2024年3月、通訳のスキャンダルが発覚する前の大谷翔平/共同通信社

 日本時間8月14日のエンゼルス戦に“投手兼DH”で出場した大谷翔平。2023年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)決勝以来となる盟友との勝負となった。

大谷本人と代理人が訴えられる

「エンゼルス時代のチームメートであり、メジャーリーグを代表するスターの1人であるマイク・トラウトと対決。2023年のWBC決勝では、投手・大谷がトラウトから三振を奪い、日本が優勝を決めました。この日は2打席どちらも三振と、今回も大谷選手に軍配が上がりました」(スポーツ紙記者、以下同)

 二刀流として連覇に挑んでいるが、グラウンド外では訴訟に巻き込まれる事態に。

大谷選手が広告塔を務め、自身も購入したハワイの高級住宅開発を巡って、代理人のネズ・バレロ氏とともに訴えられました。原告側の主張によれば、大谷選手は2023年に広告塔として契約しましたが、バレロ氏が繰り返し介入。バレロ氏は“話が通らなければ大谷を撤退させる”と脅し、最終的に窓口となっていた開発業者と仲介業者の2人が事業から不当に排除されたとして損害賠償を求めて提訴しました」

不動産開発会社のHPに掲載されていた、大谷翔平と真美子夫人が参加したハワイの高級リゾートのお披露目式(現在は削除済み、写真は一部編集部で加工)

 8月14日の試合後、この件に関して大谷は「フィールドに集中したい」と詳細には触れなかった。

「大谷選手がどこまでこの問題を認識していたか不明で、原告側もこれから調査するとしています。それでも原告側は“代理人は選手に代わって行動しており最終的に本人にも責任が及ぶ”という主張で大谷選手も訴えることに。大谷選手は巻き込まれた“被害者”という見解もあります」

 優勝争いも激化してきたタイミングで思わぬ流れ弾に当たったが、かつての相棒も大谷のプレーに水を差すことになりそうだ。

元通訳で、現在は刑務所に収容されている水原一平受刑者に関するスキャンダルのテレビドラマ化に進展がありました。水原受刑者は違法なスポーツ賭博でつくった多額の借金の返済のために、大谷選手の口座から約26億円を不正に送金していたことが2024年3月の開幕戦直後に発覚。同年5月に現地の映像制作会社『ライオンズゲート・テレビジョン』が一連の騒動を描くドラマを制作すると発表しました。

 その後、しばらく続報はなかったのですが、2025年7月末に現地ケーブルテレビ局『Starz』が放送権を獲得する方向で話が進んでいると報じられました」(在米ジャーナリスト)

2024年3月、スキャンダル発覚前の水原一平(左)と大谷翔平/共同通信社

 大谷翔平にとってはあまり望ましくない映像化だろうが、不利益を被る場合は損害賠償を求めることができるのか。

水原一平をドラマ化する社会的意義

『樋口国際法律事務所』の国際弁護士である樋口一磨弁護士に聞いた。

「まずは、名誉毀損に当たるかです。事実と異なる描き方をされ、名誉が低下するようなことがあれば、訴えることになるでしょう。この場合の事実というのは、第三者目線での客観的事実というより、大谷選手目線での事実かどうかがポイントになりそうです。

 アメリカでは名誉毀損で争って負けた場合、膨大な金額の賠償を払わなければなりません。そこまでのリスクを冒して大谷選手と争うメリットはないように思えます」

 では“大谷翔平”という実名がドラマ内で使われるのも問題になるのだろうか。

「名前を使うとなるとパブリシティー権の問題が発生します。著名人の名前を勝手に使用して商売をすると違法になることがあります。大谷選手に訴えられたときのリスクは非常に大きいので、許可を取ってから制作するはずです。

 もし、勝手に名前を使うとなれば、ニュースといった報道やドキュメンタリーであれば実名を出すのは許容されるため、そういった方向に寄せて作らないといけません」(樋口弁護士)

 大谷を“敵”にするリスクがありながらもドラマ化の話が進んでいる背景について、映画ライターのよしひろまさみちさんはこう話す。

「ハリウッドに限らず、日本を含めて世界的にオリジナル脚本のネタ不足です。アメリカはケーブルテレビチャンネルが多くあるうえに、Netflixなども登場し、単純計算して年間で倍から3倍くらいの作品数を作らないといけなくなりました。ドキュメンタリーや実話ベースの作品はオリジナル作品より作りやすい。ただ、時間がたてば事件も風化するので、今回の件は急ピッチで話を進めていると思います。

 大谷選手は人気があるので、ハリウッドセレブが被害に遭った事件のドラマ化と思えば、こうした作品が作られるのも納得です」

2024年6月5日、水原一平被告は連邦地裁に出廷。罪を認める答弁をした 写真/共同通信社

 脚本次第では大谷の見え方がよくも悪くもなりそうだが、どんなストーリーになるのか。

「アドバイザーのアルバート・チェン氏はスポーツ賭博に関する書籍を書いています。欧米ではオンラインカジノによるギャンブル依存者の急増が社会問題になっている状況があるので、水原氏がなぜギャンブルに走ったのか、という部分を強調して描く可能性があります。水原氏もある意味で“被害者だった”という切り口でしたら、ドラマ化する社会的意義もありますし、いい作品になると思います」(よしひろさん)

 ドジャースはパドレスと地区優勝を争っている最中。大谷が、野球だけに集中できる環境であってほしい。