『あんぱん』の主演・今田美桜と北村匠海

 いつ本当の“主人公”が出てくるのか、朝ドラファンは指折り数えたことだろう。8月22日放送の連続テレビ小説『あんぱん』第105話で、ついにアンパンマンが登場したのだ。

ここまで“アンパンマン誕生”が遅れたワケとは

「同作は国民的キャラクター『アンパンマン』の産みの親である漫画家やなせたかしさんと、小松暢さん夫妻がモチーフ。ヒロイン今田美桜さんが、暢さんをモデルにしたヒロイン朝田のぶを、北村匠海さんがやなせさんをモデルにした柳井嵩を演じています」(ドラマ誌ライター、以下同)

 誰もが知る正義のヒーロー・アンパンマン。その誕生秘話や原作者の生涯を描く――そんな期待のもと始まった同作は、脚本家の中園ミホによる、軽快でありながら丁寧で心に染み入る筆致で視聴者を満足させてきたのだが……。

「いつまで経ってもアンパンマンが出てこないことから、次第に視聴者もやきもき。そうこうしているうちに、のぶがさまざまな仕事に就くなど本筋から脱線気味になり、崇もなかなか漫画の筆が進まない。しかも8月7日の94話では、わずか5秒で5年後になるなど、物語がジェットコースター並みに急激に進行。13日の放送回でも7年進むなどワープが常態化。2週間で12年も進んだのです」

 前半の感動が懐かしく感じるほどの“雑展開”にネットでは不満が募っていたが、この22日、一筋の光が。

「崇がエンディングで描いたのは、両手にあんぱんを持ちながら空を飛ぶ、小太りのおじさんでした。これは、現在のアンパンマンの原型です。このイラストを見たのぶは『たまるかー! この太ったおっちゃん、最高やね!』と感激していました」

 待ち望んでいた展開にネット上は、安堵の声であふれた。

《ここまで長かったな》
《やっとアンパンマンの誕生》

 など、“今後”に期待するユーザーが多く見られたのだ。なぜここまでアンパンマン誕生が遅れ、時間軸がワープしたのか、芸能プロ関係者がこう語る。

「制作陣は“アンパンマン誕生前夜”の苦闘が一番おもしろいと踏んだのでは。それに至るまでには、崇とのぶという夫婦の絆にも触れないといけませんし、中園さん自身が強く望んでいた“戦争”をしっかり描き残すという目的のため、後半はどうしても時代を一気に進めざるを得ない展開になったのでしょう」

 また、この日の劇中ではさらに大事なシーンがあった。

「このアンパンマンの原型を描く経緯として、のぶから『崇さんが描きたいものは何?』と言われた崇が、少年時代、ヤムおじさん(阿部サダヲ)から、あんぱんをもらった記憶を思い出したことも触れられました。つまり今回は、アンパンマン誕生のきっかけが子供時代にあんぱんをもらった原体験であることを示したという意味で、タイトルの回収にも成功したのです」(前出・芸能プロ関係者)

 来週からいよいよ本格化するであろう“アンパンマン”。ラストまで残り1か月。果たして失速を取り戻せるだろうか。