
ドラマや映画など、映像作品になくてはならないのがエキストラの皆さん。人それぞれの目的があって参加しているようで……。彼らが見た、令和ならではの撮影現場の実態とは?
エキストラには“ギャラなし”“ギャラあり”の2タイプが
街の通行人役や主人公が働く会社の社員役など、ドラマの雰囲気を盛り上げるために演出上で欠かせないのがエキストラ。その実態とはいったい? さまざまな撮影現場でエキストラをしている方々に話を聞いた。
そもそもエキストラには“ギャラなし”“ギャラあり”の2タイプがあるという。“ギャラなし”は、ボランティアのエキストラ事務所に所属するケースと一般公募によるケースに分かれる。
対してギャラがあるのは、エキストラ専門の事務所かモデル事務所や養成所に所属している場合だ。ギャラは1日3000円ほど。なかには2時間の拘束で800円なんてことも。ただ、ギャラがあっても事務所や養成所に何パーセントかは取られるので、手元に残る金額は……。
それでもテレビに出てみたいからと、エキストラをやっている人もたくさんいるようだ。中には、わざわざ地方からやってくる人も。
「僕は毎回、熊本から参加しています」と言うのは、60代でエキストラ歴15年のAさん。彼は大のミーハー気質なため、撮影現場で俳優に会うだけでテンションが上がるのだという。特に、姉も俳優として活躍している俳優のHを見たときは、あまりの顔の小ささに、びっくりしたとか。
一方で、トラック運転手などのアルバイトをしながら俳優を目指した過去があり、今では主役級として活躍している人気俳優Sには、あまりの性格の悪さに愕然としたという。
「恋人役の女優さんが、台本で4~5ページにわたる長ゼリフを言っていたのです。そしたら突然、Sがセリフに出てくる言葉のイントネーションがおかしいと文句を言い出して……。女優さんが完全にトーンダウンしてしまい、撮影が中断したんです。
その日は寒い日で、撮影所にストーブはあったんですけど、僕たちエキストラはあたらずに我慢していたんですよ。そしたら、2世兄弟俳優の兄・Tさんが『どうぞ、ストーブにあたってください』と言ってくれて、ご厚意に甘えてあたっていたんです。そこにSが現れて『なんで、おまえらがあたってんの?』みたいに僕らがにらまれて。あれで一気に嫌いになっちゃいましたね(笑)」
ちなみに最近のAさんは、出演者やスタッフに話しかけたり、SNSにアップしたりするなどの禁止事項を行って出禁になった現場があったため、あまり参加していないという。
Aさんのように芸能人に会うだけでうれしいという人もいれば、Bさん(30代・女性)のように、大好きな俳優に会う、“推し活”としてギャラなしでエキストラをやっている人もいる。
自分のファンには塩対応な俳優T
エキストラ歴6年というBさんは、最近不倫騒動を起こした人気俳優Tの大ファン。ボランティア事務所に何社も登録して、現場に参加。Tを間近で見られたり、同じ空間にいるだけで幸せだという。

Tの人気はものすごく、エキストラの中に推しコミュニティーがあり、SNSで撮影現場に関しての情報交換もしているとか。
「全10話のドラマのうち6話に参加したこともあります。毎回会えるだけでうれしくて!」
このような推しコミュニティーは旧ジャニーズの俳優にもあるとか。ただ旧ジャニーズの場合、“推しかぶり”になるとバチバチの険悪な関係になってしまうそうだ。しかし前出のAさんによると、Tはエキストラのファンには冷たいとか。
「自分のファンが来ているのをわかっているのに、いつも塩対応なんですよね。あと、現場には必ず遅刻してくるし、しかも寝癖をつけたまま現れるズボラな性格です(笑)」
また、バラエティーもこなし、『紅白歌合戦』の司会も務めた俳優Oも塩対応で有名だとか。しかも、エキストラに自分のファンが来ているか探すことを欠かさないナルシストだという。
「エキストラにファンがいても塩対応の人は多いですよ。対照的に、音楽グループでも活動し、俳優としても数多くの作品に出ているPさんは、現場を和ませてくれるすごくいい方。
一番すごかったのは、アカデミー賞受賞作にも出演している俳優Nさんかな。彼は僕たちエキストラをはじめ、現場の人全員に挨拶をしてくれるんですよ。しかも、こちらが挨拶を返すと、また笑顔で“ニコ返し”してくれる。男でも惚れる人でしたね」(Aさん)
また、元女性アイドルグループの一員で、女優のHが主演した作品は、彼女がドタキャンをしてしまったため、エキストラで参加したにもかかわらず、お蔵入りになってしまいがっかりしたとか。Aさんによると作品のお蔵入りはよくあることだそうだ。
最近はテレビ局よりもネット配信のドラマが数多く制作されている。それに比例して、そのような現場でもエキストラが多用されている。映画好きが高じて6年エキストラをやっているCさん(30代・男性)も参加した一人。
以前、映画のロケ弁でうな重が出たことに感動したというCさんだが、ネット配信ドラマの現場の食事はそれ以上に豪華だったとか。
「その現場は、朝7時集合で終了は夜8時くらい。夏の炎天下、16日間も拘束されましたが、食事は超豪華! 魚・牛肉・鶏肉と常に3種類くらいあって、選び放題。しかも、休憩場にはお菓子がお店のように並べてあり、これも取り放題! 感動しましたよ(笑)」
一方で、ネット配信のドラマの制作現場は、コンプライアンスがとても厳しいという。
「撮影中に助監督がエキストラに対して、『おっさん、そこダメだよ』って注意したんです。その“おっさん”という言葉がNGだったらしく、翌日、助監督3人が全員に謝罪していました。現場にネット配信の会社の人が来ていて、厳しくチェックしているみたいです」
アカデミー賞監督はエキストラに深々と頭を下げる
ほかには、40代でエキストラ歴7年の女性Dさんのように、演劇の養成所に通い、女優になることをずっと夢見ながらエキストラに励んでいる人もいた。

「養成所から回される仕事なので、ギャラは発生しますし簡単なセリフもあったりします。でも、微々たるものですからほとんどが演技のレッスン代などに消えてしまうんですけどね」
現在50代で、エキストラ歴10年のEさん。彼女のエキストラ経験での一番の思い出を聞くと、特撮映画に参加したときだったという。
「撮影は900人以上のエキストラが参加して行われたんです。そのほとんどが特撮ファンでした。54日間にわたる私たちの撮影が終わった後、監督自らがエキストラ全員に『本日はどうもありがとうございました。必ずよい作品に仕上げます』と、深々と頭を下げてお礼を言ってくれたんです。
しかも、全員に限定のノベルティーも配ってくれました。その対応には本当に感動しました。アカデミー賞を取るほどの監督は違いますね」
そんなEさんは、通販番組にもエキストラとして参加しているという。
「通販番組でひな壇に座って隣の人と『欲しいー!』『安ーい!』と言っている人は、みんなエキストラ。ほとんどが通販番組慣れしている人なので、みんなリアクションがうまいんです。中には、10年以上そういった番組に出ているものだからSNSで通称“通販おばさん”といわれている人も。でもその人は実際に通販の商品が大好きで、出演した番組の商品を本当に買って帰っていくんですよね(笑)」
エキストラの世界にも、ドラマや映画のように物語があるようだ。
取材・文/樋口 淳