夏こそ「ヌメ活」 撮影/廣瀬靖士

 今年もキツすぎる酷暑の夏。猛烈な暑さによって食欲が落ち、だるさを感じる“夏バテ”に悩む人が増加中だ。

ヌメヌメが腸に届いて腸内環境を整える!

「昔よりも“暑さ”の始まりが前倒しになっています。梅雨の時季から、だるさや食欲不振などの夏バテに悩み、それが長期化している人もいるでしょう」

 そう話すのは、九州大学大学院農学研究院教授の広瀬直人先生。特に夏は冷たいものを食べすぎておなかの調子をくずしたり、暑い屋外と涼しい屋内との温度差によって、自律神経が乱れやすくなる季節でもある。

そんな夏の体調不良におすすめなのが、ヌメヌメした食材を日々の食事に取り入れる“ヌメ活”です。代表的なものでは、もずくやメカブに含まれる水溶性食物繊維のフコイダン、夏が旬のオクラに含まれるペクチンなどが挙げられます。

 食材によって作用に違いはありますが、腸内環境の改善や、免疫力を高めてくれるのが特徴です」(広瀬先生、以下同)

 夏バテだけでなく、中高年女性の悩みのタネである更年期対策としても「ヌメ活は最適です」と広瀬先生は話す。

更年期はホルモンバランスが乱れがちな時期。腸内環境も乱れやすくなるので、ヌメ活を始めるにはちょうどよいタイミングです。

 例えば納豆には、血糖値の上昇を抑えるポリグルタミン酸という成分に加え、女性ホルモン(エストロゲン)に似た働きをする大豆イソフラボンも含まれているため、更年期症状を和らげる効果も期待できます。何より、身近な食材で手軽に始められるのが『ヌメ活』最大のメリットですね

主なヌメヌメ食材とその健康効果

食べ方のポイントは毎日&組み合わせ

 手軽に腸活や免疫力アップなどの健康効果が得られる「ヌメ活」。九州大学大学院で広瀬先生とともにフコイダンの研究をしている宮崎義之先生は「ヌメ活は毎日続けるのがコツ」と語る。

「もともと日本人は食物繊維の摂取量が少ないといわれており、毎日食べるのが理想。水溶性食物繊維の一種“フコイダン”という成分には便通改善や、善玉菌を増やす効果が確認されています。これは多種多様なヌメ成分のなかでも非常に優秀な成分で、もずく・メカブ・ガゴメコンブなどに含まれています。

 乾燥から身を守る“バリア成分”としての役割があり、その成分が腸まで届いて働いてくれます。また、抗酸化作用によって腸の炎症を抑えてくれたりといったメリットもあります」(宮崎先生)

フコイダンの上手な取り入れ方 撮影/廣瀬靖士

 さらに、腸内細菌が水溶性食物繊維を分解したときに生成される短鎖脂肪酸は、免疫力アップにもつながる。 

 前出の広瀬先生も「免疫力アップのためにも複数のヌメヌメ食材を組み合わせて毎日とるのがポイント」と話す。

食材ごとに含まれる成分が異なるので、同じ“ヌメヌメ”でも得られる健康効果にも多少の違いがあります。ひとつの食材で補えない効果を別の食材でカバーすると良いでしょう。複数の食材を組み合わせることで、相乗効果が生まれます

 自由に組み合わせを変えて、飽きずに続けられるのも大きな魅力だ。

 なかでも、広瀬先生と宮崎先生が“キング・オブ・ヌメ活”と太鼓判を押すのが「もずく&納豆」の黄金コンビ。

免疫力アップや生活習慣病の予防、抗酸化作用があるもずくに、整腸作用がある納豆のポリグルタミン酸が加われば鬼に金棒。しかも納豆には、海藻類にはあまり含まれていない『ビタミンB群』や『タンパク質』が豊富に入っているので、ヌメヌメ成分だけでなく、栄養面でも相性ぴったりなんです。

