石破茂首相

 7月に行われた参院選で自民・公明両党は50議席を下回り、全体で過半数を割る形に。石破おろしの動きも盛んだが、日本が抱える5つの課題は少数与党でどうなる? 専門家がシミュレーション!

どのような方向に日本を舵取りしていくのか

 参議院議員選挙で自民・公明両党は有権者から明確にNOを突きつけられた。結果は自公で過半数割れの47議席。自民党単独では39議席で、'07年の第1次安倍晋三政権下での37議席に次ぐ歴史的大敗といえよう。

 自民党は戦犯を石破茂首相(68)ただ一人に押しつけ、退陣要求をしているが─。

「石破首相が戦後80年談話を発表したいから首相の座にしがみついている、などといわれていますが、今大事なのはそんなことではない。石破さんにしろ、あるいは高市早苗さんが首相になるにしろ、自公が少数与党となった今、政治はどうなるのか。国民の暮らしに関わる問題はどうなるのか。

 日本人ファーストを掲げた参政党が躍進する一方で、野党第1党の立憲民主党は外国人に対して迎合的ともいえる態度。このままいくと日本は外国人に乗っ取られてしまうのか、と心配している有権者は多い。また、自公は国民民主党と手を組むという声もあり、いったいどのような方向に日本を舵取りしていくのか」(ジャーナリストの千葉春子さん)

 不安に思う有権者は多い。そこで参院選でも争点となった、私たちの暮らしに関わる5つの問題を専門家にシミュレーションしてもらうと─。

 米国との相互関税が15%で合意に至り、石破首相が見直されたばかり。だが、全国紙政治部デスクは、

自公が衆議院、参議院ともに過半数割れしたことで、部分連合(各政党と個別に協議、連携する)で政策を実現する必要が出てきます。これは日米関係にも影響し、トランプ大統領と安倍晋三元首相時代のようなトップダウンによる政策決定も難しくなるでしょう。

 特に石破茂政権では、一度は決まったかに見えた関税交渉についても合意文書がなく“口約束だ”など野党の批判が集中しています。野田佳彦立憲民主党代表や、連立与党入りが噂される玉木雄一郎国民民主党代表も疑問を呈しており、逆に日本が米国に対し、関税交渉の見直しを提案する可能性も考えられます。

 そうなれば当然、米国との関係は悪化し、自動車関税が再び25%に引き上げられるなど、経済の混乱は避けられません

 口約束ではないことを祈るばかり! 

 “令和の米騒動”が勃発してから1年近くがたつが、いまだに解決には至っていない。

財務省も野党や国民の声に従わざるを得なくなる

「備蓄米の放出などで話題になった小泉進次郎農林水産大臣のコメ対策は、実際には石破政権の要で農林族議員のトップである森山裕幹事長が決めたものだといわれています。

 森山氏が農水省や農協(JA)に根回ししたことで各方面からの反発を抑えることができましたが、参院選惨敗で自民党内に『石破おろし』の声が高まり、森山氏も幹事長辞任を余儀なくされています。そうなれば今後の政府のコメ価格対策は、関係団体などの反発で難航する可能性があります。

 私たちのコメの購入価格は農家の出荷価格の約2倍といわれています。野党は流通の透明化などを訴えており、少数与党下ではこうした声を聞かざるを得なくなります。野党との調整に時間を割かれ、政府のコメ価格対策はさらに遅れると考えられます」(前出・全国紙政治部デスク、以下同)

農業関係者から総スカンを食らっているという小泉進次郎農水相

 石破首相が国民1人当たり2万円のバラマキを反故にしたばかりだが─。

「今回の参院選の争点の一つは、物価高騰への対策でした。野党が消費税減税を訴えて支持を増やすなか、自民党は頑なに減税を否定し、国民1人当たり2万円の現金給付を公約に掲げたものの有権者の支持を得ることはできませんでした。

 この背景には、石破政権を支える財務省が消費税減税阻止に動いていたことがあり、玉木氏が訴えた『所得税103万円の壁』も、財源を理由に財務省の強い反対があったといわれています。ですが今後、国民民主党が連立与党入りし、玉木氏の発言力が強まれば、財務省も野党や国民の声に従わざるを得なくなるでしょう。

 実際、森山氏は参院選直前に国民民主の榛葉賀津也幹事長に接触し、連立与党入りの条件として年収の壁引き上げを打診したといいます。その意味で、少数与党では物価対策が進みやすいといえます。ちなみに高市早苗氏が首相になったら減税すると公言しています」

 日本で暮らす外国人をめぐる問題が大きな関心を呼んでいるが、

「参政党などの野党が保守を謳い、参院選で大きく躍進したことで政府も外国人対策の見直しを余儀なくされるでしょう。いま埼玉県川口市で一部クルド人住民による行動が治安悪化を招いていますが、小野寺五典自民党政調会長らが5月に現地を視察、対策を強化すると明言しています。

 また事故が相次いだことで、『基準が甘すぎる』と批判された外免切替(外国で取得した運転免許証を日本のものに切り替える制度)の試験も50問中45問正解を合格基準にするなど厳しくする方針で、参院選前には不法就労が認められた外国人を強制退去させる様子をメディアに報じさせました。

 このように政府も対策強化をアピールしましたが、参院選では支持を得られず惨敗。そのため、今後はより国民に伝わりやすい対策が取られると考えられます」

愛子天皇の可能性は「見送りになりそう」

 秋篠宮ご夫妻の長女・子さんが小室圭さんと結婚してからというもの、秋篠宮家に対して批判的な国民の声も伝えられる。一方で、以前から囁かれていた“愛子さま天皇論”は無視できないほどの大きな声になっている。

天皇、皇后両陛下のもとで育った愛子さまこそ天皇にふさわしい、との声も

結論から言うと現在、結論を出せる政治家はいないでしょう。'05年、当時の小泉純一郎内閣は女性天皇を認める方向で皇室典範の改正を目指し、議論を重ねていました。ところが紀子さまの第3子ご懐妊が明らかになり、政界の空気は一変。

 以降、皇位継承問題の解決は頓挫してしまったのです。小泉さんくらい強いリーダーシップを持って進めていける政治家が現れない限り、無理と言わざるを得ない」

 世論調査などでも愛子天皇待望論は、高まるばかり。今こそ国民に寄り添い、その声をすくい上げる強いリーダーが求められる。これらの問題に真摯に取り組む政党が現れたら、過半数の票を得られるのに─。