「ロスになった」朝ドラ俳優ランキングTOP5

 男性陣の“退場”が続く朝ドラ『あんぱん』。序盤に結太郎(加瀬亮)、寛(竹野内豊)が亡くなり、豪(細田佳央太)や千尋(中沢元紀)の戦死、さらに次郎(中島歩)や釜じい(吉田鋼太郎)までも……。

 ロスが止まらないが、これまでも劇中で亡くなり視聴者を涙させた男性キャラは多い。そこで、'10年以降の朝ドラでロスになった男性俳優を30代~60代女性500人にアンケート(『あんぱん』は除く)。みんながロスったのは誰?

国宝級イケメン俳優がランクイン

吉沢亮

 5位は'19年の『なつぞら』で山田天陽を演じた吉沢亮が24票獲得。主人公・なつ(広瀬すず)に好意を寄せるが実らず、36歳で病死。ジャガイモ畑で倒れ、「北海道の地で透き通るように死んでしまった」(北海道・64歳)という最期に涙した人多数。また「才能があるのに貧しさのため生かせず、妻子との生活すら病気で奪われてしまうという儚い生涯に胸を打たれた」(東京都・55歳)と嘆く声が。

「ロスが発生するのは夫か、主人公の背中を押しつつ好意はあるけど身を引くイケメン、またはお父さんや息子。吉沢さんは身を引くパターンですね」

 と分析するのは、漫画家でテレビウォッチャーのカトリーヌあやこさん。

「そして吉沢さんといえば、やはり顔の美しさ。翌々年の大河ドラマ『青天を衝け』で主演されますが、『なつぞら』の時点で決まっていたと思うので、NHKも“この美しい顔をまずお披露目”という感じがあったのでは。朝ドラに出ると日本中に顔を覚えられますからね」(カトリーヌさん、以下同)

松村北斗

 続いては33票の同票で3位が2人。'21年の『カムカムエヴリバディ』で雉真稔を演じた松村北斗と、'24年の『虎に翼』で花岡悟を演じた岩田剛典が入った。

 ヒロイン・安子(上白石萌音)の夫で太平洋戦争によって戦死してしまう稔。「学生服がとても似合っていて、当時の学生の雰囲気をよく醸し出していた」(広島県・63歳)という感想や、「安子との幸せな時間が短すぎた」(大阪府・53歳)と、早すぎる退場を悲しむ声などが寄せられた。

「家柄の差でなかなか結婚できず、ようやく一緒になれたと思ったら亡くなってしまって。もっと見たいのに……という気持ちから、ロスは生まれるのかもしれませんね」

 また、カトリーヌさんが印象深いと語るのは、海軍の軍服姿。

「白い軍服で、迫力というか破壊力がすごかったです(笑)」

 後半では娘のるい(深津絵里)の前に幻として再登場。

「ロスになる人はだいたい再登場しますよね。このときも白い軍服姿で、“どこの国とも自由に行き来できる。るい、おまえはそんな世界を生きとるよ”という言葉も印象的でした」

会場をあとにする岩田剛典

『虎に翼』の花岡は、ヒロイン・寅子の初恋の人。終戦後、食糧管理法に関する事案を担当し、法律違反の闇物資を食べることを拒否。栄養失調で亡くなってしまう。これは当時、法を順守して餓死してしまう裁判官がいたという史実に基づいている。「亡くなった理由がかわいそう」(京都府・65歳)、「ハッピーなエンディングを想像していたから急な展開に戸惑った」(東京都・58歳)と、衝撃的な退場だった。

「実際にそういう方がいらしたということにも驚きました。まじめすぎる不器用さが非常に印象的な役柄でしたね」

 花岡もまた、寅子を思って身を引く役どころ。

「最初は“女は優しくするとつけ上がる”なんて言って、トラちゃん(寅子)がカチーンとくる相手だったんですけど、和解してデートもしたりして。でも自分は故郷に帰らなきゃいけないし、結婚相手は専業主婦じゃなきゃダメな家だったから、身を引く。これもまた、ロスが生まれやすいパターンでした」