 さらに、納豆ともずくをご飯にかけると必要なカロリーもとれてバランスの良い一品になりますよ」

 夏にさっぱりと食べたいなら、納豆もずくご飯に梅干しをトッピングしても! 味や食感の組み合わせをお好みで楽しむと、飽きずに続けられそうだ。

「ヌメ活は気軽に始められるうえ、幅広い健康効果が期待できる食習慣です。ぜひ日々の食生活に取り入れて、酷暑の夏を乗りきりましょう」

 ヌメヌメ成分の効果を引き出すレシピを公開!ヌメ活デビューが夏バテ知らずへの第一歩だ。

夏バテ・更年期に効果的な理由

免疫サポート

 もずくやメカブに含まれるフコイダンには、身体の免疫力をアップする作用あり。夏バテや更年期など免疫のバランスが乱れがちな人の風邪予防にもおすすめ。

腸活効果

 もずくに含まれるフコイダンと、山芋に入っているマンナンは腸内の善玉菌のエサになる「水溶性食物繊維」の仲間。ヌメヌメ成分による便通改善や、胃の粘膜を保護する働きも期待できる。

抗炎症作用

 更年期になると、身体の中にじわじわとした「慢性的な炎症」が起きやすくなる。フコイダンには、この炎症をしずめる働きがあり、関節の痛みやだるさ、不安感などをやわらげる効果が期待できる。

代謝アップ

 ヌメヌメ成分によって腸内環境が整うと代謝もアップ。山芋やモロヘイヤに含まれるマンナンは食べすぎ防止にもつながる栄養素だ。特に更年期は代謝が下がりぎみになるので、太りにくい体質を目指す人におすすめ。

夏にとりたいおすすめタッグ

もずくIN「ヌメ」活用レシピ

 ミネラルやフコイダン、ビタミンなどの栄養成分が多く含まれ海藻の中でもカロリーが低いヘルシー食材。腸内環境の改善と免疫力アップのほか、美肌効果もあり。水洗いしすぎると粘り成分やミネラルが流出するため、調理の際はサッとすすぐ程度にとどめよう。

もずくうざく

 うなぎのあぶらを落としてさっぱりと。免疫力アップと疲労回復に

もずくうざく 撮影/廣瀬靖士

材料(1〜2人分)
・もずく三杯酢……2パック(140g)
・うなぎ蒲焼……4切れ(40g)
・きゅうり……1/2本
・塩……小さじ1/4

【作り方】

(1)うなぎはラップをかけてレンジ600Wで40秒ほど温める。

(2)きゅうりは輪切りにして塩をふり、水けを絞る。

(3)器にもずく三杯酢を入れて食べやすく切った(1)、(2)をのせる。

もずく納豆ご飯

 もずくと納豆はキング・オブ・ヌメ活!生卵も加えて腸パワーメニューに

もずく納豆ご飯 撮影/廣瀬靖士

材料(1人分)
・もずく三杯酢……1パック
・ひきわり納豆……1パック
・オクラ……2本
・卵黄……1個分
・ご飯……茶碗1杯
・しょうゆ……小さじ1/2

【作り方】

(1)もずく三杯酢の水分をきる。ひきわり納豆は付属のタレとからしを加えて混ぜる。

(2)オクラは塩(分量外)をまぶして軽くこすり、沸騰した湯で2分ゆで輪切りにする。

(3)(1)、(2)、しょうゆを混ぜ、茶碗に盛ったご飯にのせ、中央に卵黄をのせる。

もずくもやしナムル

 にんにくのパンチをきかせてもずくをたっぷり味わえる

もずくもやしナムル 撮影/廣瀬靖士

材料(作りやすい分量)
・生もず……100g
・もやし……1袋(200g)
A〔鶏がらスープ顆粒……小さじ1、ごま油……大さじ1、塩……小さじ1/2、にんにくすりおろし……少々〕
・白ごま……適量

【作り方】

(1)もずくはサッと洗って水けをきる。

(2)もやしはサッと洗って、耐熱ボウルに入れてラップをふわっとかけてレンジ600Wで3分加熱し、水けをきる。

(3)(2)が熱いうちにAを加えて混ぜ、もずくを合わせてよく混ぜる。仕上げに白ごまをふる。

もずくトマトスープ

 トマトのリコピンで抗酸化作用も。胃腸いたわりメニュー

もずくトマトスープ 撮影/廣瀬靖士

材料(1人分)
・生もずく……50g
・トマト……1/2個
・レタス……1枚
・鶏がらスープ顆粒……小さじ1
・塩……小さじ1/4
・しょうゆ……小さじ1/2

【作り方】

(1)もずくはサッと洗って水けをきる。

(2)トマト、レタスは食べやすく切る。

(3)小鍋に水150mlと材料をすべて入れて火にかけ、ひと煮立ちしたらできあがり。

メカブIN「ヌメ」活用レシピ

 高い抗酸化作用をもつフコキサンチンが含まれ、健康維持だけでなくダイエットやアンチエイジングにもおすすめ。水溶性成分(フコイダン・ミネラル)が流出するため、調理の際はサッとすすぐ程度にとどめて。

