日本時間2025年7月9日、第31号ホームランを放った大谷翔平(共同通信)

 投手復帰3試合目となった日本時間6月29日のレッズ戦。大谷がメジャーリーグでの自己最速を記録した。

投手・大谷が164キロを記録

「ランナーを一塁と二塁に背負ったピンチの場面で相手の4番打者に投じた球が101・7マイル(約164キロ)を計測しました。大谷選手は試合後に“打たれたくない気持ちが先行して、自然と球速が上がってしまっている”と振り返っていました」(スポーツ紙記者)

 右ひじの手術から復帰して間もないにもかかわらず、球速が上がっているのはなぜか。メジャーリーグ研究家の友成那智さんに聞いた。

「ひじの靭帯の再建手術を受けた投手のうち、2割ほどは球速が上がるといわれています。それはリハビリで体幹などを鍛えられることが要因。大谷選手は投球フォームも見直して、手術前より進化しています」

 ドジャースとしても連覇のためには投手・大谷の復活が欠かせないようだ。

「ドジャースの先発投手陣は、ケガや調子の上がらない選手も多いです。ワールドシリーズ制覇に向けたプレーオフを勝ち上がるためには、大谷選手に頼らなくてはいけない状況。投手としても打者としても“大谷依存”が強まる年になりそうです」(友成さん)

 7月2日のホワイトソックス戦で30号ホームランを放った大谷。これで5年連続30本塁打以上を記録。前半戦での達成は、史上4人目の偉業でもあった。

「大谷選手が前半戦で30本塁打に到達したのは、'21年と'23年に次いで3度目。この記録を達成したのはマーク・マグワイア、ケン・グリフィーJr.、アーロン・ジャッジのみで、大谷選手が4人目です」(前出・スポーツ紙記者、以下同)

5試合連続アーチ

大谷翔平(写真/週刊女性写真班)

 7月24日のツインズ戦で38号ホームラン。5試合続けての本塁打だった。

「5戦連続アーチは日本人メジャーリーガー初。ドジャースでも球団タイ記録で、7人目です。5試合連発のすべてが、一般的に大谷選手のような左打者には打球が伸びにくいといわれている、センターからレフト方向への打球。いかに大谷選手のパワーがすごいかがわかります」

95年ぶりの記録

 7月29日のレッズ戦で、自身が塁に出てホームにかえってくる得点数が100に到達。

「大谷選手はこの試合が出場105試合目でした。ドジャースの選手として105試合で100得点以上を記録したのは'30年のベーブ・ハーマン以来、95年ぶり。7月中に100得点に達したのは'94年のフランク・トーマス以来31年ぶりでした」

 ここまで得点が伸びた理由について、友成さんはこう分析する。

「今シーズンの大谷選手は、ずっと1番打者として起用されていました。そのため、チャンスをつくるという1番打者の役割を果たすことを最優先に。それで得点数が伸びたのだと思います。メジャーリーグでも得点数が多いことは高く評価されています」

 メジャーリーグの公式グッズなどを販売する「ファナティクス」は、2月18日に大谷のサイン入りグッズを発売。

「価格の安いものでも'24年のワールドシリーズ出場を記念したパネルとサインボールで2万9999ドル(約450万円)でした。ほかにもサイン入りバットなどが販売されましたが、最高額は'24年6月1日のカージナルス戦で大谷選手が実際に着用したユニフォーム。そこにサインと“24 NL MVP”と記されており、価格は24万9999ドル(約3800万円)でした」(在米ジャーナリスト、以下同)

 6月17日のパドレス戦で投手復帰を果たした大谷。その前日に球団公式SNSで登板が伝えられると、投手・大谷をひと目見ようとファンがチケット販売サイトに殺到した。

「カリフォルニア州の地元テレビ局『FOX 11 Los Angeles』によると、その試合のチケットの最安値は64ドル(約9200円)でしたが、大谷選手の投手復帰が予告されると150ドル(約2万1600円)まで高騰したそう。大谷選手がマウンドに立つのはエンゼルス時代の'23年8月23日以来、約1年10か月ぶり。ドジャースでは初だったため、平日にもかかわらず、多くのファンがチケットを求めたのでしょう」

