戦後80年目の『終戦の日』となった8月15日、兵庫県・斎藤元彦知事の1発目の投稿は高校野球の2回戦・東洋大姫路高校vs花巻東高校の観戦模様だった(本人のXより)

 兵庫県の斎藤元彦知事がXに投稿した写真が、ネット上で大きな波紋を広げている。

 戦後80年目の『終戦の日』となった8月15日、斎藤知事は高校野球の2回戦・東洋大姫路高校vs花巻東高校を観戦するために甲子園球場を訪れていた。

“味方”からも苦言

 斎藤知事によるこの日のXの第1発目の投稿は、グランドを背にした写真を添付して、

《東洋大姫路、頑張ってください!》

 そして試合終了後には、《東洋大姫路、勝利おめでとうございます。次戦も、頑張ってください! 暑さが続きますので、野球観戦、外出時などには、こまめな休憩や水分補給を十分にお願いいたします》と投稿。インスタグラムには、かき氷を持って微笑む姿がアップされていた。

 地元高校の応援に出向いたのだろうから、それに目くじらを立てることはないだろうが、この投稿に対して非難が殺到している。

 というのも、この日は『終戦の日』。全国各地で戦没者追悼式典が開かれており、兵庫県でも姫路市や西宮市で式典が開かれていた。兵庫県の公式ホームページにある知事日程表には、この日の予定は「公務」となっていたのだが、斎藤知事が出向いたのは式典ではなく、なんと高校野球観戦。大阪府の吉村洋文知事や千葉県の熊谷俊人知事もXを活用しているが、この日のファースト投稿はもちろん『終戦の日』にあたってだった。

 非難の声が殺到するのも無理はないが、斎藤知事の“味方”と思われる人までが、こんな投稿をしている。昨年の兵庫県知事選で斎藤知事を応援していた森けんと西宮市議会議員は、自身のXで《慰霊祭が各地で行われ、代理の方が出席されて代わりに挨拶を読まれてる以上、SNSの使い方には気を付けて頂きたいと思う今日この頃です》と、苦言を呈したのだ。

“黙祷写真”にも様々な疑惑が

 批判が集まったからなのか、斎藤知事は同15日の午後7時41分になってXを更新。甲子園球場の観客席と思われる場所で黙祷している写真を添えて『終戦の日』に当たってのコメントを出している。

 しかし、その“黙祷写真”にも様々な疑惑が生じている。写真をよく見ると、知事の背後はぼけているのだが、観客全員が立ち上がって黙祷しているようには見えない。8月15日、甲子園では正午きっかりに、選手・観客が全員で黙祷を捧げることになっており、今年も全員で黙祷している様子が中継されていたので、知事が黙祷している時は正午ではなかったのか、それとも甲子園ではないのか……。だが、知事の服装は、この日の朝Xに投稿したときと同じに見える。

8月15日の午後7時41分になって、甲子園球場の観客席と思われる場所で黙祷している写真を投稿した兵庫県の斎藤元彦知事。観客全員が立ち上がって黙祷しているようには見えない(本人のXより)

 東洋大姫路と花巻東の試合は、午前11時31分に終わっている。ここで疑問が湧くのは、知事が黙祷した場所が甲子園球場だとして、試合が終わったのちも現地に残っていたのかということ。ただ、正午に黙祷したのであれば、知事以外の観客も全員起立して黙祷しているハズなのだが……。しかも、仮にその時間に黙祷しているなら、SNSの性格上、オンタイムで投稿していたのではないだろうか、という点。

 地元紙の記者はこう語る。

「知事日程は公務となっていいたので、朝のXの投稿を見た時“あれっ”と疑問に思ったんですが、西宮の戦没者追悼式典会場は球場から近いので、試合の途中か、試合が終わってから会場に向かうのかなと思っていました。式典の開始は12時からでしたので、実際、試合終了後に球場を出ても、間に合ったはずです。初めから式典に出席する予定ではなかったんでしょうね。

 また、疑惑の写真ですが、試合が終わって黙祷の時間まで30分弱ですから、残って黙祷したのなら、周りも全員起立して黙祷している写真になると思います。正午の“全員黙祷”とは異なる時間に撮影されたんじゃないでしょうか。正午前か、それとも黙祷写真を撮るために、わざわざ球場に出向いたのか、いろいろと指摘されています。まさか合成ということはないと思いますが、非難されたものだから、自分もちゃんと『終戦の日』に向き合っていたんだとアピールしたかったんでしょうね」

 写真の謎は深まるばかりだ。こんな写真を投稿しなければ、余計な詮索をされることもなかっただろう。昨年の知事選で起きた斎藤氏に関する様々な問題は、何一つ解決されていない。そしてまた、新たな疑惑が生まれてしまった。兵庫県の混乱は、いつまで続くのか――。