 細かく刻んでヌメヌメ効果をアップさせるとより免疫アップに効くが、刻んだ後の水洗いは避けて。

メカブ冷製パスタ

 ほのかな塩味で暑い日にもぴったり

メカブ冷製パスタ 撮影/廣瀬靖士

材料(1人分)
・メカブ(生刻み)……40g
・ミニトマト……5個
・パスタ(乾麺)……100g
A〔ツナ缶……小1/2缶(35g)、玉ねぎみじん切り……1/8個、塩……小さじ1/2、こしょう……少々、酢……大さじ2、オリーブ油……大さじ1〕
・大葉……1枚

【作り方】

(1)パスタは、塩(分量外)を加えた湯で表示どおりにゆでて、冷水で洗って水けをきる。

(2)ミニトマトは半分に切る。Aのソースの材料を混ぜ合わせる。

(3)(1)、(2)、メカブを混ぜ合わせ、器に盛って大葉をちぎってのせる。

メカブ春雨サラダ

 ナンプラーと酢で味にくせのないメカブを風味よく

メカブ春雨サラダ 撮影/廣瀬靖士

材料(作りやすい分量)
・メカブ(生刻み)……80g
・春雨(乾燥)……50g
・カニカマ……4本
・きゅうり……1本
・塩……小さじ1/2
A〔ごま油……小さじ2、ナンプラー……小さじ2、酢……小さじ2〕

【作り方】

(1)春雨は熱湯をかけて5分おき、湯を切って水で洗って水けをきる。

(2)きゅうりは細切りにして塩をまぶす。カニカマは細くほぐす。

(3)(1)、(2)、メカブを合わせてAを加えて混ぜ合わせる。

メカブ豆腐スープ

 しょうがもほのかに香る内臓の冷え対策に!

メカブ豆腐スープ 撮影/廣瀬靖士

材料(1人分)
・メカブ(生刻み)……40g
・絹豆腐……100g
A〔だしの素……小さじ1/2、塩……小さじ1/4、しょうゆ……小さじ1/2、しょうが搾り汁……小さじ1〕

【作り方】

(1)小鍋に水150mlとAを入れて煮立て、豆腐をくずしながら加える。

(2)最後にメカブを加えてひと煮立ちしたらできあがり。

長芋IN「ヌメ」活用レシピ

 長芋はビタミンB群が豊富で疲労回復にも効く優秀食材。含まれる消化酵素をしっかりとるため加熱せず生のまま使用がおすすめ。粘り成分(マンナンなど)は水に溶けやすいため、洗いすぎないこと。切ったあとすぐに酢水にさらすことで変色を防げる。

長芋とオクラの梅あえ

 ダブルのヌメ食材で腸も喜ぶ、梅のクエン酸で食欲もアップ!

長芋とオクラの梅あえ 撮影/廣瀬靖士

材料(2人分)
・長芋……300g
・オクラ……5本
・梅干し……2個
A〔しょうゆ……小さじ1、みりん……小さじ1、塩……少々〕

【作り方】

(1)長芋は皮をむいて1.5センチ角に切る。オクラは塩(分量外)をまぶして軽くこすり、沸騰した湯で2分ゆでて斜めに切る。梅干しは種を除いてたたく。

(2)梅干しとAを混ぜ合わせる。

(3)長芋、オクラと(2)を混ぜ合わせる。

長芋キムチ豚しゃぶ

 発酵食品×ヌメ食材は相性よし!豚肉のビタミンBで夏バテ知らずに

長芋キムチ豚しゃぶ 撮影/廣瀬靖士

材料(2人分)
・長芋……300g
・キムチ……100g
・豚しゃぶしゃぶ用薄切り肉……200g
・貝割れ……1/2パック
・塩、ごま油……各適量

【作り方】

(1)豚肉は沸騰直前の湯でサッと火を通す。

(2)長芋は皮をむいてビニール袋に入れて麺棒などでたたいてつぶす。キムチはキッチンバサミで細かくしてから長芋に加え混ぜる。

(3)器に豚肉を盛り、(2)をかけて、貝割れを上にのせる。お好みで塩、ごま油をかけながら食べる。

モロヘイヤIN「ヌメ」活用レシピ

 エジプトが原産のモロヘイヤは、ビタミンAのもととなるβ(ベータ)カロテンをはじめ、B2、C、E、K、カルシウム、銅といった、ビタミン類やミネラル類を多く含む夏野菜。豊富な栄養素を丸ごと摂取できるよう、調理の際はサッとゆでるにとどめて。さらに、細かく刻んでヌメヌメ感をアップさせてもOK。

モロヘイヤとささみのカレー風味あえ

 クセのあるモロヘイヤがカレー風味で食べやすく!

