※写真はイメージです

今年の夏は例年を上回る猛暑で光熱費や生活費が上がる見込み。そしてなんといっても食費の高騰が止まらず、ふだんから節約を心がけている人でさえ、家計の大赤字を生みかねません

 そう注意を促すのはファイナンシャルプランナーの塚越菜々子さん。

猛暑、値上げ……すべてが家計を直撃!

 物価の高騰により、多くの人が“今夏は出費が増えそう”と感じているところだが、専門家の視点からも、今年の夏は“ヤバイ”というわけだ。

出典元:パーソルキャリア株式会社Job総研

帰省で家族が集まる機会が増えるなど、もともと夏は食費が上がる傾向にあります。加えて、暑さが厳しい今年の夏は、外出先でアイスやジュースなどを買う機会が増えるでしょうし、“暑さで自炊がおっくうになる”ということも容易に想像できます。

 夕食の用意ともなれば、1日の暑さ疲れも重なって“台所に立つのもつらい”という人は少なくないはず。いつもは節約を重視して自炊をしている人でも、割高なミールキットや冷凍食品など簡単に作れるものやお惣菜、外食やテイクアウト料理に頼りたくなりがちです。

 さらに、暑さで食材が傷みやすく、食品ロスが出やすくなることも出費を増やす要因になります」(塚越さん、以下同)

 では、魔の夏をどのように乗り切ればよいのか。食費の節約といえば、スーパーで安い食材を選ぶといったことを思い浮かべてしまうが、それは効果的ではないと塚越さんは断言する。

自炊のための消費行動にはあまりムダがありません。食材の購入に対しては、すでに多くの人が節約意識を持っているため、そこを頑張ってもあまり大きな効果は得られないといえます。むしろ、今以上に削る算段を立ててしまうと心理的負担が大きい。

 例えば、1丁100円の豆腐を50円のものにかえたり、国産の鶏肉を外国産の鶏肉にかえることで多少抑えることは可能かもしれませんが、それは“我慢”を強いることになります。豊かな気持ちで生活できず、節約が続かない原因になってしまうのです」

食材費以外の食費をしっかりと把握すべし!

 塚越さんが考える夏の食費削減の肝は、食材費以外の食費を見直すことだ。ポイントは次の3つ。

(1)“やっつけ外食”をやめる

 まずは、予定していない“場当たり的”な外食をやめること。

「例えば“お出かけしたら夕方になったので、このまま食べて帰ろう”となった経験はありませんか? でも、そうやって急に決めた“やっつけ外食”は、家計を切り詰めたいならムダな出費です」

 家族で外食すれば少なくとも数千円はかかるので、1回でもスルーできれば負担はグッと減る。お出かけ前に食事の準備をしておいたり、あらかじめ家での食事時間に間に合うような予定を立てるなど、調整することが大事だ。

予算と計画を組んで行く、ごほうび的外食は、日々の潤いになるのでお金を使う価値があります。一方で、なんとなく行った外食は結構なお金を使うわりに十分な満足度を得ることができません。

 かけたお金に対するリターンが低いのです。どうしても急な外食が防げないときは、なるべく安く済ませましょう」

(2)コンビニのついで買いをやめる

 とはいえ、外食を避けてコンビニを選ぶのは悪手。

「コンビニは気軽に利用できて便利ですが、家族分となると外食並みの出費になります。お惣菜やお弁当を買うならスーパーのほうが安いですし、コンビニは“ついで買い”を誘発させる動線に長けていますから、無駄な出費をしがちな場所だと認識しておく必要があります

 特に夏は避暑スポットとしてコンビニに寄りたくなる回数が増えるので注意を。

「冷えたドリンクを買いに行ったはずが、一緒に新作のお菓子やデザートを買ってしまった人も多いのでは。水分補給は大切なので、買うこと自体を我慢してはいけませんが“ドリンクだけ買うぞ”という腹積もりで入店を。その心構えだけでちょっとした浪費が防げます」

 また、コンビニの立ち寄りは常習化しがち。

つい寄りたくなって、意図せず“ちり積も”出費をするという恐ろしいルーティンに陥りやすいと心得ましょう

(3)嗜好品のムダ買いをやめる

 コンビニでの購入に限らず、お菓子やジュース、お酒などの嗜好品も気づかないうちに家計を圧迫しているもののひとつ。

食費が高いと悩む家庭の多くは、食材費の高さではなく嗜好品費の高さに原因があります。しかし、スーパーなどで食材と嗜好品をまとめて買っているので、自分がどのくらい嗜好品を買っているか意識していない人が多いと感じます

 まずは買いすぎていないかを把握するためにも、買い物時に食材と嗜好品のカゴを分けること。

分けることで、本当に必要な食料品と贅沢品である嗜好品の把握ができる。可能であればレジで会計を別にして金額をしっかり把握するクセをつけよう

どのくらいムダな嗜好品を買っているか“見える化”を。分けるだけで意識が働いて、自然と減っていきます

 この夏は、これら3つのポイントを意識することから始めてみようと塚越さん。

いきなり“この3つをやめて、〇万円節約しよう”と頑張るのは大変。最初は、予定になかった外食の費用やコンビニに寄った回数、嗜好品の購入額をメモするだけでも十分です。

 ムダな消費がどのくらいか把握できると、出費に対してブレーキをかけられるようになります。実際に意識改革だけで月4万~5万円の食費を減らした家庭もありますよ!」

塚越さんが指摘!こんな人は食費が下がらない

・夫婦それぞれが買い物をする

「“買う人が増える=買うものが増える=食費が増える”は基本です。買ったものの情報を完璧に共有するのは難しいため、ダブり買いも多くなります」

・スーパーの過度な使い分けをしている

「安さを求めてスーパーをハシゴすると、それぞれの場所で余計なものを買いがち。結果的に食費が上がる傾向が」。買い物はなるべく1か所で。

・嗜好品を食費としている

「お酒、お菓子などの嗜好品費を食材費とまとめて食費とするのはダメ。食費が膨れ上がるだけでなく、料理に必要な食材費にお金が回りづらくなります」

・献立を夫や子どもに合わせすぎている

「家族の好き嫌いに合わせて買い物をしすぎると、予算内に収めるのが難しくなります」。それぞれの好物を作ってあげたい気持ちはわかるが、ほどほどに。

・レシピどおりに食材をそろえる

 旬を無視した買い物は食費増に。「レシピの野菜どおりでなくても、夏の野菜で代用するなど工夫を。“これでなければ”という固定観念は捨てよう」

塚越菜々子さん●CFP(R)・1級ファイナンシャル・プランニング技能士。税理士事務所を経て、独立後は約3000人の家計や資産運用のサポートを行う。雑誌やテレビなどのメディアだけでなく自身のYouTubeチャンネルで、わかりやすくお金の話を発信する。

教えてくれたのは……塚越菜々子さん●CFP(R)・1級ファイナンシャル・プランニング技能士。税理士事務所を経て、独立後は約3000人の家計や資産運用のサポートを行う。雑誌やテレビなどのメディアだけでなく自身のYouTubeチャンネルで、わかりやすくお金の話を発信する。


取材・文/河端直子