容器にまとめて入れておけば、朝に必要なものがいっぺんに取れるので、開閉回数が減らせます

 しまう場所を決めておくことで「どこに置いたっけ?」と冷蔵庫内を眺める時間も長くならずに済む。そして、その置く場所にもコツがある。

みそや卵など使用頻度が高いものも容器に入れてセンターの取り出しやすい場所に保存しています。お土産でいただいたものなどもわかりやすい目先の位置に置くとよいでしょう。奥に置いてしまうと無駄になりがちなので、“すぐ食べるように”と意識するためです。また、小柄な方だと冷蔵庫の上の棚って手が届きにくいですよね。

 そういったところに生ものや漬物など賞味期限が短いものを置いてしまうと、うっかり放置して無駄になってしまいがちです。上の棚には買い置きしたバターなど、ストック食材を置く場所にするといいでしょう

 夏は食材が傷みやすいので、早めに食べきることが大事なポイント。

「早く食べないといけないものも、手前のわかりやすい場所に。買い物をする前にまず賞味期限チェックをするという習慣づけを意識するといいと思います」

冷蔵庫で衛生的に保つために

 意外ときちんと食品を密封しないで入れている人が多いという。

例えばハムのパックを開けて、ちょっとペロッと剥がれている状態でそのまま冷蔵庫に入れたりなどしていないでしょうか。

 食べかけのパンを密封せずにビニールを折りたたんで入れたり、野菜もそのまま入れたりという方もいます。これも傷みやすくなってしまう原因のひとつです。必ず密封状態を守って保存するようにしましょう

 空気に触れないように、できるだけ容器に入れることを心がけたい。

 そして、夏は冷蔵庫に入れる前からいつも以上に食材の鮮度を意識したい。

「買ったものをすぐに冷蔵庫に入れれば大丈夫というわけではありません。例えば、お肉とかお魚を持ち帰ったときに生ぬるくなってしまったり、とけかかった冷凍食品を再冷凍する場合、雑菌が繁殖してしまった状態のまま冷蔵や冷凍保存してしまう危険があります。

 できれば、エコバッグに保冷剤を入れて、お買い物した後も、しっかり冷えた状態で持って帰ってきて、できるだけ早く冷蔵庫に入れようと意識することも大事です。

 スーパーで購入したお肉やお魚を冷蔵庫に入れる際に、パックの隙間やラップの破れた箇所などからちょっと汁が漏れていたりすると、冷蔵庫内が汚れ、腐敗の原因になったりもします。食中毒のおそれもあるかもしれません」

夏の冷蔵庫の賢い使い方

 買ってきた食材のチェックも忘れずに。夏は新鮮な食材に関して、3日をめどに使いきるよう購入するといいと阪下さんは話す。

豆腐などの加工品は食べきれる量。お肉やお魚はチルド室に入る分だけ購入するよう心がけています。どうしても保存したい場合は冷凍庫にしまうようにしています。できれば冷蔵庫内に空のスペースを余裕分として確保するといいですね

 野菜もできるだけ、清潔な状態で保存するようにしたい。

「野菜室も100円ショップの収納グッズで大きさごとに分けると取り出しやすくなります。私は上段を浅めの収納トレーでいくつかに区切り、小さい野菜や使いかけの野菜などを種類ごとに分別しています。

 また下の段に大きめの野菜を入れています。野菜も土がついたままだと野菜室に雑菌が繁殖してしまうかもしれないので、できれば冷蔵庫に入れる前に洗ってからしまうと安心です」

節電にもつながる冷凍庫の収納法

 冷凍庫はそれぞれの冷凍品が保冷剤の役割を果たすので、ある程度量が入っているほうが冷気を保つことができて効率はいい。

冷凍に関しては、7割程度詰まっていたほうが節電になります。ただし、冷蔵も冷凍も庫内に冷気が回ることで冷やしているので、冷気の穴をふさいでしまっている状態だとしっかり冷えなくなってしまったり、冷やすために余計な電力を消費しているという可能性もあります