モロヘイヤとささみのカレー風味あえ 撮影/廣瀬靖士

材料(1〜2人分)
・モロヘイヤ……1束
・鶏ささみ……2本
・にんにくすりおろし……少々
A〔カレー粉……小さじ1/2、塩……少々、レモン汁……小さじ1〕

【作り方】

(1)鍋にたっぷりの湯を沸かし、塩少々(分量外)とささみを入れて3分ほどゆでたら火を止めてふたをして10分、余熱で火を通す。ささみを取り出す。

(2)モロヘイヤは葉を摘み取り、やわらかい茎は食べやすく切る。

(3)(1)の鍋を沸かし、茎から先にゆでて葉も加えてサッとゆでて流水にさらしてから水けをきる。

(4)(1)を手で食べやすくさき、(2)と合わせ、Aを加え混ぜる。お好みでレモンを添える。

なめこIN「ヌメ」活用レシピ

 なめこは、豊富な食物繊維をはじめ、カリウムやビタミンB群などの栄養素を含んでいる。特に、血中コレステロール値や高血圧の改善のためにもおすすめの食材。ヌメヌメした水溶性食物繊維は水に溶けるので洗い流さずに使用して。パックからそのままINして汁やだしに溶け出した成分を丸ごととろう。

なめことろろそば

 するする食べられるスタミナ食!暑い日の定番メニューに

なめことろろそば 撮影/廣瀬靖士

材料(1人分)
・なめこ……1パック(100g)
・山芋……50g
・オクラ……2本
・そば(乾麺)……1束
・めんつゆ(2倍濃縮)……大さじ6

【作り方】

(1)なめこはサッと洗ってから耐熱容器に入れてラップをしてレンジ600Wで1分加熱して冷ます。山芋は皮をむいてすりおろす。オクラは塩(分量外)をまぶして軽くこすり沸騰した湯で2分ゆで輪切りにする。

(2)そばを表示どおりにゆでて冷水で洗い水けをきる。めんつゆは氷水100mlで薄める。

(3)器にそば、めんつゆを入れてなめこ、山芋、オクラをのせる。

なめこなすしょうがあえ

 しょうがをたっぷり加えて冷やして食べると◎

なめこなすしょうがあえ 撮影/廣瀬靖士

材料(1〜2人分)
・なめこ……1パック(100g)
・なす……2本
・しょうが……1かけ
・ポン酢……大さじ1

【作り方】

(1)なめこはサッと洗ってから耐熱容器に入れてラップをしてレンジ600Wで1分加熱して冷ます。なすは皮をむいて水で濡らしてからラップで1本ずつ包み、レンジで3分加熱する。粗熱が取れたら食べやすく切る。しょうがは皮をむいてすりおろす。

(2)材料を全て混ぜ、ポン酢を加えてあえる。

教えてくれたのは……

九州大学大学院農学研究院 広瀬直人先生●大阪府立大学大学院修了、農学博士。食品会社、沖縄県農研センターおよび工技センター、鹿児島県立短大にて食品加工研究に従事。2024年より食品免疫機能分析学寄附講座教授に着任。

九州大学大学院農学研究院 広瀬直人先生●大阪府立大学大学院修了、農学博士。食品会社、沖縄県農研センターおよび工技センター、鹿児島県立短大にて食品加工研究に従事。2024年より食品免疫機能分析学寄附講座教授に着任。

九州大学大学院農学研究院 宮崎義之先生●九州大学大学院農学研究院において食品機能性研究に携わり博士号を取得。佐賀大学医学部助教を務め、免疫学的な基礎研究に従事。2021年より食品免疫機能分析学寄附講座准教授に着任。

九州大学大学院農学研究院 宮崎義之先生●九州大学大学院農学研究院において食品機能性研究に携わり博士号を取得。佐賀大学医学部助教を務め、免疫学的な基礎研究に従事。2021年より食品免疫機能分析学寄附講座准教授に着任。


取材・文/大貫未来(清談社) レシピ・調理/黒木優子