出征シーンが記憶に残った視聴者が多数

仲野太賀

 続いても『虎に翼』から。寅子の夫、佐田優三を演じた仲野太賀が39票で2位に。寅子の家の書生で、社会的信用を得るための結婚を画策する寅子にプロポーズし、結婚。娘が生まれるも出征し、戦病死した。

「トラちゃんとの別れのシーンでの変顔が忘れられない。いつもトラちゃんを温かい愛で包んでいて大好きでした」(神奈川県・53歳)、「仲野太賀にピッタリな役だった。出演期間は短かったがインパクトが強かった」(神奈川県・60歳)と、たたえる声多し。

「『虎に翼』は本当に脚本が素晴らしい。出征シーンの変顔も、それまでに、あがり症の優三さんをトラちゃんが変顔で笑わせるエピソードが積み重ねられていたので、すごく悲しかった。

 優三さんを亡くして落ちこんだトラちゃんは、闇市で焼き鳥を手にします。その包み紙の新聞に“すべての国民は法の下に平等”という日本国憲法の条文があり、法律の世界に戻る決心をするんです。この新聞紙を握りしめるトラちゃんが第1話の冒頭に登場するという、伏線にも驚きました」

社会現象を巻き起こし、○○ロスの立役者

ディーン・フジオカ

 そして1位は、やはりこの人。『あさが来た』('15年)で五代友厚を演じたディーン・フジオカが64票を獲得した。“五代ロス”の言葉も生まれ、社会現象を巻き起こした五代様。主人公・あさ(波瑠)の背中を押し応援するも、病に倒れ亡くなってしまう。それまで日本のドラマにあまり出ていなかったディーンは、「初めての出演シーンで、あまりのカッコよさに衝撃を受けた」(神奈川県・61歳)、「こんな素敵な俳優さん、今までどこに隠れてたんだ!と驚いた」(千葉県・61歳)と、日本中を一瞬で虜にした。

「“NHKさん、こんなイケメンを見つけてきてくれてありがとう”と思うような素晴らしい配役でした。『あさが来た』は町人の物語ですが、五代さんは武家出身なので、異色の人をキャスティングしたかったそうなんです。 

 そこで抜擢されたのがディーンさんで。五代さんもディーンさんもグローバルな方なので近い雰囲気がありますし、英語の発音が素晴らしかったのも素敵でした」

 ディーンは'21年の大河『青天を衝け』で再び五代を演じている。

「脚本が同じ大森美香さんなんです。朝ドラと大河で同じ役をやるなんて、すごいですよね。それくらい私たちも五代様=おディーン様、と刷り込まれてしまった(笑)」

 五代もあさに好意を寄せ、背中を押しつつも思いは封印。

「一回だけ、親友の大久保利通が暗殺されたとき悲嘆に暮れて、あさを抱きしめるシーンがあって。朝からドキドキでした。また、顔もカッコよすぎましたけど、英語まじりのセリフや唐突に現れて去っていく謎っぷりなど、魅力にあふれたキャラ。朝ドラにロスを生み出した男だと思います」

 6位以下でカトリーヌさんが注目するのは8位の森山直太朗。『エール』('20年)の主人公・裕一の恩師、藤堂清晴役で、インパール作戦の最中に慰問に来た裕一と再会するが敵襲を受け、裕一の腕の中で息を引き取るという人物だ。

「先ほど挙げたロスになるパターンとは少し違うんですが、彼もまた主人公の背中を押してくれた存在。戦場のシーンがすごくリアルでしたが、これはコロナ禍で撮影休止になってしまったときに、しっかりリアルに描こうと脚本から書き直したそうなんです。視聴者に衝撃を与えて、鮮明に記憶に残る最期だったと思います」

 また、「ロスが生まれる朝ドラはいい朝ドラなのでは」とカトリーヌさん。

「主人公以外の登場人物も、視聴者に愛されインパクトを残したということですから。特にベスト5に2人入った『虎に翼』は登場人物全員のキャラが立っていました」

『あんぱん』もすでにロスキャラ多数。つらいからもう誰も退場しないでと思いつつ、この先どんな感動場面を見せてくれるのか。最後まで目が離せない!

カトリーヌあやこ 漫画家&テレビウォッチャー。著書にフィギュアスケートルポ漫画『フィギュアおばかさん』(新書館)など

<取材・文/今井ひとみ>