 詰めすぎてしまうと、開閉時間も長くしてしまう。

「あまりに冷凍庫にいっぱい入れてしまうと、どこに何が入っているかわからないとか、積み重なってしまって、いつの食材かわからず傷んでしまうなど、食材管理が行き届かなくなりがちです」

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 そして、冷凍食材の収納はなるべく縦置きで保管できるように心がけるとよいそう。

「どこに何があるのかがわかりやすく、使い忘れるという無駄がなくなるのでおすすめです。また、使いかけの冷凍食品など、開封したまましまうと鮮度が落ちておいしくなくなってしまいますので、保存袋に必ず入れ替えましょう」

 100円ショップの収納グッズでカテゴリごとに分別できるようレイアウトすると便利だという。

「ここは冷凍ご飯のみ、ここは冷凍食品、ここはお肉など、なんとなく保管場所を分けておくと使いやすいです。ただし、あまり丁寧に分類しすぎると、続かなくなってしまうので、自分ができる範囲でゆるく分けるのがコツです。とにかく夏は雑菌が繁殖しやすい季節なので、掃除が楽にできるよう、ぜひ冷蔵庫の整理に挑戦してみてください」

冷蔵庫の掃除やメンテナンスで節約

 長く使っている冷蔵庫ほど、こまめに掃除することを心がけてほしいという阪下さん。

最近は機能も充実していますし、高性能な冷蔵庫が多いので、あまりないかもしれませんが、10年以上同じ冷蔵庫を使っているご家庭だと冷凍に霜が回ってきてしまい冷気がうまく回らなくなっている可能性があります。まずは週に1回程度、定期的な霜取りを心がけてください。

 また冷蔵庫の扉にあるパッキンが緩んできていたりすると、どうしても隙間が空いてしまい庫内の温度が上がってしまうトラブルにつながります。劣化を防ぐためにも定期的にメンテナンスしてください

 今の時季、お手入れという点では、見落としがちなのが製氷室だ。

「夏場はほかの季節より使う頻度が増える場所ですが、長く使ってない場合、汚れている可能性があります。各メーカーの取り扱い説明書にお掃除方法が載ってます。実は使えない洗剤やNGのお手入れ法などあるかもしれませんので、必ず説明書を確認してから、掃除していただいたほうがいいかなと思います」

 どうしても臭いがとれない、冷蔵や冷凍性能が下がっているなど、気になる点が増えた場合は思い切った買い替えをおすすめする。

実は電気代節約の効果的な方法の一つは、古い冷蔵庫を最新の省エネモデルに買い替えることです。技術の進歩により、最新の冷蔵庫は効率的に冷却し保冷能力を維持する一方、消費電力を大幅に削減するなどかなり性能が上がっています。その分高価になってはいますが、長い目で見れば電気代は節約できると思います

 冷蔵庫を正しく使用することは、節約にもつながる。経済産業省資源エネルギー庁によれば、家にある家電の1日の消費電力割合として、エアコンに次いで大きいのが冷蔵庫だ。

 特に夏は17.8%、冬では14.9%と消費電力量も大きくなりやすい。猛暑が予想されるこの夏、冷蔵庫の冷気をなるべく外に出さない工夫が電気代の節約につながるという。

 そして、節電意識や食中毒予防を家族みんなの共通認識としたい。

「すべてを丁寧に頑張ろうとすると疲れてしまいますが、健康を考えれば、少なくとも衛生管理はしっかりしたいところ。ふだん当たり前のように使っている冷蔵庫ですがこの夏は賢い使い方を心がけたいですね」

阪下千恵さん●料理研究家・家事研究家・栄養士。現在は家電や日用品を取り扱うデンキョーグループホールディングスグループ事業統括本部広報戦略部に所属する。レシピ開発は15年以上の実績があり、企業レシピ開発から雑誌やテレビなどでも活躍。著書は25冊以上。

教えてくれたのは……阪下千恵さん●料理研究家・家事研究家・栄養士。現在は家電や日用品を取り扱うデンキョーグループホールディングス グループ事業統括本部 広報戦略部に所属する。レシピ開発は15年以上の実績があり、企業レシピ開発から雑誌やテレビなどでも活躍。著書は25冊以上。


取材・文/諸橋久美子