
「しっかり活躍することが阪神への恩返しになると思いますし、手を差し伸べてくれたスワローズへの恩返しにもなると思います」
7月31日、フィラデルフィア・フィリーズ傘下の2Aを自由契約になった、青柳晃洋投手(31)が東京ヤクルトスワローズ入団会見に出席した。
阪神タイガースからポスティングシステムを利用して、マイナー契約ながらメジャーリーグに挑戦した青柳だが、夢の舞台に立つこともできず、シーズン開幕からわずか約4か月と“最短記録”での帰国、NPB(日本野球機構)復帰となった。
2021年、22年に最多勝を獲得した実績ある右腕が、移籍先として選んだのは9年間プレーした“古巣”阪神ではなく、同じセ・リーグ球団で最下位に沈むヤクルト。今後は敵として阪神戦、また阪神ファンが待ち受ける甲子園球場で登板する機会もあるだろう。
かつて、北海道日本ハムファイターズからポスティングを容認されてメジャー移籍し、帰国後に福岡ソフトバンクホークスに入団した有原航平投手(32)、上沢直之投手(31)と同様に古巣からブーイングを浴びることも覚悟の上か。
“恩を仇で返す”ような有原・上沢の移籍
選手の移籍事情に詳しい野球ライターは、「現状ルールではなんら問題ないことも問題と言える」と苦言を呈す。
「FA資格を持たずしてのメジャー挑戦を認めてもらいながらも、古巣に“恩を仇で返す”ような移籍劇にネットでは“有原式FA”、“上沢式FA”と揶揄され、批判に晒された2人。それぞれ2シーズン、1シーズンをプレーしましたが、青柳はそれ以下の“最短記録”になるだけに、ルールの“抜け穴”の見直しを求める声が強まっています」
ところが不思議なことに、今回も「青柳式FA」とは嘲笑されども、有原や上沢ほどに批判に晒されているわけではない。それどころか《青柳ヤクルト決定かw んーまーがんばれ!》と、敵軍になる元エースを応援する阪神ファンも見受けられる。

なぜ、「青柳式FA」は受け入れられたのか。先の野球ライターによると、
「有原や上沢は退団時に球団やファンから背中を押され、また彼らも感謝のメッセージを寄せるなど必要以上に“ファイターズ愛”をアピールしていた節があります。
特に上沢は帰国後も、日ハム関連施設でトレーニングを使わせてもらい、元同僚の鍵谷陽平(34)の引退セレモニーにも駆けつけた。ファンは当然、再びファイターズのユニフォームを着るものと期待していました」
阪神から獲得オファーはあったのか
実際、日ハムはNPB復帰の意思を示した2人に獲得オファーを出している。しかし、ともに選んだのはソフトバンクで、有原は3年総額12億円、上沢は4年10億円規模(いずれも推定)とされる大型契約を結んでの移籍だった。
「片や青柳ですが、阪神からのオファーはなかった。2位の巨人に11ゲーム差(7月31日時点)をつける独走状態のタイガースだけに、かつてのエースとはいえども万全の投手陣に入る隙はなく、さらに支配下枠の70人も埋まってしまった。
仮に首位争いをしている、また下位に甘んじていた上で阪神のオファーを断っていたら、“青柳、なんでや!”との声も上がったと思います。が、優勝に向けてチームが万事うまくいっている現状、ファンもやさしくなっていると見えます」(前出・ライター、以下同)
また青柳の“気質”も、批判をさせない一因になっているとも。有原と上沢のソフトバンク移籍が決定後、SNSやネット上では批判を超えた、誹謗中傷ともとれる心無い言葉も向けられた。しかし、それを許さないのが“青柳流”だ。

訴えられてからグダグダ言うな
2年連続の最多勝で大幅昇給を勝ち取った翌年の2023年、思うような投球ができず苦しいシーズンを送った青柳。彼のSNSには批判だけでなく、侮辱するような誹謗中傷ともとれるコメントも寄せられる。すると、
《どんな気持ちで書いたか知らんけど、普通に気分悪いんでやめてください》
《メッセージを送るのは自由ですけど訴えられてからグダグダ言わないで下さいね。アカウント消しても意味ないので》
「青柳は自分自身の不甲斐ない投球に関してはファンに謝罪するも、度を超えた誹謗中傷コメントと当該ユーザーのスクリーンショットを公開。法的措置を示唆する投稿をして反撃に出たのです。
ネットに蔓延る悪質なアンチや“愉快犯”に対して、効果的なのが毅然とした態度と対応。この青柳の“物言う気質”こそ、有原や上沢が投じなかった、ネットを黙らせている見事な“牽制球”なのでは」
“恩を仇で返す”のではなく“恩返し”になるのか、青柳の投球に注目が集まる。