日本人選手では史上3人目の偉業

オークションに出品された大谷の50号記念ボール(『Goldin』HPより)

 6月25日のロッキーズ戦で日米通算300号本塁打に到達。日本人選手では史上3人目の偉業だった。

「敵地のコロラド州で節目に到達。記念球をキャッチしたのは同州の大学でソフトボール部に所属している大学生でした。そのボールがオークションに出品され、7月28日から入札が開始。金額は2万5000ドル(約370万円)スタートとなっています」

 3月18日と19日に東京ドームで行われた、カブスとの開幕シリーズを戦ったドジャース。“ドジャースの大谷”としての凱旋帰国で大きな盛り上がりを見せた。

「日本国内はもちろん、海外からも多くのファンが東京ドームに集まりました。TBS系の情報番組『ひるおび』で紹介された関西大学の宮本勝浩名誉教授のコメントによると、チケットやグッズの売り上げ、世界から集まったファンの交通費や宿泊費などを合わせて経済効果は40億円に上ったようです」(前出・スポーツ紙記者、以下同)

 '20年5月29日にインスタグラムを開設した大谷。最近では愛犬のデコピンの写真や動画を投稿することも多い。

「大谷選手のインスタグラムのフォロワーは8月1日時点で約977万人です。日本人のスポーツ選手では断トツの1位で、日本人全体では7位。ちなみに1位は『TWICE』のモモで約1518万人です」

 テレビや街中の広告で見ない日はない大谷。化粧品メーカーの「コーセー」やイベントの際に着用している「HUGO BOSS」、グローブやスパイクなどの「ニューバランス」など、数々の企業とスポンサー契約を結んでいる。

「開幕シリーズのために来日したドジャースの選手たちが、大谷選手を起用した広告の多さに驚いていました。大谷選手個人と契約を結んでいるのは22社ほど。それ以外にも“大谷効果”を狙ってドジャー・スタジアムに広告を出稿する企業も増えています」

並外れた“副収入”

 並外れた“副収入”を手にしている大谷。

「アメリカのスポーツ経済メディア『Sportico』は3月、大谷選手は今年、スポンサー料などの副収入がメジャーリーグトップの1億ドル(約150億円)になる見込みだと発表しました。2位のブライス・ハーパー選手は1000万ドル(約15億円)。10倍の差がついています」

 日米の企業から大人気の大谷は契約料もケタ外れ。

「年間の契約料は年々高騰し、現在は10億円ともいわれています。しかも、CMの撮影時間は2時間以内と決められ、その時間内にポスターやホームページなどで公開するインタビュー動画なども撮らないといけないそう。現場のスタッフはかなり大変なようですよ」(広告代理店関係者)

 '24年4月、大谷がハワイに25億円の別荘を購入したと現地メディアによって報じられた。

「大谷選手が購入したのは、ハワイ島マウナケアにある別荘地。1月には真美子さんやデコピンと一緒に着工式に参加したそうです。そのときの大谷夫妻の様子が当初は販売会社のホームページに掲載されていたのですが、すでに削除されています。今夏に完成予定とされていましたが、工期が大幅に遅れているという情報もあります」(前出・在米ジャーナリスト)

 愛犬のデコピンが絵本の主人公になり、'26年2月に発売されることになった。アメリカの「ハーパー・コリンズ」社から出版され、アメリカや日本など8か国で販売される。

「絵本のタイトルは『DECOY SAVES OPENING DAY』。日本語に翻訳すると、デコピンが開幕戦を救う、という意味です。開幕戦の始球式を務めることになったデコピンが“幸運のボール”を家に置き忘れ、取りに行って時間までに戻ってこられるのか、というストーリー。価格は21・99ドル(約3270円)で、売り上げの一部は犬の保護活動を行っている団体に寄付されます」(前出・スポーツ紙記者、以下同)

