
ゴールが近づいてきた好調のNHK連続テレビ小説(朝ドラ)『あんぱん』だが、ここにきて視聴者からのツッコミが増えてきている。
“朝ドラあるある”の中だるみ
スタート当初は前作の影響もあったのか視聴率は芳しくなかったが、朝ドラのメインテーマでもある“ヒロインの波乱万丈の人生”が始まると6月以降は徐々に上がりはじめ、16%台を維持している。そして7月2日に放送された回は17.8%と、番組最高を更新した。
「17%を上回ったのは、前々作『虎に翼』の最終回以来、9か月ぶりです」(テレビ誌ライター、以下同)
番組を録画や配信で見る人が増えている現在、視聴率だけで番組の人気度は判断できないが、17%は立派な数字といえるだろう。
そんな『あんぱん』だが、戦中、そして終戦という激動の時代が終わりを迎え、主人公たちの生活も徐々に安寧を取り戻していく。と同時に、“波乱に満ちた”描写は少なくなってくる。視聴者も穏やかな気持ちでドラマに浸ることができ、陰鬱たる気持ちを抱えたまま家を出るよりもそれはそれでいいのだが、何かモノ足りなさを感じる視聴者も多い。
「いわゆる中だるみという“朝ドラあるある”ですが、太平洋戦争という最大の山場が過ぎ、終戦時の混乱が治まってしまうと、実際に庶民の生活は安定していくわけですから、実在の人物をモデルにしている以上、それほどドラスティックな演出はできないと思います」
合点がいかないシーンたち
中だるみを感じさせないためには、主人公に何かと危機が訪れ、視聴者をハラハラさせることが必要になる。のぶと崇も一難去って、また一難が続いているのだが、“おやおや”となるシーンが多くなり、視聴者も気になり始めているようだ。
例を挙げると、のぶはいきなり代議士秘書をクビになる。その理由が「“逆転しない正義”を探し求めているのぶは、代議士秘書に向かないから」らしいのだが、今一つ腑に落ちない。
デパートでの仕事を辞め漫画家1本で行くと決めた崇だったが、実はそれほど仕事がなく、ビッシリと埋まっていた予定表は見栄を張っていたとのぶに告白するシーンでは、実はのぶも解雇されていたことを告白。崇は「お先真っ暗だね」と言うのだが、ちょっと待ってほしい。のぶは代議士の紹介で、どこかの企業の秘書が決まっているではないか。

そもそも崇がデパートを辞めたのは、漫画家の仕事の収入がデパートの給料を超えたからではなかったのか。在職中はサイドビジネスの収入とのぶの給料も併せて“トリプルインカム”だったわけだから貯えもあるだろうし、公設秘書だったのぶも、6年も勤めたなら多くはないだろうが退職金だってあるはずだ。
漫画家でそれほど稼いでいたのに、デパートを辞めたら急に仕事がなくなるもの合点がいかない。
また、いつの間にか、崇は『独創漫画派』という集団に属していたのだが、どうやって彼らと知り合ったのか、どんな集団なのか、メンバーはどういう漫画家たちなのか説明もない。崇が主人公ではないから、そこまで詳細に描かなくてもいいか……ということなのか。
『ちむどんどん』にもあった傾向
18日に放送された第101回では、のぶが再就職した会社を、「既婚者ということで肩たたきされた」と、“クビ”になる。代議士秘書を辞めてその会社に就職したとき、すでに結婚していたハズだが……。また、代議士先生の口利きで雇った人を、そんな理由で簡単に解雇できるものなのだろうか。大いに疑問だ。
脚本が“雑”“手抜き”になってきたと感じる視聴者も多い。
「これも、“朝ドラあるある”なんです。平坦なストーリーとなることを避けるため、いろいろぶち込んでくるのですが、史実からあまり大きく乖離させるわけにもいかないので、無理のない範囲で起伏を付けようとする。そうなると、ほころびが出てきやすいんです。特に、時代が現代に近づき、舞台が地方から東京に移ると、そうなる傾向があるように見られます。『ちむどんどん』もそうでしたね」

また、『ちむどんどん』でも同じような指摘がなされていたが、舞台が“地方”から“東京”に移ったことで、こんなツッコミも出てきている。
《東京に住んで10年以上になるのに、いつまで土佐弁なの》
《標準語で話す崇に対し、のぶがいつまでも土佐弁で話すのは変》
頑なに“お国言葉”を止めようとしない人が、いるにはいるが……。
にわかにツッコミが増えてきた『あんぱん』。「#反省会」が立ち上がらないことを願うばかりだ――。