左から長谷川京子、石原さとみ、広末涼子

 昭和~平成初期にかけて人気を博したのは、石原真理子や吉永小百合に象徴される“薄い唇”。知的で品があり、静かな色気を感じさせる口元が時代の美しさを映していました。

 しかし平成の後半からは、アンジェリーナジョリーらハリウッド女優に始まり、平子理沙や長谷川京子に見られる“ぷっくりリップ”が一世を風靡。石原さとみに関しては、ナチュラルなボリューム感のある唇で老若男女の人気をさらいました。

令和で好まれるゆらぎある唇

 そして令和。今は“ふっくらさせすぎない”“線を描きすぎない”ゆらぎある唇が好まれているという。女性らしさやセクシーさの象徴とされ、ヒアルロン酸注入やM字リップといった美容医療メニューも多く登場! 

 そんな唇の人気について、美容整形外科「R.O.clinic(アールオークリニック)」の呂秀彦院長を迎え、美容のプロならではの視点から、時代の唇に迫りました。

――唇って意外に主張しますよね。でも、本来はメインパーツではなく、サブパーツですよね。

呂院長「そうですね。本来はやっぱり目がメインではありますが、唇ばかりが目立ってしまう時代はありました。でも、そんなぷっくり唇のブームは、少し落ち着いてきた印象です。たとえば長谷川京子さんや平子理沙さん、顔全体が日本人離れしていて立体的なのでバランスが取れています。だから、あの唇でも成立しているんです。唇は単体で評価できるパーツではなく、顔全体との調和の中で考えるべきなんです」

長谷川京子

――成立感あるのに、“くちびるオバケ”と言われちゃうくらいですもんね。でもこの時代、「M字リップ(上唇がM字型に見える唇)」といった形が人気のように見えますが、どうでしょうか?

呂院長「M字リップはたしかに一時期流行しましたが、今は少し落ち着いてきています。とはいえやはり、綺麗な方の多くは唇の中央にボリュームがあるので、その点は今も支持されている印象です。中央だけを少し厚くするだけでも、立体感が出て整った印象になりますよ」

――ヒアルロン酸ではなく、手術で唇の形を変える方法もあると聞き、永遠に変わらないかわいい唇になるとか。めちゃくちゃ興味があります(笑)。

「M字のくぼみ部分だけを切る手術ですね。具体的には、唇の上側のくぼみの部分を選んで切除し、ボリュームを残す場所と減らす場所を調整します。エッジに沿って切るので、傷跡はほとんど目立ちません。唇の赤い部分、いわゆるウエットリップとドライリップの境界を扱うので、創部の治癒も早いです。でも、ヒアルロン酸でのリップ形成も依然として人気です」

薄い唇の美人といえば広末涼子

――薄い唇のままが好きという方もいますよね? 広末涼子さんや桐谷美玲さんなんかも薄い唇の美人!

広末涼子

呂院長「そうですね。薄い唇が“知的で好き”という方もいらっしゃいます。これは完全に好みの問題です。とはいえ、唇が薄くなってくると年齢も出やすいので、ナチュラルな補正としてヒアルロン酸を使うことはあります」

――唇の色に関して、アートメイクを希望する方もいるといいます。これはどう見られていますか?

呂院長「アートメークに関しては僕の領域ではありませんが、個人的には、色はあまり入れない方がいいと思っています。唇の範囲を超えたオーバーリップにしなければあまり問題はありませんが、変色してしまうことがありますし、レーザーを当てるとその部分だけが不自然に残ってしまうこともある。時代の流行が変わったときに、入れた色が“昔の口紅”のように見えてしまう可能性があるんです。色や光沢感は、メークである程度カバー出来るのではないでしょうか。」

――確かに、K-POPアーティストたちはリップなどで光沢感を出し、唇の印象を際立たせています。BTSなどの男性もそうです。ちなみに男性のリップ整形もじわじわ増えています?

呂院長「男性の場合は、極端に厚くすることはありませんが、唇の輪郭を整えることで清潔感が出ますよね。ツヤやハリがあると“セクシー”というより、“知性”や“落ち着き”を感じさせますし。でも、彼らは元々が厚いわけではなく、やっぱりメークで上手に演出している印象です。日本で言えば木村拓哉さんの唇は、顔全体のバランスに非常によく合っていて理想的ですね」

――やっぱり木村さんなんですね。呂先生ご自身の考える“理想の唇”とは、どんな形でしょうか?

呂院長「女性ですよね? 一言で言えば、“顔とのバランスが取れていること”です。
下唇が極端に薄かったり、上唇だけが浮いてしまっていると、どうしても顔全体が不安定に見えます

 例えば、BLACKPINKのロゼさんのように、下唇にもほどよく厚みがあり、上唇とのバランスがとれている方は理想的ですね。平子理沙さんも、昔の写真ではごく自然にそうしたバランスで整っていますね。

――時代が求める唇は、“完璧”でも、“派手”でもないってことですね。

呂院長「年齢とともに唇のハリがなくなり、縦ジワも出やすくなります。ヒアルロン酸を使えば、バーミリオンボーダー(唇の縁)を整えるだけでも印象は大きく変わりますが、あまりやりすぎず、その人自身が自然に持っている“ゆらぎ”の中にこそ、いま最もリアルな美しさが宿っていると思いますよ」

今回お話を伺ったのは……
呂 秀彦(ロ ヒデヒコ)先生。美容外科・形成外科 R.O.clinic(アールオークリニック)院長。日本形成外科学会専門医。医学博士。昭和大学形成外科兼任講師。順天堂医学部卒業後、昭和大学形成外科・美容外科、大手美容クリニックを経て2020年R.O.clinic開院。
患者一人ひとりに真心と誠意を持って、丁寧なカウンセリングとオーダーメイドの治療が好評。日本形成外科学会、日本美容外科学会(JSAPS)に所属。