妻のアクセサリー

 7月16日、オールスターゲーム直前に行われたレッドカーペットショーに大谷は2年連続で真美子さんと登場。手をつないで歩いた。真美子さんが公の場に姿を現すと、身に着けているものに注目が集まるが……。

「ピアスが特定されて話題になっていました。パールがついた大ぶりなピアスで、ロサンゼルスのジュエリーデザイナー、ダナ・ケリンさんが手がけたもののようです。日本では『ARTISAN』というセレクトショップで取り扱いをしており、6万9300円で販売されています」

 球界屈指のスターがそろうドジャースにも大きな影響を及ぼしている。

「3月にアメリカの大手経済誌『フォーブス』がメジャーリーグの資産価値ランキングを発表。ヤンキースが'98年の調査開始以来、不動の1位ですが、ドジャースはそれに次ぐ2位で68億ドル(約1兆200億円)。前年比25%増で、増加率でも2位。大谷選手の加入やワールドシリーズ制覇が影響したのでしょう」

 前例のない記録をいくつも打ち立てている大谷。二刀流復活となった今年も勢いは止まらない。

「6月23日のナショナルズ戦に“1番・投手兼DH”で出場。投手として1イニングを無安打無失点で2個の三振を奪うと、打者として三塁打とホームランを放ち、2安打5打点の活躍でした。MLB公式のサラ・ラングス記者によると、大谷選手が登板した試合でホームランと三塁打を少なくとも1本ずつ打ったのは2度目。過去125シーズンで、このような試合を複数回達成したのは大谷選手だけのようです」

二刀流だからこその史上初

 二刀流だから達成した史上初は、まだある。

「7月22日のツインズ戦に投手兼DHで出場した大谷選手。1回の表に投手としてマウンドに上がるもホームランを打たれました。ですが、その裏の攻撃で打席に立つと逆転の2ランホームラン。1回に本塁打を打たれてから自ら逆転本塁打を打つのは史上初のようです」

 打撃好調だった7月。相手チームの警戒度の高さが表れた試合があった。

「7月24日のツインズ戦。ドジャースが1点差で負けている9回2死の場面で大谷選手に打席が回ってきました。一塁にランナーがいましたが、相手の監督は大谷選手を申告敬遠。同点のランナーを進め、サヨナラにつながる可能性のあるランナーを出してでも大谷選手との勝負を避けました。その後、大谷選手が生還してドジャースのサヨナラ勝利。現地のデータ会社『オプタ・スタッツ』によると、敬遠が公式統計となった'55年以降、チームがあとアウト1つで敗北、二塁と三塁に走者がいない状況で敬遠され、その後に試合を決める得点を記録したのは大谷選手だけのようです

 この相手チームの判断を前出の友成さんはこう解説する。

「大谷選手の後ろを打つ打者の調子が悪かったので、相手の監督からしたら当然の作戦といえます。例年は好調だった6月に調子を落としましたが、ここまで全体で見れば、調子のいいときのペースでホームランを打っています」

 細かい数字やさまざまな状況での記録が報道されるメジャーリーグ。日本のプロ野球やその関連の報道ではあまり見ないが、メジャーリーグではなぜここまでデータが出てくるのか。

「記録に関してはメジャーリーグがしっかり管理しているので、細かいところまで残っています。アメリカではスポーツ賭博が多くの州で合法。賭ける人は競馬のように細かいデータまで見ています。

 また、ファンタジーベースボールという、実在の選手を一定のルール下でチーム編成し、実際の野球でのその選手の成績をポイント化して競うゲームが人気。アメリカではマニアのようなファンも多いのです。そのため、詳細なデータに需要があるのと、メジャーリーグもそういう試合を細部まで見てくれるファンを獲得しようとしているため、さまざまなデータが出てきます」(友成さん)

 シーズンも佳境に向かい、超人・大谷はこれからどんな数字を残すのか。